大学入試改革 記述式を導入 複数回受験は見送りへ
大学入試の抜本改革に向けて検討を続けてきた文部科学省の有識者会議は、国語と数学のテストで記述式の問題を導入することなどを盛り込んだ最終報告をまとめました。新しいテストは年に複数回、受験できるようにする方針でしたが、日程を確保する難しさなどから当面、見送られることになりました。
大学入試を巡っては、今の試験が知識の量を問うことに偏りがちだとして、大学入試センター試験を廃止して、知識の活用や思考力をみる新たなテストを平成32年度から始めようと議論が続けられています。
去年3月から具体策を検討してきた文部科学省の有識者会議は25日最終報告をまとめました。
それによりますと、マークシート方式に加えて短文の記述式の問題を当面、国語と数学に導入するとしています。記述式の採点には時間も人もかかることから、民間業者や人工知能を活用する案のほか、マークシート方式とは別日程で試験を行うことも検討するということです。
一方で、英語のテストでは「聞く・話す・読む・書く」の4つの力をはかるという方針が示されていましたが、「話す」テストについては実施体制などに課題があるとして、平成32年度から行えるかどうか引き続き検討するとしています。
また、新しいテストは年に複数回受験できるようにする方針でしたが、難易度の平準化や、日程を確保する難しさなどから当面、見送られることになりました。
このほか、1点刻みではなく段階別に成績を示す方法など、この1年の議論で具体化しなかった点があり、文部科学省は高校や大学の関係者と協議を続けながら、平成29年度のはじめまでに詳細を固める方針です。
去年3月から具体策を検討してきた文部科学省の有識者会議は25日最終報告をまとめました。
それによりますと、マークシート方式に加えて短文の記述式の問題を当面、国語と数学に導入するとしています。記述式の採点には時間も人もかかることから、民間業者や人工知能を活用する案のほか、マークシート方式とは別日程で試験を行うことも検討するということです。
一方で、英語のテストでは「聞く・話す・読む・書く」の4つの力をはかるという方針が示されていましたが、「話す」テストについては実施体制などに課題があるとして、平成32年度から行えるかどうか引き続き検討するとしています。
また、新しいテストは年に複数回受験できるようにする方針でしたが、難易度の平準化や、日程を確保する難しさなどから当面、見送られることになりました。
このほか、1点刻みではなく段階別に成績を示す方法など、この1年の議論で具体化しなかった点があり、文部科学省は高校や大学の関係者と協議を続けながら、平成29年度のはじめまでに詳細を固める方針です。
有識者会議座長「記述式導入は大きな一歩」
有識者会議の座長を務めた日本学術振興会の安西祐一郎理事長は「記述式問題の導入を盛り込めたことは大きな一歩で、改革にあたっての具体的な課題を示したことも前進だと思っている。テストの複数回実施は学力をはかるための手段のひとつであって、必ずやらなければいけないものではない。今回の改革は幕末から明治にかけて、あるいは戦後すぐのころと同じような教育の転換期の再来であり、子どもたちのために具体化に取り組まなければならない」と話しています。
大学入試改革 何が決まったのか
大学入試の抜本改革はおととし12月、中教審=中央教育審議会が方向性を答申し、文部科学省の有識者会議が去年3月から具体策を検討してきました。
改革の柱のひとつは、いまの大学入試センター試験を廃止し平成32年度から新たに「大学入学希望者学力評価テスト」を実施することです。
中教審の答申ではこの新たなテストについて、マークシート方式だけでなく記述式の問題を導入すること、国語や数学といった単一の教科の試験に加えて複数の教科にまたがる「合教科・科目型」や「総合型」の問題を出題すること、英語は「聞く・話す・読む・書く」の4つの力をはかること、年に複数回受験できるようにすること、そして成績は1点刻みではなく段階別に示すとしていました。
有識者会議が具体策を検討するなかで課題となったのが、毎年50万人余りが一斉に受けるテストで公平性を担保できるか、採点などにかかる人的、時間的コスト、会場となる大学側の負担、そして高校の授業日程への影響でした。
1年にわたる議論の結果、記述式については問題のイメージが示されるなど具体的な内容が見えてきました。最初の4年間は短文の問題を導入し、平成36年度以降により文字数の多いものにしていくことになりました。当面、国語と数学に取り入れ、なかでも国語を優先させる方針です。採点などに最長で60日程度かかるという試算があることから、マークシート方式とは別日程で12月などに前倒しして行うことも検討されます。採点には民間業者や人工知能を活用する案も盛り込まれています。
一方で、そのほかの点は具体化しませんでした。
「合教科・科目型」の出題については、現在、改訂が進められている学習指導要領に合わせて今後、内容を検討するとしています。
英語は50万人余りの「話す」力をどうはかるかがいちばんの課題となっています。25日の最終報告では、すでに4つの力をはかるテストを行っている民間の検定試験の活用や、ICレコーダーなどに声を吹き込む案を示したうえで、平成32年度から実施できるかどうか引き続き検討が必要だとしています。
