2016年03月25日
梅光学院、真相解明と正常化が急務 「改革派」が踏み荒らした梅光
■長周新聞(2016年3月23日)
∟●真相解明と正常化が急務
真相解明と正常化が急務
「改革派」が踏み荒らした梅光
子供たちの為に奮起を
2016年3月23日付下関市にある梅光学院で、「改革」を巡って経営陣と教員・父母・同窓生・生徒たちとの間で衝突が起き、本間理事長の退任を求める署名が広がりを見せている。「梅光の未来を考える会」が訴えた署名は1万7000筆に達するなど、下関市内だけでなく広範な人人のなかで関心を呼んでいる。本紙はこの間、地方の私学において何が起きているのか、どうしてそこまで同窓生や教員、父母や子どもたちが怒っているのか、相当数の学校当事者たちに意見を聞き、真相に迫るべく取材を進めてきた。当初は口が重かった教師たちや学院関係者たちも次第に内実を語り始め、おぼろげながらその全貌が見えてきた。100年の歴史を誇る梅光学院で何が起きているのか、どうすることが教育にとって求められているのか、記者座談会を持って論議した。
学問と教育投げ捨てた文科省路線の産物 建設的な力結集することに展望A この間、「梅光がたいへんだ!」という話は伝わってくるが、具体性に乏しく何が問題になっているのか分かりづらい状況が続いていた。それは、一つには解雇というか辞職に追い込まれた教師たちの口が重く、はっきりとしたことが伝わらなかったからだと思う。苦しくても辛くても話せない抑圧感があったようだ。家族にすら打ち明けられずに悩んでいた教師もいた。
B 同窓生の1人は、3月5日の集会に参加して初めて梅光の実態を聞き、ショックと憤りを感じて署名を集めてきたが、詳しいことがわからなかったと話していた。自身はキリスト教信者ではないが、梅光の精神やそこでの出会いで教えられたことは多かったという。梅光を別物にしていくのは許せないと話していた。「尋常ではない事態が起こっているぞ」ということで同窓生を中心に署名は広がった。そのなかで、先生たちが経験したことや学院運営を巡るさまざまな問題が浮き彫りになってきた。
D 表面に出てきたのは、教師をパワハラで退職に追いやるという労使関係の問題だった。そのやり方も確かにびっくりするようなもので、ブレインアカデミーによる「研修」は最近流行している首切りビジネスそのものだったが、取材を進めるなかでわかったのは、その労使関係も含めて四年前からやられてきた「改革」に問題の根源があり、教師・生徒・学生たちと学院経営陣との矛盾が激化してきたことだった。
E 地方の私学が少子化のもとで生き残るのは大変な困難をともなっている。梅光も同じで、中・高校が男女共学になったときも世間は「生徒確保でたいへんそうだ」と話題にしてきた。東亜大学がアジア圏から留学生ばかり連れてきているのもしかり。学生や生徒の確保が経営にとって生命線になってくることは誰でも分かる。問題は、そこで何がやられたのかだ。梅光の場合統轄本部長の只木徹氏が赴任して次第に実権を握り始め、文科省官僚だった本間政雄氏を理事長に引っ張ってきたところから、それまでと明らかに違いが出てきた。彼らは地元民からすると「よそ者」になるわけだが、外部から乗り込んできた力によって「梅光が別物にされている」という思いをいろんな人が口にしていた。
B 今回の解雇騒動で、結果的に中・高校は21人の教師が辞めていった。全教職員の半数以上になるようで、子どもたちに聞くと離任式は涙、涙だったようだ。生生しい大人世界の事情をさらけ出すものになった。ひどい辞めさせ方に対抗する術がなく、教師集団が各個撃破で追い込まれていったのについて、結束してどうにかできなかったのだろうか…という意見もある。ただ、もともと家父長的な色彩が強かったことや、採用の際には「組合をつくらないように」といい渡されるのが常だったこと、昔からの校風というか、とくに波風が立つこともない雰囲気のなかに「改革」勢力が乗り込んできて、何が何だかわからないうちに物いえぬ支配的な力が加わっていたこと、急展開していく事態への戸惑いのようなものを当事者たちからは感じる。「まさかあの梅光で」とみなが語っているのは、まさにそのギャップからだと思う。昔のイメージからは考えられないようなことがやられていたわけだ。
D それで何を「改革」してきたのか。近年は学校の壁に「授業料を○%減らします」とか「○○大学に何人入学しました」とか、携帯会社のPRかと思うほど大きな垂れ幕や宣伝文句を並べてアピールするようになった。テレビCMにも出てくるようになった。学生集めに必死だというのは傍目にもわかる。
E そういう意味で私学の苦境には普遍性があるし、梅光では文科省官僚出身者を理事長に据えて、そのパイプを頼りに補助金を得たいとかさまざまな思惑もあったのだろう。しかし、その結果、文科省路線そのままの「改革」が持ち込まれ、ここまで事態がこじれたというのが実態だ。「文学は儲からない」 経営の為学生求む転倒
C 大学関係者は職業専門学校化してきたことを非常に憂えている。例えば、2015年度から文学部(日本文学科)と国際言語文化学部(英語英文学科、東アジア言語文化学科)が、「文学部人文学科」に統合された。梅光は歴史的に日本文学で知られてきたが、同時に英文学や語学にも力を入れてきた。それが「英語コミュニケーション専攻」「国際ビジネスコミュニケーション専攻」などになり、国際ビジネスコミュニケーション専攻では、ANAと提携してキャビンアテンダントを養成するコースができるなど、「まるでANAのビジネススクールだ」と指摘していた。かろうじて日本文学科を守っているが、宮沢賢治の研究者である中野学院長本人が“文学はもうからない”と公言する始末だ。
D 子ども未来学科(子ども学部)の立ち上げにかかわった関係者は、保育士を育てる教師を育成する学科という位置づけで、喧々諤々(がくがく)議論をしながら建設してきたものだったという。ところが、その理念を置き去りにして単純に保育士資格をとる薄っぺらな学科になったことを残念がっていた。資格がとれることを売りにして学生を集め、保育士資格を与えるが、それで現場に出て行った保育士が現場に対応できず、すぐにやめていく。深く学問として幼児教育等を探究することよりも、資格がとれるか否かという方向にねじ曲がってしまった。
