2月下旬、4月からの避難指示区域解除が予定されていた南相馬市小高区で住民への説明会が開かれた。住民からは「除染が終わっておらず、まだ放射線量が高い所もあるから解除は早い」とする声が相次いだ。ところが国の担当者は、住民を突き放すようにこんな趣旨で答えた。
「空間線量が年間20mSvを下回り、なおかつ生活環境の整備と自治体の同意が得られれば、避難指示は解除できるのです。除染が終わらないと、解除ができないということではありません」
こうした話を聞いた参加者の中には、話にならないと怒りだす人もいた。国が住民をどう考えているかを象徴するシーンだった。
これだけ放射能汚染があっても避難指示解除を進める姿勢を崩さないのは、国が住民の健康よりも、町は元通りになったという体裁を取り繕うことしか考えてないからだろう。そもそも年間20mSv以下という基準は、原発作業員の実質的な年間被曝上限と変わらない。それを放射線防護の基礎教育さえ受けていない子供や妊婦にも一律に適用すること自体、異常だとしか言えない。
このように福島の汚染地域の水、食べ物、土壌の放射能汚染は相変わらずだ。となると、住民が戻っても農業はできない。昨年9月に避難指示が解除された楢葉町(ならはまち)には、元からいた人口の6%に相当する440人しか戻っていないことを考えれば、南相馬市小高区も飯舘村も結果は見えている。
だが、それは安全と健康を考えれば、現時点では望ましいことだといえる。いくら国が100mSvまでは被曝しても安全といっても、これはICRP(国際放射線防護委員会)の基準を日本政府が都合のいいように解釈したものにしかすぎないからだ。
だからこそ、住民はそんな根拠のない国の安全宣言など無視して自分の身を守ってほしい…のだが、実は汚染は福島だけにとどまらない。首都圏にもいまだに放射性物質が吹きだまる汚染スポットがあちこちにあるのだ。
●この続きは、週刊プレイボーイNo.13「原発事故から5年たっても首都圏で福島より放射能汚染のひどい場所があった!」でお読みいただけます。
(取材・文/桐島瞬)