さらに、新たなテストを年に複数回、受験できるようにするという方針は当面、実現が見送られることになりました。当初から高校や大学の負担、問題の難易度を平準化できるのかという問題が指摘されていたのに加え、記述式とマークシート方式を別日程で行う必要性が出て日程確保の難しさが浮かび上がりました。
最終報告では、マークシート方式に加え、記述式や英語の多技能をはかる枠組みを導入すれば、学力を多面的に評価できるようになるとして、まずはこの枠組みの実現を目指すとしています。
成績を段階別に示す方針には変更はないということですが、具体的な方法は決まっていません。
改革の柱のひとつは、いまの大学入試センター試験を廃止し平成32年度から新たに「大学入学希望者学力評価テスト」を実施することです。
中教審の答申ではこの新たなテストについて、マークシート方式だけでなく記述式の問題を導入すること、国語や数学といった単一の教科の試験に加えて複数の教科にまたがる「合教科・科目型」や「総合型」の問題を出題すること、英語は「聞く・話す・読む・書く」の4つの力をはかること、年に複数回受験できるようにすること、そして成績は1点刻みではなく段階別に示すとしていました。
有識者会議が具体策を検討するなかで課題となったのが、毎年50万人余りが一斉に受けるテストで公平性を担保できるか、採点などにかかる人的、時間的コスト、会場となる大学側の負担、そして高校の授業日程への影響でした。
1年にわたる議論の結果、記述式については問題のイメージが示されるなど具体的な内容が見えてきました。最初の4年間は短文の問題を導入し、平成36年度以降により文字数の多いものにしていくことになりました。当面、国語と数学に取り入れ、なかでも国語を優先させる方針です。採点などに最長で60日程度かかるという試算があることから、マークシート方式とは別日程で12月などに前倒しして行うことも検討されます。採点には民間業者や人工知能を活用する案も盛り込まれています。
一方で、そのほかの点は具体化しませんでした。
「合教科・科目型」の出題については、現在、改訂が進められている学習指導要領に合わせて今後、内容を検討するとしています。
英語は50万人余りの「話す」力をどうはかるかがいちばんの課題となっています。25日の最終報告では、すでに4つの力をはかるテストを行っている民間の検定試験の活用や、ICレコーダーなどに声を吹き込む案を示したうえで、平成32年度から実施できるかどうか引き続き検討が必要だとしています。
さらに、新たなテストを年に複数回、受験できるようにするという方針は当面、実現が見送られることになりました。当初から高校や大学の負担、問題の難易度を平準化できるのかという問題が指摘されていたのに加え、記述式とマークシート方式を別日程で行う必要性が出て日程確保の難しさが浮かび上がりました。
最終報告では、マークシート方式に加え、記述式や英語の多技能をはかる枠組みを導入すれば、学力を多面的に評価できるようになるとして、まずはこの枠組みの実現を目指すとしています。
成績を段階別に示す方針には変更はないということですが、具体的な方法は決まっていません。
学習塾関係者「残された時間少ない 早く決めて」
入試改革の有識者会議には毎回、多くの予備校や学習塾の関係者が傍聴に訪れるなど改革の内容に注目が集まっていました。
このうち、東京・渋谷区に本社がある学習塾でも新しい入試の内容をいち早くつかもうと、担当者が会議を傍聴してきました。この塾では、記述式の導入や思考力、表現力を問うという新たなテストに備えてすでに授業を行っています。24日夜は新テストを受けることになる中学1年生を対象に、春休みの講習が行われ、生命倫理をテーマにした本を読んだうえで、命の終わりをいつだと考えるか、議論したり自分の考えをレポートにまとめたりしました。
参加した女子生徒は「新しい入試では文章を深く理解することが問われると思うので、その力を強化したくて講習を受けました。自分の学年から入試が変わるので過去問がないことは不安ですが対策をとっていきたいです」と話していました。
Y-SAPIX事業本部の奥村直生本部長は入試改革を巡る議論について、「そろそろ具体的な内容が固まるかと期待していたが、方向性の提言にとどまった印象だ。新しいテストを受けることになる中学1年生はすでに大学入試を見据えて準備を始めていて、残された時間は少ない。早く決めてもらいたい」と話しています。
このうち、東京・渋谷区に本社がある学習塾でも新しい入試の内容をいち早くつかもうと、担当者が会議を傍聴してきました。この塾では、記述式の導入や思考力、表現力を問うという新たなテストに備えてすでに授業を行っています。24日夜は新テストを受けることになる中学1年生を対象に、春休みの講習が行われ、生命倫理をテーマにした本を読んだうえで、命の終わりをいつだと考えるか、議論したり自分の考えをレポートにまとめたりしました。
参加した女子生徒は「新しい入試では文章を深く理解することが問われると思うので、その力を強化したくて講習を受けました。自分の学年から入試が変わるので過去問がないことは不安ですが対策をとっていきたいです」と話していました。
Y-SAPIX事業本部の奥村直生本部長は入試改革を巡る議論について、「そろそろ具体的な内容が固まるかと期待していたが、方向性の提言にとどまった印象だ。新しいテストを受けることになる中学1年生はすでに大学入試を見据えて準備を始めていて、残された時間は少ない。早く決めてもらいたい」と話しています。