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北海道新幹線 生かす知恵が問われる

 北の大地に新幹線がやって来た。1973年11月の整備計画で北海道新幹線が正式決定されてから、43年目にして、新青森−新函館北斗間がきょう開業する。

     新幹線が通れば人が集まり、地域が栄える、という簡単な話ではない。最終的に札幌までつながるのは15年先の2030年度末という。建設にかかる2兆2000億円以上の投資を意味あるものにするうえで、何が必要なのかを考えてみたい。

     従来の新幹線開業で描いたような首都圏から一直線で到来する旅行客の急増というイメージに固執すべきではないだろう。所要時間が短縮されるとはいえ、東京−新函館北斗間は最速で4時間2分だ。航空機の利便性を超えることは難しそうだ。

     肝心なのは、新幹線の生かし方である。函館は札幌より仙台の方が列車の所要時間で近くなる。例えば、海外からの観光客を東北の空港で受け入れ、そこから新幹線で函館に移動してもらうなど、東北・道南を一体化した観光に潜在需要がありはしないか。柔軟な発想で魅力を発掘し、国内外に積極発信したい。

     問題は、北海道新幹線の意義がフルに発揮される札幌までの延伸に時間がかかることだ。北海道に限らず、常に政治の力学に左右されてきた整備新幹線である。全国くまなく新幹線を走らせたい。だが巨額の資金がかかる。ということで、時間をかけ、全ルート一様に少しずつ延ばしていく方式をとった。

     これでは最大の効果が見込まれる最終地点までの開業が、人口減少や過疎化が進んだ後となりかねない。

     さまざまな制約の中で、あれもこれも全部、という選択肢はもはや日本にはない。本業の鉄道事業が年400億円の赤字、黒字の在来線ゼロというJR北海道は特にそうだ。新幹線も、利用客が1日に100人いるかいないかのローカル線も、全て抱えようとすれば、老朽化した設備に投資が回らなくなる。

     安全だけは犠牲にできない以上、他の何かをあきらめるしかない。それに伴う痛みを最小化するため、国や自治体の関与が不可欠だ。

     「JR北海道に残された時間は短い」。新幹線開業まで9カ月となった昨年6月、度重なるトラブルを受けて設立されたJR北海道再生推進会議が提言書をまとめた。伸ばすべきところには人やお金を投入し、鉄道の役目を終えた線区は他の交通手段に委ねるなど、思い切った経営判断をしなければ、「自らの破綻を招来する」と厳しく結論付けている。

     そうした選択と集中を政治家、行政、そして国民が容認できるか。新幹線開業の向こう側にある問いにも、目を向ける必要がある。

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