東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

ミャンマー新政権 民主国家への正念場

 ミャンマーに半世紀ぶりに文民大統領が誕生した。圧倒的な国民の支持を得たアウン・サン・スー・チー氏の側近のティン・チョー氏。民主国家への道には難題も多いが、その成果を期待したい。

 ミャンマーは、外国籍の家族がいる人物は大統領になれない、という憲法規定があり、昨年の総選挙で圧勝した与党・国民民主連盟(NLD)のスー・チー党首は、その対象になる。このため、共に民主化運動を進めてきたティン・チョー氏が選ばれた。国軍との関係でどう協調していくか新大統領の手腕にかかる。 

 新政権には、制約が多い。国会議員の25%は国軍総司令官指名の軍人議員。内務、国防、国境の重要三閣僚も指名できる。軍の権力を保障した憲法を改正するには全議員の75%超の賛成が必要で、大統領の資格を含め、軍の協力がなければ、こうした体制は変えられない。

 ティン・チョー次期大統領は、早速、改革に向けた政策を打ち出した。府省の数を大幅に縮小、行政の無駄を省き、財政再建に本腰を入れる。一方で、重要な問題である少数民族との融和のために担当省を新設する。まずは、目に見える問題で、新政権の成果を示し、内外の支持を得たい考えだ。

 汚職の撲滅など、国民が望む改革では、軍の利権と対峙(たいじ)することもある。主要閣僚、副大統領に軍人が座る政権では、国軍の協力を得ないと進められない部分も多い。あせらず、着実な民主化を望みたい。

 新政権が抱える課題のもう一つが「大統領の上に立つ」と公言しているスー・チー氏の立場だ。当面は閣僚の一人として政権に参与し、軍と交渉していく。スー・チー氏が大統領になれない以上、今の体制が必要なことは理解できる。しかし、民主国家を目指し、「法と秩序」を重視する政権で権限のない人物が大統領の上に存在することへの懸念もある。国内外が納得する開かれた政権運営を期待したい。

 テイン・セイン大統領下の改革で経済的には開放が進み、日本企業も数多く進出している。ミャンマーの安定は周辺諸国にとって欠かせない。スー・チー氏への国民の期待は非常に高い。国政運営には国民の支援が追い風になることは間違いない。成果の達成が遅れ、国民の不満が起きないためにも、日本をはじめ周辺諸国は、できる限りの支援をしていきたい。

 

この記事を印刷する

PR情報