僕は神奈川県の小田原市に住んでいるのね。数日前、「オダワラボ」という情報発信サイトのインタビューを受け、偶然、次の日は、市長さんとのトークセッションだった。たまたまだけど、「自分はなんで小田原市に引っ越したんだろう?」ということを考える機会にめぐまれたわけ。

理由はいろいろあるのね。小学館の日本の歴史っていうマンガあったじゃない?戦国時代の巻のスタートは北条早雲からだったよね。ちなみに戦国時代の終了も小田原攻め。まず戦国時代の巻から買ったっちゅう、子どものときの自分も笑えるけど、戦国時代は小田原に始まり、小田原に終わる。思えば、いつも新幹線で駅を通過するとき、必死になってお城を眼尻で捉えようとしていた。小田原、なんか好きだったんだよね。

子育てを考えたとき、自然の豊かさってのは魅力だった。海はもちろん、箱根の温泉も近い。気候は温暖だし、大きな公園もあって、本当に暮らしやすい。職場まではdoor to doorで100分。遠いといえば遠いけど、100%座れるからね。のんびり本を読むにはいい時間。疲れているときには、新幹線を使うこともできる。そしたら1時間かからない。こうやって考えると、まあ、本当にいい立地なんだよね。小田原って。

暮らしてみてわかることもあるよね。海の幸、山の幸、野菜に果物、すべてが地のもので、それぞれに季節の旬がある。酒を飲みながら季節を感じれるって本当に素晴らしい。渋滞もなければ、お店の駐車場はかなり広い。何千円買うと一時間無料的な制限もない。八百屋さんや魚屋さんがどこにいってもあるし、かまぼこ、塩辛、梅干し、地酒、寄木細工、ういろう・・・お客さんへのおみやげものを考えるのにも、愉しみながら一苦労する。歴史的な建造物なんて数えきれないよ。子どもとあちこち訪ね歩くのが本当に愉しい。富士山も超きれいだしね。

要するに、生活水準が半端なく高いということなんだよね。それなのに、ここ数年、小田原市でも人口減少と高齢化が問題となっている。東京に住む人をどうやって小田原に呼び寄せるかというのがとても重要な課題になってるのね。

でも、本当にそうなんだろうか?

東京には都市的なものすごい魅力がある。でも、「東京で生活をすること=経済的に豊かになること」では、必ずしもないよね。ゼミ生たちが書いた論文によれば、世帯所得や貯蓄率で東京に優っている地域はいくつもある。反対に、東京は、失業率もけっこう高いし、生活保護受給者の割合も多い。おまけに、教育費、住居費が途方もなく高く、カネがかかりすぎて、全国最低の超低出生率にならざるをえない。保育施設や介護施設の不足もよく知られた話だよね。もちろん通勤ラッシュだってものすごい身体的コストだ。

でも、だよ。それでもさ、誰もが東京に住もうとするわけじゃない?地方創生といったって、(本当はそうとは限らないんだけど)みんな東京に行くほうが豊かになれると信じちゃってるから。この思い込みを振り払わないかぎり、いくら旗を振っても「どうせ無理でしょ」って、どっかしらけた感じがあるんだよね。

都市への移動を食い止める。人を地方に移す。こういう人間をモノみたいに考える発想は、そろそろ終わりにしたほうがいいんじゃないだろうか。東京生活がいかにしんどいか、いくらカネがかかるか、そんな引きずり下ろしの議論もしたくない。ここ小田原には、この地で一生懸命に暮らしている人たちがいる。その人たちの幸せのために何ができるか、同時に、そのためにどのようにみんなでどう汗を流していくかを考えていくべきだと思う。

論語に「近き者説(よろこ)べば、遠き者来たらん」という文がある。

身近な人びとの幸せを実現せずに、遠き人びとに住みやすさをアピールするような街になってほしくはないんだよね。小田原人がいきいきと暮らせる街になれば、遠き人びとは黙ってたって来てくれる。そんな発想の転換が大事だと思う。さあ、そのために、何をすべきか。いろいろ仕掛けていきたい。これから数年かけての取り組みになると思うけど、ここでも随時、経過報告をしていくつもり。
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