空を見上げると、飛行機が一機、見えました。 かなり高いところにいるのでしょう。白く小さいその機体は音もなく、すーっと北から南に向かって飛んでいきました。
「ザ・レジデンス 津田沼奏の杜」の現地からは多少距離があるのですが、京葉道路の幕張ICのそばに「袖ヶ浦第二児童遊園」という公園があります。
僕が空を見上げて、柄にもない感傷にひたったのはこの公園です。 というのも、ここにはかつて、「伊藤飛行機研究所」というパイロットの訓練施設があったからです。
現在の千葉市美浜区にある稲岸公園は「民間航空発祥の地」として知られています。 稲岸公園のある稲毛海岸周辺にはかつて、広大な干潟が広がっていました。 1912年(明治45年)、この干潟を滑走路として使う日本で初めての民間飛行場がオープン。民間パイロットの養成が行われました。 ここで育ったパイロットの1人、伊藤音次郎が1915年(大正4年)、稲毛海岸に創設したのが伊藤飛行機研究所です。
1917年に台風と高潮によって施設が壊滅した後は、鷺沼海岸に場所を移して後進の指導が行われました。この近辺に研究所と滑走路があったのだそうですよ。 この地で育った約150人の操縦士のなかで有名なのは、兵頭精(ひょうどうただし)さん。日本ではじめてパイロットの免許を取った女性です。かつてNHKで放送された連続テレビ小説「雲のじゅうたん」のヒロインのモチーフになっているともいわれています。
現在は遊具などが置いてある、ごく普通の公園。伊藤飛行機研究所がどのあたりにあったのかまではよくわかりませんでしたが、空を飛ぶこと自体が難しかった時代を生きた人たちに思いをはせるには十分です。 しばらく、空を見上げながら過ごしていました。