A 大学改革は全般的に、企業が即戦力になる学生をいかにつくるかを競っている。梅光も同じようにビジネススクール化の道を歩んできた。直接的には文科省出身者がトップに就いたこともあるが、政府が進めている人文系廃止の動きともかかわっている。「大学の知的劣化」はどこでも問題になっている。企業が求める人材を手軽な商品として市場に送り出す職業専門学校と化してしまい、最高学府としての面目を失いつつある。このなかで梅光でも「文学は飯にならない」といって別の道を探し始めていた。人文・社会科学は現在の人間と社会のあり方を相対化したり、批判的に考察する独自の役割を持っている。ところが、目先の経済的利害につながるか否かがすべての判断基準となり、大学教育全体が底の浅いものになっている。これは大学改革全般に普遍的に貫かれている方向だ。
D この間のグローバリズム、市場原理を導入した独立法人化もそうだが、遠い将来を見通した学問としての社会貢献ではなく、目前の産業界の要請や国家、地方行政の下請研究・教育機関として役立つことが第一になり、国家統制が強まってきたのも特徴だ。梅光に限らず全国の大学に文科省出身者や事務次官レースに敗れた者たちがたくさん天下り、同じように「改革」を競っている。
C 「改革」の成果として、確かに梅光学院大学の入学者数は増加した。授業料の2割引きとか給付型奨学金の拡充で学生を集めると同時に、外国人留学生も増やしている。来年度に入学する学生は330人といわれるが、そのうち約30人はウガンダ、ミャンマー、ベトナム、台湾、韓国などからの留学生だ。これまでは台湾や韓国など近隣の国からの留学生が多かったが、今度は日本語も英語も話せない学生を連れてくるようだ。
A 「改革」の成果が学生数確保だけなら、最終的に東南アジアあたりから連れてくる競争の仲間入りをするだけだ。文科省族の河村建夫がかかわっていた萩国際大学がそうだったが、私学助成金を得るために中国人留学生をたくさん引っ張ってきて、行方不明者が続出して大問題になった例もある。学問探究を投げ出して経営だけが一人歩きすれば、大学の設置目的すら吹っ飛んでしまいかねない。しかし、そうした本末転倒が公立や私学を問わず、全国の大学を舞台にしてくり広げられている。学生が学ぶために大学があるのではなく、経営のために学生を必要とする。少子化のもとで、そうしたパイの奪いあいみたいなことをやっている。
B 大学改革の背景は確かにあるが、客観視したときに梅光で起こっている事態を「改革派」「守旧派」などと見なすのは誤っている。流言飛語の類いを排除するべく、金銭にまつわる噂も含めて学院経営陣にも質問をぶつけてきたが、教師の扱いにしてもあまりにも乱暴で、とても「改革」=正義といえる代物とは思えない。もっとはっきりいうと、文科省関係者などのよそ者が入り込んで、食い物にしているというのが実態ではないか。真相解明が求められる点は多多あるし、とくに金銭面についての疑問が多すぎるというのが印象だ。
C 梅光は決して財政難の学校ではない。30億円ともいわれる金融資産を有しているし、数年前には理事長をしていた山田石油の会長が六億円ともいわれる寄付をしている。東亜大学のように金銭の工面に苦労している大学に呼ばれたとして、果たして問題視されているよそ者たちは行ってみようと思っただろうか? 裕福な経営だからこそ魅力を感じたのではないか? という疑問がある。本当に赤字なのか? 豊かな資産を食い物に
B この間の「改革」は財政赤字を錦の御旗にして実行してきた。しかし、本当に赤字なのかだ。本間理事長や只木統轄本部長、樋口学長などの行動を見ていると、今年1月5日の常任理事会で、自分たちの報酬を引き上げる案を出している。それは理事長1300万円、学院長1300万円、学長1200万円、統轄本部長1200万円に引き上げるというものだった。それを見て常任理事が驚いて反対すると、すぐにやめさせる行動に出た。本間理事長の場合、学院にやってくるのは月に1、2回、それも2、3日しか来ないのに1300万円というのは破格の報酬だ。それで、下関に来たときにはグランドホテルの最上階を定宿にしている。とても財政赤字に苦しむ大学トップの姿とは思えない。
E 中学校の合唱部が1月の声楽アンサンブルコンテスト県大会で金賞をとり、全国大会に行けるようになったが、学校から「今経営が苦しくて金がないから交通費は出さない」といわれ、仕方なく次点の学校に譲って福島に行けなくなった。中高校で教師たちが大量に首を切られて年収300万円程度の契約社員のような教師を増やしているのともあわせて、「ダブルスタンダードだ」という声は多い。
B この間、学院内部の事情に精通する人人にも取材していったが、みなが丹念に資料を整理しているし、問題点あぶり出しに向けた態勢は整っているように思えた。驚かされたのは、只木氏の出張経費は1人だけで年間400万円という点だ。コーポレートカード(法人カード)にしても月100万円までは自由に使えるというもので、一番使う只木氏がカードを管理しているから、そのほかの人にはチェックしようがない状態になっているという。何に400万円も費やすのか、毎月100万円近くを費やすのかは領収書や明細も含めて重要かと思うが、いったいどんなチェック体制になっているのか、監事は何をやっているのかと、聞いていて疑問に感じた。問題を指摘する監事もいたようだが、逆に首を切られたという話も耳にした。
C 物品購入にしても不透明なものが多いといわれている。中・高校の生徒たちが一番問題にしているタブレットも、教職員たちの反対意見を無視して推し進め、300台以上を購入した。毎月の学校負担は110万円に上るようだが、ほとんど使っていない生徒も多い。「大好きな先生たちを辞めさせるのに、なぜこんな物にお金を使うのか」という生徒たちの怒りとなっている。
D そして大きな問題が株式運用だ。表向きは現金預金30億円のうち10億円を運用しているという説明だったが、これももう少し詳しく取材してみると、昨年3月末の段階で、野村證券に5億円、大和証券に5億円(退職給与引当金を入れている)、大和ネクストに5億5000万円と、これだけで15億円を超す金額になっている。さらにこの後「証券は今が底値だから買っておけばもうかる」といって、日興証券の系列に2億円を突っ込んでいるという話で、合計17億円を運用しているようだ。
運用を株式会社クライアント・ポジションというコンサル会社に委託しており、ここにも約300万円支払っているという。株価の下落が止まらないなかで、損失額はふくれ上がる一方だ。裕福な学院の資金に、証券会社などが寄ってたかって群がっているのもわかる。
