先日、はてなブログ上で大きく以下の記事がバズっていました。
要点をまとめると、
- 世界中のサイトのアクセスを知ることができるAlexaでデータを見ると「nanapi」のアクセスがここ数ヶ月減ってきている
- 現状、nanapiは1億以上もの赤字を出しており、記事一本につき300円のコストもかかっていて、アクセスの減少を止めないと3年以内になくなっている可能性も
- また、nanapiのビジネスモデルは、ユーザー課金型ではなく、クリック報酬型の広告モデルのため、このアクセスの減少はやはり死活問題だろう
私たちSimilarWebブログ編集部としては、「おお!SimilarWebを使っていただいている!ありがたい!」という気持ちで一杯なのですが、一点問題点がありました。
それは、この記事の重要なポイントである『アクセス数の減少』というデータの解釈が少し分析不足なのではないか、ということです。具体的には、このアクセスの減少はnanapiがドメインを分散して運用していることによるもので、ドメイン全体を合計したアクセスを考えれば『それほどアクセスは減少していないのではないか』と考えられるのです。
実はこの点について、twitter上でも指摘している方がいました。
これ、ドメインを分散させてるからなので、意味ない記事だなー。ちゃんとnanapiのサイト訪問して見てみれば一発で分かる事なのに >> nanapiのアクセスが全盛期の半分に落ちていることについて詳しく書いていきたい。 – アニイズム https://t.co/0KrScsEoQJ
— Yuji Nakazato (@wato) 2016年3月24日
ドメイン分けてバーティカルで運用してることが考慮されていない
https://t.co/OSTwxYOMbb— さいそう / saiso (@saiso) 2016年3月23日
う〜む。この点に関しては、きちんと分析して調べる必要がありそうです。
そこで今回は、競合Web分析ツールSimilarWeb PROを利用して、より突っ込んだ分析を行いい、実際のところのnanapiの現状を「本当に」詳しく調べてみました。
【目次】
実際に、nanapi.jpのドメインへのアクセスが減っている
まずは、改めてnanapi(https://nanapi.jp/)のアクセス数を見てみましょう。PRO版では、無料版ではわからなかったモバイルからのアクセス数まで分析することができるので、より精度の高い数値になります。
モバイルとデスクトップからのデータを合算しても、やはり2015年10月に約900万を超えるセッション数が、2016年2月には、実に約半分の約460万セッションになっています。
確かに、nanapi.jpはアクセスが大きく減少していることがわかります。
では、実際にはどこからの流入が減ってきているのでしょうか?
ここから、より深く分析していきます。
検索流入が減ってきている
nanapiの特徴は、そのSEOの強さにあります。すべての記事を、大カテゴリー、中カテゴリー、小カテゴリー・・・として整理し、それぞれのカテゴリーのキーワードにおける情報量が高くなることで、検索順位を上げています。この優れたSEO戦略によって、nanapiは大きくアクセス数を伸ばしてきました。
実際、デスクトップからのトラフィックを流入別に見ると、検索流入が75.25%と圧倒的な数値です。
このように、nanapiは主要な流入元を検索流入からまかなっています。ただ、これは裏を返すと、検索からのアクセスを増やす鍵であるSEOがうまくいかないと、一気にアクセス数が減ってしまうことになります。
ここから、「nanapi全体のアクセス数が減った理由は、検索流入が減ったからなのではないか」と考えられるでしょう。
そこで、ここ6ヶ月の検索流入の推移を調べてみました。
このトラフィックはデスクトップからのみの分析ですが、予想通り2015年10月に32万セッションだったのが、2016年2月には28万セッションにまで下がっています。
おそらくモバイルからの検索流入も同じように下がっていることが考えられます。
nanapiへのアクセスはどこに消えた?
さて、検索流入が減って、nanapi全体のアクセス数が減っているというデータを見てもらいましたが、減少したアクセスはどこに消えたのでしょうか?
やはり単純に、nanapiのSEOの力が弱まってきたと考えていいのでしょうか?
実は、これを読み解く鍵がnanapiから流出していくアクセスにありました。以下は、nanapiユーザーがどのサイトに離脱しているかを示した表です。
この表からnanapiが現在どのような状況なのかを読み解くことができます。
nanapi以外のメディアへの流出
実は、現状のnanapiの運営元であるSupershipはnanapi以外のメディアを複数運営しています。調べると、以下のようなメディアを見つけられました。
nanapiを少し回遊してみると、これらのサイトに積極的にリンクを飛ばしています。
具体的には、さきほどのnanapi.jpからの流入元に、「coitopi.jp」「ninmama.jp」「ninmama.jp」などに多くのアクセスを流していることがわかりますね。
これを見ると、nanapiは独立したメディアのアクセス数の増加から、Supershipが持つメディア全体のアクセス数に目標指標を変更しているのではないかと思われます。
つまり、Supershipはnanapi運営に苦戦して、アクセス数の減少をしているのではなく、ただ会社としてのメディア戦略が変わった結果と見て取れます。
nanapiはグローバル展開に移行中か!?
nanapi.jpのアクセス数の減少から「実はnanapiが分散したメディアへシフトしているのではないか」と分析してみましたが、調べていく中でもう一つ面白い発見がありました。
それは、nanapi.jpから、nanapi.comのサブドメインに多くの流出があるという事実です。以下はさきほどと同じ、nanapi.jpからの流出先サイトの一覧です。
nanapi.jpの流出アクセスの約17%もアクセスが、nanapi.comに流れています。
すでにnanapi.jpがあるにもかかわらず、nanapi.comというドメインを取得し、そこにアクセスを流出させている。これはいったいどういうことでしょうか?
nanapi.comを見てみると驚きの事実がわかります。nanapi.comのサブドメイン「fashon.nanapi.com」にアクセスしてみると、そのドメイン名は以下のようになったのです。
「https://fashion.nanapi.com/ja/」
なんと、.com以下に/ja/と書かれています。このURL構造は、グローバル展開しているサイトによく見られるものです。意味としては、「Japanese」の最初の頭文字二字のjaを取って、世界展開されているサイトの日本語サイトということを表しています。他には/jpで「Japan」を示す場合もあります。
例えば、Appleのサイトに日本からアクセスすると「http://www.apple.com/jp/」となりますし、Microsoftのサイトにアクセスすると「https://www.microsoft.com/ja-jp/」となります。
ここからわかることは、nanapiはこれまでの「nanapi.jp」から「nanapi.com」にコンテンツを移行し、かつ、それをグローバル展開していくのではないかということです。
ここでようやく「nanapi.jpのアクセス減少」の真の背景が見えてきました。nanapiは、メディアとして衰退しているのではなく、逆により拡大していくためのグローバル展開を着々と進めている途中なのです。
すでにnanapiを率いる起業家のけんすう氏は昨年、グローバルメディア「IGNITION」を立ち上げており、その時に「グローバル志向」について以下のように語っています。
日本のメディアもこれからはグローバルに向けて書く、というのをベースにするくらいじゃないと、どんどんこれから辛くなっていくんじゃないかなあ、と思っています。(「けんすう日記」より)
ここでの考察は、あくまでデータやドメイン構造から推測されたもので、実際にnanapi自体がグローバルに展開していくかは、まだ公式には何も発表されていません。
とはいえ、ここまで急成長してきたnanapiがグローバルに出ていき、日本発のグローバルメディアへと進化していくという稀有な事例を見られる日も近いかもしれません。
※本記事で扱っているデータはあくまでSimilarWeb独自に
SimilarWeb 編集部
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