JBpressにも書いたように、今年の初めから中国発の世界不況が始まり、G20やIMFが各国に財政出動を要請している。「金融経済分析会合」でのスティグリッツの提言は、その流れにそうものだ。5月の伊勢サミットまでに、安倍政権は何らかの対応を迫られるだろう。

おもしろいのは、スティグリッツもクルーグマンも、金融政策は死んだという点で一致していることだ。現在の状況は1930年代に似ており、ゼロ金利では(金利を変数とする)DSGEなんて意味がない。クルーグマンもいうように、またケインズ理論が当てはまる時代になったのかもしれない。

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しかしマクロ経済学の教科書に出ている「流動性の罠」という話はミスリーディングで、むしろ自然利子率がマイナスになったという理解のほうがわかりやすい。図のように自然失業率に対応する所得Y*とIS曲線の交点で決まる自然利子率r'が0を下回るときは、政策金利をマイナスにすればいい。

これもケインズは『一般理論』で、ゲゼルの「印紙つき貨幣」の話として紹介している。その冗談を今は世界の中央銀行がやっているわけだが、やはり無理がある。中央銀行に何兆円もの当座預金を預ける市中銀行はマイナス金利でも預けざるをえないが、それを預金金利に転嫁できないので、これは銀行の収益を圧迫して貸し出しを減らしてしまう。

となると結論は、ケインズのいった通り政府支出によってIS曲線を上方にシフトさせる財政政策が望ましいということになるが、ここには落とし穴がある。財政赤字で総需要を拡大しても、それは将来の増税になるので、財政が悪化していると人々は増えた所得を貯蓄し、消費は増えないのだ。それが今の消費不況の一つの原因だろう。

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