A 「改革」というよりは、こうした学院経営に批判意見を持つ人、抵抗勢力と見なした人を次次に切り捨てていったことに特徴がある。理事、監事などの役員、事務職員を切り、今回は大学や中・高校の教員を大量に解雇した。一方で只木氏は四人も女性秘書を抱えている。
「気に入った秘書の給与を8万円もアップした」とかも噂話ではなく、真相解明してみたらいいと思う。この3月末で、真面目に働いていた経理の女性2人も解雇してアウトソーシングするようだ。25日に開かれる理事会で現監事2人が解任されるという話にもなっている。
D 梅光の経営状態を知る人たちは、「赤字、赤字というが、梅光には借金がない。30億円持っていれば、こつこつ地道にやっていけば十分な経営状態だ」と話している。中・高校については少子化の下でここ数年は年間1億円ずつ赤字が出ていたようだが、21人もの教師を解雇しなければならないほど、ましてやつぶさなければならないほどの経営状態ではないという。
B 私立中・高校に対しては、学校規模(生徒数)が1~299人には50万円、300~599人には100万円、600人以上には200万円の補助金が出ており、加えて生徒1人当たり(保護者が市内在住に限る)には1万5000円の補助金も出ている。それを合計した額は下関短期大学付属高校では318万5000円、早鞆高校は1256万円、国際高校は527万5000円、梅光高校は537万1710円。さらに国(県)からの助成金も生徒1人当たり34万円ある。市内の私立高校の関係者も「赤字を理由に首切りするのは私学の常套手段だ」と指摘していた。
A 現金で30億円も持っている私立学校というのはお金持ちだ。東亜大学などは私学振興財団に毎年2億円ずつ返済している。とても投資に回す貯金などない。梅光はお金を持っているからこそ証券会社も喜んで飛びついているし、そのお金をみんなで食い物にしているのが実態ではないか。駅前のホテルに暮らしている資産運用担当職員についても、どこからそのようなお金が出ているのか真相解明したらいいと思う。自分のカネで単身赴任のホテル暮らしなどするものだろうか。梅光100年の歴史 評価高い日本文学研究
D 一般市民のなかでは「あの梅光で」というショック、驚きが大きい。100年の伝統がある梅光のイメージといえば、地道ではあるが下関の歴史のなかで存在感があり、下関の風格に一つの影響を与えてきた。かつては「上流階級の子どもが行く学校」だった梅光での騒動が、今の下関の疲弊と重なり、商業都市・水産都市として繁栄した下関の衰退の象徴だという論議にもなっている。よそ者に引っかき回されて散散な目にあっている姿も下関の政治経済の状況とそっくりで何ともいえないものがある。
A 梅光そのものの歴史を見ると、140年ほど前にヘンリー・スタウト博士夫妻が長崎に英語塾を開設したのが始まりだ。彼が下関に来て一番最初につくったのが下関教会で、そこにいた服部章蔵が梅香崎女学校を長崎につくった。その後、梅香崎女学校と山口の光城女学院を合併して、下関に梅光女学院高等学校・同中学校を設立した。それから100年になるが、明治維新後の女子教育を担ってきた学校だ。伝統的には日本文学研究で知られる、まさに人文系だ。
B 元学院長の佐藤泰正氏は夏目漱石の研究者として知られているし、大学内にある郷土文化研究所にはかつて、国分直一という国内屈指の考古学者がいた。綾羅木郷台地遺跡の発掘にかかわっていた国分博士が、ベトナム戦争のさい企業が砂を採取して遺跡を破壊しようとしたとき、現場で体を張ってブルドーザーと対峙し阻止した歴史は、山口県をはじめ全国の考古学研究者のなかで語り草になっている。そして守られてできたのが現在の考古博物館だ。
独自の宗教教育が中心ではあるが、一つの理念を持った純潔な教育をしているというところでの信頼があり、学問的・教育的な内容にしても水準の高さは認められる権威があった。25日の理事会に注目 子供に責任負う解決を
D こうした歴史や伝統、地域や同窓生とのかかわりを断ち切るから矛盾になる。あと、宗教戦争の色彩もあって、オンヌリ教会で塗り替えようとしているという危惧は同窓生や関係者のなかに強くある。市内の教会を切ってオンヌリ教会を入れ始めたのが1昨年からといわれている。それが佐藤元学長の死で、たがが外れたように加速したようだ。「梅光の歴史の終焉」とみる人もいる。幼稚園長や中・高校の宗教担当など主要ポストにオンヌリ教会の関係者が就いているのも特徴だ。
A 労使問題から学校運営、私学の置かれている苦境、さらに宗教上の問題など、さまざまな問題が複雑に絡みあって単純ではない。ただ、「カネがない…」といっている「改革」派が、結構大胆な金遣いであることはわかってきたしそのダブルスタンダードをみなが疑問に感じている。文科省改革路線、英語教育の最先端を梅光でやって、その結果、学校崩壊を引き起こしている。それが「改革」の結果だった。
E 学校、教育機関であるなら、子どもたちの教育に責任を負うことが大前提だ。
今回の解雇問題では解雇する側のやり口もひどいが、同時にそれを恐れて逃散するだけでは何も物事は解決しない。今後立て直していくにはどのような力がいるのか、同窓会の援護射撃もあるし、世間の世論も動き始めたなかで、梅光で起きた出来事を一つずつ真相解明も含めて明らかにし、膿をとり除かなければ前に進みようがない。理事長そのほかを解任しただけで何かが解決するわけでもない。どのような大学なり中高校にしていくのか、発展的な力を束ねていくことが事態打開の大きな原動力になると思う。
A 25日には理事会・評議委員会が開かれるようだが、そこでどういう結果になるのかが注目されている。評議委員会には地元企業のメンバーもかなり含まれているが、同窓生や地域、保護者、生徒たちの思いに対して、どのような態度をとるのか注目されている。あと、投資信託等に突っ込んでいる17億円の金融資産は、この間の株式市場の落ち込みで相当に目減りしていることは疑いない。この焦げ付きも将来的に誰が責任をとるのかが注目されている。理事も評議委員もみんなが蜘蛛の子散らして逃げていったでは話にならないし、子どもたちに責任を負わなければならない。それこそ学院経営の抜本的な改革が迫られるところへきている。
涙、涙の離任式……梅光学院中・高校
■長周新聞(2016年3月21日)
∟●涙、涙の離任式……梅光学院中・高校
涙、涙の離任式……
梅光学院中・高校
