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相模原の虐待死 児童相談所の強化急げ

 相模原市で両親から虐待を受けて児童相談所(児相)に通っていた男子中学生が自殺を図り、重い障害を負った末に死亡した。中学生は児童養護施設で暮らすことも求めたが、児相は「緊急性はない」と判断して保護を見送っていた。

     親の承諾なしに強制的に子どもを引き離す権限を持っているのが児相だ。子ども本人からのSOSを生かせないのでは、結果的に見殺しにしたのと同じだ。厚生労働省は児相の大幅増設を検討しているが、数を増やすだけでなく、質を高めて機能する組織にしなければならない。

     全国の児相が対応した虐待は2014年度は約8万9000件で00年度の5倍に上る。児童福祉司は15年現在約2900人で00年の2・2倍に増えたが、1人が担う仕事量の増加に追い付けない状況だ。07年からは、通告後48時間以内に子どもの安全確認をすることが求められるようになり、負担はさらに増えている。

     児相は全国に208カ所あるが、東京23区には7カ所、45の中核市では神奈川県横須賀市と金沢市しかない。厚労省は児童福祉法を改正し、中核市と23区それぞれに設置を促し、約60カ所の増設を検討している。

     ただ、相模原児相の場合、父親が生徒に暴力を振るっていたという情報が学校から伝えられたが、担当者から所長へ報告がないなど基本的な情報共有すらできていなかった。以前には一時保護した少女9人を全裸にして所持品検査をしたことも問題となった。児相の数だけ増やせばいいというものではない。

     児相は親子関係の再構築の役割も担っており、無理に子どもを保護して親との関係が悪化することをためらう傾向があると言われる。厚労省は自治体への通知で、強制的に子どもを引き離す「職権保護」の積極的な運用を指導しているが、親との対立を避ける児相の意識は根強く、対応が後手に回る例が後を絶たない。

     司法機関が親子を分離させる役割を担っている米国のように、複数の機関で機能分担をすることも必要ではないか。児相に弁護士を配置するなどして難しいケースに対応できるようにすべきだ。何もかも児相が担って身動きが取りにくくなっている現状を変えなければならない。

     児童福祉とは関係のない一般の行政職を児相に配置している自治体も相変わらず多く、異動が頻繁なため知識や経験の蓄積ができないと指摘される。専門職の人材確保と質の向上は急務だ。

     虐待で死亡する子どもは年間約70〜100人にも上る。日本小児科学会の推計ではその3〜5倍もあるとされる。深刻な実態を重く受け止め、国を挙げて取り組むべきだ。

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