生徒に深い印象残す2016年3月21日付「財政難」を理由に多くの教師が解雇された下関市の梅光学院中・高校で18日、離任式がおこなわれた。どの教師が学校を去るのか、この日まで生徒たちは知らされていなかった。講堂が涙で包まれるなかで教師たちが残した言葉は、子どもたちの心に深く印象を刻み込むものとなった。
満身の怒り語る教師 担任の退職初めて知る生徒も
離任式が始まり、校長の「今年やめる先生を紹介します」という言葉で並んだ教師は16人にのぼった。残る教師の方が少ないほどだったという。そのなかには噂になっていなかった教師もおり、また担任教師がやめることを初めて知るなど、衝撃を受けたことを生徒たちは語っている。高校1年生の担任は全員が退職。体育科も専任教師全員、英語科は昨年と1昨年に採用された2人を残し、古参の教師はほぼ全員だった。国語科も4人のうち3人など、生徒たちが長く信頼を寄せてきた教師たちだった。
「本当はやめたくないのに、やめさせられた」「腹が立って腹が立ってしかたがありません」「パワハラに負けてやめるような人間ではないことをわかってほしい」。教師たちが一人一人発言を始めると、講堂中が涙で包まれたという。
ある教師は、「この学院を愛してもいない人たちによって学院が踏みにじられている」といい、またある教師は、「教師を6人やめさせて4人採用するなら、やめさせる教師は2人でよかった。この学校が数学の足し算・引き算ができる学校かどうか、あなたたちが来年確かめなさい。私たちは確かめられないから」とのべた。
一人の教師が、「古い教師がいたら今の梅光がなくなる」といわれ希望退職に応じたこと、生徒会などが署名するのを見て「やっぱり梅光に残りたい」と思い取消を求めたが、受理されなかった経緯を涙ながらに語るのを聞き、慕っていた高校2年生たちは大泣きしていたという。
また、昨年秋頃から突然姿を見せなくなり、生徒たちが心配していた宗教主任も出席。離任式への参加も迷ったが、生徒たちから寄せ書きが届いたり、自宅に押しかけてきたり、同僚の教師たちに後押しされて出席したことを語り、「学校を見るだけで苦しかった」と思いを語ったという。
教師が語る内容は、「私たち生徒にとってはびっくりすることばかりだった」という。悲しみと同時に教師たちの満身の怒りにふれ、多くの生徒が悔しさ、怒りを募らせている。
これほどの教師が去り、4月から学校はどうなるのか、中・高校が今後どうなっていくのか不安も広がっており、「自分たちのときはまだ学校はあるのだろうか。大丈夫だろうか」と語りあわれている。
子どもを育てる教育の場で、教師も子どもたちも、これほどの思いをしなければならない学校とは何なのかを考えさせる離任式となったようだ。
梅光学院騒動の真相に迫る、なぜ14人の教師は辞めたのか
■長周新聞(2016年3月18日)
∟●梅光学院騒動の真相に迫る、なぜ14人の教師は辞めたのか
梅光学院騒動の真相に迫る
なぜ14人の教師は辞めたか
理事長解任署名の背景
2016年3月18日付今年に入ってから、下関市にある開学100周年を迎えた梅光学院で中・高校の教師14人、大学の教員8人が辞めることが明らかになって以後、生徒たちが「先生を辞めさせないでほしい」と署名活動を始め、3月5日には保護者、教職員有志、卒業生らが300人の集会を持って「梅光の未来を考える会」を設立。現経営方針の転換と理事長の解任を求める署名運動を展開してきた。署名は卒業生を通じて全国区で広がり締切の14日までに1万5361筆が集まった。16日には代表者らがそれを携えて梅光学院を訪れた。ただ、関係者以外の市民の耳に届いてくるのは「とにかく梅光が大変なことになっている」ということ以外には具体性が乏しく、さまざまな噂や憶測ばかりが飛び交い、いったいなにが起こっているのかわからない状態が続いてきた。本紙はこの間の経過について関係者に取材し、流言飛語ではなく何が真実なのかを問うてみた。
下関で100年の歴史誇る私立 「改革」で学校崩壊の本末転倒「梅光の未来を考える会」がおこなっている署名は、「梅光学院は、伝統あるミッション・スクールとして、下関を拠点に、質の高い教育を行い、地元の文化の一翼を担ってきた。しかし“改革”の名のもとでの専横的な学校運営により、教育環境は破壊されつつあり、資金の使途に数々の疑念があるばかりでなく、コンプライアンス違反の疑いも浮かび上がっている…梅光学院の未来のために、私たちは、本間理事長の退任と、現行運営方針の転換を強く要求する」としている。
生徒たちのなかでは「共学化に反対した先生が辞めさせられるのだ」と話題になっているものの、どの教師が解雇されるのかわからない状況が続いている。そのなかでアンケートをとって校長に提出して説明を求めたり、署名活動をしてきたが、学校が子どもたちに真摯に向き合った形跡は乏しい。先日開かれた高校の生徒総会で「10億円を株に運用している」ことが話題に上るなど、学校に対する子どもたちの不信感も強いものがあるようだ。
梅光学院でいったい何が起きているのか? どうしてそれほどの教員が大量に辞めていくのか? 何と何が矛盾して、その結果、学校の宝であるべき子どもたちの教育環境はどうなるのか? である。希望退職募集が発端 異常な人格否定研修会
問題の発端は、昨年10月下旬、「財政難」を理由に40歳以上の中・高校の教師11人を対象に希望退職の募集がおこなわれたことだった。
第1回目の募集で、すでに嫌気がさしていた英語教師らの多くが辞表を提出したとされる。その要因として関係する人人が指摘しているのが、2014年度から只木徹氏(統轄本部長、大学事務長、中高校副校長)が主導する英語教育改革と矛盾が生じていたことだ。その英語教育改革とは、文科省が進める「授業をすべて英語で」を徹底するものだったという。基礎になる文法を教えないので、学力の低い生徒になるとついていけず置き去りになる状況も出ていたようだ。公立高校の受験を希望する中学3年、大学受験を控えた高校3年生には対応できない状況も生まれた。子どもたちが喜ばないことを、いいなりになってやらなければならないことに嫌気がさしたのだという。
だが辞表を提出した教師は11人に及ばず、数年前から中・高校にかかわってきたブレインアカデミーというコンサルタント会社が前面に登場した。全国で50以上の私学の人事制度の構築・導入などにかかわった実績を売りにするコンサルだが、その実態は、最近問題になっているリストラビジネスを手がける人材派遣会社の私学バージョンのようにも見える。
まずブレインアカデミーによる「再就職斡旋の説明会」が開かれた。当初は希望者のみだったが、直前になって「全員参加」となり退職を希望していない教師も含めて参加することになった。そして11月14、15日の2日間、まだ辞表を提出していない教師を集め、1日5時間、計10時間にわたって「キャリア再開発」と銘打った研修会が開かれた。学院によると「この研修を受けたのは十数人」。講師はブレインアカデミー特別専任講師の肩書きを持つ西條浩氏だった。
1日目、「人の目を見て話聞けよ!」と罵倒し、顔を上げると「その目はなんだ!」という場面があったり、「こういう発言をすることからして、あなたはこういう人だ」と嫌みな人格評価をするなど、特定の教師に狙いを定めた個人攻撃と人格否定がやられたことに教師たちは戸惑った。普通の人なら腹が立つ内容だが、事前に「会の趣旨に反することをいったり、講師に反対意見をいう人は退出してもらう」「どうしても辛くなったら退場してよいが、なんらかの処分がある」と釘を刺され、教師たちは我慢するほかない状態に置かれていた。
続く2日目は、参加者の能力を全面的に否定することに力が注がれたという。年末までの「必達5項目」が掲げられ、「今から頑張って90点、100点になる人がこのなかにいるか? せいぜい60点か65点にしかならない」「このなかで努力して学院が希望する点数になる人はいない」「これがあなたたちの中途半端な成果だ」といった調子で教師の能力を否定。そのうえで、「当事者意識」「自責」といった言葉を強調し、「学校の経営状態がこうなったのはあなたたちの責任」「当事者意識を持って学校改革をしていかないといけない。でも能力がないからよそに行ったらどうか」と、「人生の棚卸し」などの言葉を使ってくり返し巻き返し精神的に追い詰めていった状況を、当事者である教師は明かしている。経営陣の「経営責任」をいつの間にか教師たちにすり替えていく手法だったようだ。
そして最後に研修の成果を発表するプレゼンがおこなわれ、一人ずつ「今後どれだけ貢献できるか」を発表させられたが、西條氏はそれを聞いて「あなたたちのなかで、私がこの人と一緒に働きたい、この人の力を借りたいという人は一人もいない」といい、続いて中野学院長が、「(この研修は)先生を辞めるまで終わらない。あまり無理をなさらず、他の道も探した方がいい」といった内容をのべたという。初めから「辞表を出すように」と囲い込んでいく研修会だったのか、参加した教師たちにとっては脳みそ破壊をやるブレインバスターがいきなりあらわれ、耐えがたい研修会となった。
その後、2度目の希望退職の募集がおこなわれた。1回目の条件では退職金について「本俸8カ月加算」だったが、2度目は「6カ月加算」に削減されていた。それでも辞表を提出しなかった教師には、第2段階のブレインアカデミーによる「個別カウンセリング」(1人90分)が待ち受けていた。密室でのカウンセリングの後、第3段階は「面接」で中野学院長、只木統轄本部長、樋口学長、只木氏の秘書・辻野氏の4人に囲まれて、「あなたは来年度はいらない」「来年度の学院の構想には入っていない」と戦力外通告がされていったという。3度にわたる圧力で11人の教師が辞表を提出。今年度末で退職する予定の教師は中・高校全体で14~15人に上っている。
梅光の教師たちの年収は300万~400万円、長く勤めた人で500万円台と、教師としては決して高給ではない。それに対してブレインアカデミーはたった1人を2日間・10時間の研修に派遣しただけで300万円を得た。時給にして30万円である。さらに驚かせたのは学院の顧問弁護士が渦中で口を滑らせ「1人辞めさせるごとに成功報酬100万円を手にしていた」という話が広まったことだった。11人分の成功報酬を得たとすると1100万円、計1400万円になる計算だ。ただ、この真偽について只木氏に問うたところ「まったくのデマだ」とのべていた。教員の大量解雇 来年の授業体制組めず
これほどの大量解雇でもっとも心配されるのは、来年度からの子どもたちの教育がどうなるかだ。
中・高校では正規の教師の半数が退職し、大学でも来年度の授業予定も組んでいた准教授が、2月24日になって「総合的な判断」という理由で突然雇い止めの通告を受けており、中・高・大学すべてで来年度の授業体制がいまだに組めていないと指摘されている。ある教員はこうした状況について「入学者が増えたというが、レストランで客が増えたのに料理を出さないようなもの。反教育だ」と語っていた。「改革」した末に教師が逃散するように辞めていき、おかげで学校が崩壊するというのでは本末転倒というほかないが、職安に梅光学院の教師募集の求人が幾つも出ていたのを見て、学外でも懸念する声は高まっていた。4年前からの改革 「文学は儲からない」
今回の問題は突然起こったものではなく、4年ほど前から大学を手始めにやられてきた「学校改革」の一環で、それが表面化したものだと関係者は指摘する。背景には、政府・文科省が進める人文系廃止や、少子化のなかで財政難に陥っている地方の私立大学が、生き残りをかけて熾烈な競争をくり広げていることなど、根深い問題が横たわっている。梅光学院も十数年前から定員割れに頭を悩ませてきた。
梅光学院の「学校改革」は、2011年10月、現・統轄本部長である只木徹氏(名城大学で非常勤講師をしていた)が梅光学院にやって来て、その翌年の2012年春から始まった。非常勤講師として着任した同氏は、まず事務局を廃止して統轄本部を新設。本部長に就任して人事と金を動かす権限を掌握した。1年たった2013年、ガバナンス(統治・支配)強化のために、只木氏が本間政雄氏(元文科省官僚、大学マネジメント研究会会長)を呼び寄せ、現在の本間理事長、只木統轄本部長(大学事務長)、樋口紀子学長、中野新治学院長(中・高校長)の体制ができあがった。
「学生数を確保する」こと、「人件費比率の削減」が改革の内容で、真っ先に事務職員の給与切り下げがおこなわれた。意見をいう職員には降格人事や左遷など、容赦のない仕打ちがおこなわれたという。このなかで心を病んだり、学院のやり方に納得できず、半数ともいわれる事務職員が学院を去り、半分が非正規職員になっているようだ。
2014年からは大学教員の給与切り下げと人員削減が始まった。執行部が「金にならない」とターゲットにしたのは文学だといわれる。梅光学院大学は歴史的に日本文学の研究で知られてきたが、2012年に13人いた日本文学科の専任教員を四人まで削減。残りは非常勤講師でまかなう状態になった。1人1人呼び出して「今年辞めたら退職金を○○円出すが、来年になったら半額になる」という手法だった。
ある教員は、「梅光は文学や語学に力を入れていたのに、文学はもうからないという。かろうじて日本文学は守っているが、英文学や英語学などはなくし、薄っぺらな学問にしようとしている」と危惧していた。辞めた教員を非常勤で補うなど有期雇用に変え、いつ辞めさせても法律上問題のない手法で削減は進んでいる。
大学教育にかかわった経験のある人物は、「子ども未来学科を設置したとき、子どもの未来を考えられる人材や研究をどのようにしていくか、喧々諤々(がくがく)論議しながら建設してきた過程がある。それが保育士の資格をとれればいいというものに変わってしまった」という。もともと「保育士を育てる教師の育成」を追求していたはずが、保育士資格をとらせるだけに変わった。教授会の発言権を奪って学長に権限を集中させ、理事会で反対意見をいう理事をやめさせるなど、「守旧派」と見なした人人を学外に追いやるなかで「改革」は次から次へと進んでいったという。
その結果、高校への生徒募集や宣伝広告の強化、給付型奨学金(1億円ほど)の強化、2013年度からは学費を20%減額するなどして学生数は増加した。「地方小規模大学のV字回復」と、教育情報サイトでとりあげられるほどだ。ベトナムなど東南アジアからの留学生の確保にも力を入れたようだ。学生数を基準にする文科省にとっては、今回のような騒動が起ころうと「優秀な大学」である。しかし、「4年前は赤字が1億2000万円といっていたが、この4年で2億ずつ増え、今累積が8億円といわれている」とも指摘されている。そうしたなかで、学院のなかでも「赤字部門」、すなわち経営者の視点から見たときに不採算部門に映るであろう中・高校にも改革の手が伸び始めていった。生徒や同窓生の疑問 不透明なカネの使い道
地方の私立大学が生き残りをかけて懸命になるのは無理もない。大学として存立するために何を為すべきかはどこの大学でも抱えている重要課題だ。しかし関係者の多くが怒っているのは、これらの「改革」が進むと同時に、不透明な金の使い道、執行部にまつわる黒い噂ばかりが拡大し、説明を求めても明らかにされないことだ。
例えば生徒たちが問題にしているのは2015年度から導入されたタブレットだ。中・高校の全校生徒と教師全員に、およそ300台ものタブレットが一人ずつ配られた。ある生徒は「学習の記録や授業に使えといわれるが、重たすぎて家に放置している生徒もいる」と話す。学校で充電してはいけないので、毎日持ち帰らなければいけないからだ。「礼拝のときに先生がタブレットを活用しなさいというが、先生さえ使えていないのに意味がないと話になる」という。男子を増やすため、サッカー部をつくってレノファと提携を結んだことも話題になっており、「そんなお金があるなら、なぜ先生たちを首にするのか」と子どもたちは疑問にしている。
さらにこの間、昨年7月から学院が所有している現金資産のうち10億円の運用を始め、昨今の株価下落で目減りしていることも心配されている。また、「4人の執行部が法人カードを持って好きなように使っており、学内の人間はその支出先を知ることができない」「毎月100万円を使い切っているというのは本当か?」「統轄本部長が報酬を1000万円から1300万円に上げてくれといっているのは本当か」等等、金銭にまつわる疑問も多い。さらに宗教上懸念されている問題として、戦後日本キリスト教団とつながりをもってきた梅光学院のなかに、オンヌリ教会(韓国)のチャペルをつくるという噂など、さまざまなものが飛び交っている。
あと、教員たちや学院に関係する人人に取材するなかで共通して出されていた懸念は、一連の改革や解雇が中・高校をなくすための布石ではないかというものだった。2013、14年頃に、中・高校の生徒数が減っているにもかかわらず、1年契約の常勤講師を退職者数以上に採用しており、「教師が多すぎるのではないか」と疑問視されてきたが、それらが「正規の教師をリストラするための準備、もっといえば中・高校をいつでもつぶせる体制に向かっている」と真顔で心配しているのである。曲がりなりにも中心市街地の丘の上の一等地に位置するのが中・高校で、広大な用地は高値で取引されることは疑いない。「校舎を新しくしたばかりで、まさかそれはないだろう…」という意見と同時に、そうした将来を本気で心配している人人も少なくない。統轄本部長に聞く 中学・高校の存続は?
これらの疑問や噂が目下、同窓生やその周囲を巻き込んで流言飛語のように拡大している。放置することは学院にとっても不名誉で、真相を明らかにすることによってしか打ち消すことなどできない。学院に取材を申し入れたところ、只木氏と小谷財務部長が対応した。まず第一に、教員不足でカリキュラムが組めないのではないかという疑問については、「雇い直しは(教科によっては)ぎりぎりのものもあるが、授業はきちんとできるようにしていく」という説明だった。
株式運用については、担当の小谷財務部長が回答し「投資信託、株、債権、リートなど組み合わせたファンドラップでやっている。当然ながら規定があるし、理事会でも承認を得て長期の運用でやっている。決して投機的なことをしているとか、ギャンブル的な話はない」と強い口調でのべていた。昨年七月の運用開始からの目減り分について質問したところ、「株式が下がったパーセンテージの半分くらい」とのべていた。
毎月100万円の限度額ともいわれている法人カードについて只木氏は「会社だったら当然持つ物だ。監事や公認会計士がみんな見る。絶対に証拠が残るから、むしろ明朗会計だと評議員の企業主もいっている」とのべていた。
そしてもっとも心配されている中・高校の廃止については「過去10年を見て、普通の会計士が見ればつぶすのが正しい選択だという。今は再建しようという意志でやっている」とのべていた。「今」は再建するつもりであるが、今ではないいつかにその意志がどうなるのかはわからなかった。「今は」を強調していたのが印象的だった。
また、オンヌリ教会について尋ねると、「奇想天外な発想ですね! そういう話があるんですか!」と驚いた表情をして、「キリスト教の学校だから個人的にはチャペルを建てたいが、今は計画はない」とのべた。子供たちの未来の為 真相示し教育的解決を
この間の梅光学院を巡る騒動は、単なる労使問題で片付けることのできない問題を含んでいる。それは同じように財政難にあえぐ地方大学、とくに私学の姿を映し出すものでもある。しかし聞こえてくるのは、大人たちのどろどろした金の話だったり、支配と被支配のそれこそ専横的といわれる学院運営の実態だったりで、文科省官僚出身だった理事長のもとでくり広げられてきた改革の結末は、何ともしれない印象を放っている。それでいったい、学院に通っている子どもたちはどうなるのかがもっとも心配されている。
少なくとも、梅光学院は誰かがカネを稼ぐための道具ではなく、子どもたちを教育するために理念を掲げ、100年の歴史を紡いできたはずだ。その梅光学院が乗っ取られる、別物のオンヌリ学院か本間学院にされてしまうという懸念が、同窓生を行動に駆り立てている最大の要因のようだ。
現在、署名運動は広がりを見せており、学校の行く末を巡る論議が活発化している。お金にまつわる疑問にせよ、正面から真相を明らかにすることによってしか解決の道はない。教師の解雇についても、そのように学校を支えてきた人材を次から次へと追い込んでいく運営にどのような未来が待ち受けているのかである。
「改革」して大学なり学校が崩壊したというのでは、あまりにも惨い結末といわなければならない。現経営方針を転換させたのちにどのような学校にして、子どもたちをどう育てていくのか、大学であればどのような理念によって人材育成の分野で社会的な役割を果たしていくのか論議を深めていくことが待たれている。建設的な力をつなげていくことしか梅光学院の未来はなく、阻害物があるならば取り除き、どう進んでいくのかが問われている。
2016年03月18日
梅光学院、経営方針の転換,本間理事長の退任を求める署名、目標を上回る1万6千人
全国から集まった署名簿を集計する梅光学院の同窓会員ら下関市の学校法人梅光学院(本間政雄理事長)の教育環境が破壊される-などとして、同窓生らが中心になって設立した「梅光の未来を考える会」が、経営方針の転換、本間理事長の退任を求めて呼び掛けた署名の集計が15日あり、同日夕までに1万6千人近い署名が集まった。
14日までの9日間で1万人の署名を目標に活動を展開したが、学院運営に納得できない同窓生らが運動の輪を広げて、北海道から沖縄まで全国から署名が集まった。梅光には縁のない市民からも多くの署名が寄せられた。同日夕までの集計では1万5631人、今後も増えそうだという。
同窓会役員で元教員の梶間真寿美さん(79)は「梅光で受けた教育は素晴らしいものだった。それがここ数年、改革という名のもとで信じられない状況になっている。卒業生として黙っておれない、何日間か立ち上がろうと呼び掛けた結果だ。学院は重く受け止めてほしい」と語った。
梅光学院大学教職員組合の委員長を務める渡辺玄英文学部専任講師は、署名の数に「皆さんの関心、学校への愛情の深さを示すものだ」とし、「市民の方々からもたくさん寄せられたのには驚いた。学院執行部がやっていることが、いかに社会通念からはずれているかということ」と話している。
同会は16日午後、署名簿を持って同市向洋町の学院本部で本間理事長に会い、署名の本旨を伝える。17日以降も下関市や山口県、文部科学省などを訪れ、同様に訴える予定だ。
5日に設立された同会は6日から署名活動を展開。財政健全化などを理由に同学院が中学校高校で一気に11人の希望退職を募集する際に、研修名目の面談に参加した教員から「パワハラだ」と反発の声が上がり、大学で特任准教授の突然の雇い止め通告など人事で混乱が続く学校運営を、「計画性のない人事」「専横的な学校運営で教育環境が破壊されつつある」などと訴えていた。大学では4月からのカリキュラムが決まらない学科、ゼミもあるという。
梅光の未来を考える会、状況の説明と退陣要求がなされました
本日の通告の概要2016年03月16日
本日の「通告」は、梅光学院大学 学院長室にて行いました。
学院側は理事長、学院長、統括本部長、秘書室長、「梅光の未来を考える会」側は発起人3名と有志6名が出席しました。また、新聞社など数社も立ち会うことになりました。
17:00から15分程度、「梅光の未来を考える会」による状況の説明と退陣要求がなされました。学院側は、理事長は言葉を発せず、学院長が「真摯に受け止めて今後対応する」と言っただけでした。
今回は、署名は途上という理由で、呈示しただけで学院には引き渡さず回収して参りました。過去に、「大学の諸問題についての学生自身によるアンケート結果報告」を受け取りながらロクな対応もせずそのまま放置したり、今年1月の中高の署名運動でも署名を受け取った後に形式的な対応をしただけで問題の本質的な対応はせず、また3月の学生による公開質問状に対する返答も内容が無意味であるなど、様々な働きかけに対する学院の姿勢は常に真摯とはかけ離れたものでした。
今回の私たちの活動は署名を集めるのが最終目標ではなく、これからも続いていく梅光の未来を描くことです。
今後の活動につきましても随時ご報告できるよう致します。
何卒、皆様のご理解とご支援を賜りますようお願い致します。
署名結果(暫定)2016年03月15日
私たちの活動にご理解とご協力を賜り感謝致します。
3月15日にご署名の集計を致しました。
17:30時点の暫定ですが15,631名に上り、目標の1万を大きく上回ることができました。
これも偏に皆様のご協力の賜物と存じます。あらためまして感謝申し上げます。
判明している未到着分もありますので、最終的にはこれらを含めて確定値と致したいと存じます。
各方面への反響の大きさもありますので、しばらくの間電子メールでの署名受付を継続致します。
ご協力頂ける場合にはこれまで同様のメールアドレスで受け付けておりますので署名にご協力頂けましたら幸です。署名活動はこの会の最初に第一歩でございます。
この皆様からのお志を糧に、梅光を未来に資する活動を続けて参りたいと存じます。
まずは、3月16日17:00に梅光学院大学東駅キャンパス学院長室(予定)において、理事長・学院長に対し、署名の開示とこの会の要求の通告を行います。
お時間が許す様であればこの場へお越し頂き、様子をご覧頂ければと存じます。これからの活動の詳細につきましては、ブログ(http://baikomirai.seesaa.net/)やツィッター( 梅光未来@baiko_mirai )でお知らせ致しますので、これからもご支援を頂戴できれば幸に存じます。
今後共、ご支援を賜りますようお願い致します。略式ではありますが、ひとまずお礼とご報告を兼ねて。
2016年03月14日
梅光の未来を考える会、梅光学院に対する現経営陣の運営方針に反対し、理事長・本間政雄の退任を強く求める
■梅光の未来を考える会
∟●署名活動のお願い
∟●署名用紙
署名活動のお願い新聞報道で御承知の通り、梅光学院は現在、混乱の極みにあります。
長い歴史の中で、梅光学院は、伝統あるミッション・スクールとして、下関を拠点に、質の高い教育を行い、地元文化の一翼を担ってまいりました。
しかし、「改革」という名のもとでの専横的な学校運営は、多くの教職員の退職・巨額の資金運用による損失を誘発し、時間外労働及び休日労働にかかわる賃金未払などの法令違反にもつながっています。また、中・高・大学ともに、4月新学期からの教育に支障はないのか、憂慮すべき状況です。
今のままでは、梅光の教育理念も梅光の未来も閉ざされてしまいます。
そこで、わたしたち有志は、本間理事長の退任と、現行の学院運営方針の転換を強く要求致します。
以上の趣旨に御賛同下さいます方は、別紙署名用紙に、御芳名と御住所をご記入くださいますよう、お願い申し上げます。また、ご多用中まことに恐縮ですが署名用紙は、3月14日(月)までにご返送下さい。
なお、今後の「梅光の未来を考える会」活動報告をご希望される方は、住所欄にFAX番号もしくはメールアドレス、電話番号をお書き添え下さい。
最後に、梅光が目指す教育と、梅光の未来を取り戻すために、お力とお知恵を賜りますよう、重ねてお願い申し上げます。2016年3 月5日
「梅光の未来を考える会」
学校法人梅光学園、同窓生ら 本間政雄理事長の退陣を求め署名活動
理事長退陣を求める署名活動 梅光学院同窓生ら300人集会-下関下関市の学校法人梅光学院(本間政雄理事長)の運営をめぐり、同窓生らが5日、経営方針の転換や本間理事長の退任を求めて「梅光の未来を考える会」を同市細江町の市生涯学習プラザで設立した。
学院が運営する中学校高校や梅光学院大学の学生、同窓生、3月末で契約終了を言い渡された同大の矢本浩司特任准教授、保護者ら約300人が集まった。
学院をめぐっては財政健全化を理由に、中学校高校で40歳以上の教員(常勤講師と非常勤除く)に希望退職を募集。現役教員によると、対象外の教員を含めて14人が退職届を出しているという。対象の教員に外部のコンサルティング会社が行う研修を受けさせており、参加した教員から研修内容が「パワハラだ」と反発の声が上がっていた。
集会では同大や中学校高校の関係者が「計画性のない人事」などを指摘。矢本特任准教授が雇い止めの経緯などを説明し、「生徒や学生を中心に考えた対応をしてほしい」と求めた。中学校高校の教員が「パワハラ」研修について、「言葉の暴力で個人攻撃するようなことがあった」と訴え、講師の具体的な言動を説明するたびに会場がどよめいた。
同窓生が本間理事長の退任を求める決意文読み上げなどがあり、現経営陣の運営方針に反対し理事長の退任を求める署名活動を始めることを決めた。署名簿には「専横的な学校運営により、教育環境は破壊されつつある」「コンプライアンス違反の疑いも浮かび上がっている」などの文言もあった。8千~1万人分の署名を目標に、14日まで続ける。理事会が開かれる3月下旬までに本間理事長に届ける。
■人気准教授 突然の契約打ち切り 学生反発、抗議文送付
梅光学院大学(下関市)の特任准教授が3月末での契約打ち切りを突然通告されたことに、ゼミ生を中心に学生が「納得できない」と反発、大学側だけでなく、県や文部科学省などにも反対署名を添えて抗議文を送ったことが5日分かった。3月末での事実上の解雇通告を受けた同准教授は、学生による授業評価がトップランクとされるが、学生が動いた背景に、多くの教員が年度末で去ることへの、学院側に対する不信感ものぞく。
教員は同大学文学部の矢本浩司特任准教授(43)で専門は日本文学。1年ごとの雇用契約で昨春から教壇に立った。学生の人気が高く、一般講義のほか受け持つ日本近代文学ゼミに、来年度は新たに文学研究13人のうち10人が志望するなど集中し、調整が急がれる矢先の通告だった。
赴任して間もない昨年7月の学生の授業評価アンケートでいきなり評価最上位ランクになり、教員の教育力向上を目指すFD委員会の副委員長を命じられた。年4回の同アンケートで准教授は常に最上位に入っていたとされる。
准教授によると春休みに入った直後の2月24日、学院長室に呼び出しを受け、樋口紀子学長から「3月末の契約期間終期をもって雇用を終了し、以後は更新しない」旨の通告書を突然渡された。理由をただしても「総合的な判断」としか説明がなかった。
准教授は「学校運営などで疑問に思う点を中野新治学院長に何度か申し入れた行動が、おそらく契約打ち切りの理由だろう。ハラスメント的に突然辞めさせられる事例は聞いたことがない」と憤る。
契約打ち切りの事実を知った学生は大学側に(1)准教授の名前も入る4月からのカリキュラム、時間割がすでに決まったなかで、春休み中に通告した理由(2)授業評価アンケート結果の明示と具体的な雇い止め理由-などを1日付の公開質問状で示し、契約打ち切りの白紙撤回を求める。
「学生有志」による抗議文、公開質問状は同学院の理事長、学院長、学長、統轄本部長宛てだが、「実態を知ってほしい」と文科省や県教委などにも送った。
春休み中で多くの学生が帰省するなか、1日から3日間で103人の学生から抗議の意思表明を得た。
学生らは矢本准教授について「講義は固定概念にとらわれず、とても幅広い視野で文学に迫った」「常に課題を出しながら個々にアドバイスするなど、真摯(しんし)に学生と向き合った」「教職の授業では、自身の体験を交えた心構えなど、懇切丁寧だった。契約を切る理由はどこにもない」と授業の充実度を口々に語る。
学生が大学外に向けて動きだした背景には、学生らによると、2015年度末でゼミを受け持つ教職員が少なくとも6人も退職、他にも「数人が納得できない形で大学を去る」という窮状がある。
15年度で卒業する学生は「新入学生には不安が広がるかもしれないが、学院側への不信感が在学生に根強く、後輩のためにも、学外で訴えるしか解決できないと決断した」と話す。樋口学長は「雇用契約等の判断は個人の評価に関するものであり、プライバシーに関わるもので回答できない。本学では教員の雇用関係は、教育の質や学院職員としての資質等をふまえて適切に判断している。学生に対してはきちんと話し合いの場を設けて説明する予定」とコメントした。