重力波観測に挑むKAGRA 試験運転へ
アインシュタインが100年前に存在を予言した「重力波」を捉えるため、岐阜県の山中に建設された巨大な観測装置「KAGRA」で、25日から実際に装置を稼働させる試験運転が始まります。重力波は、先月、アメリカを中心とした研究チームが観測に成功したと発表していて、世界の観測網が整うことで未知の天体現象の解明につながると期待されています。
重力波は、質量がある物体が動くと空間のゆがみが波となって伝わるとされる現象で、アインシュタインが100年前に存在を予言し、先月、アメリカの観測施設「LIGO」が初めて観測に成功したと発表して世界を驚かせました。
KAGRAはこの重力波を捉えるため、東京大学などの研究グループが平成24年から岐阜県飛騨市神岡町の山中に建設を進めてきた巨大な観測装置です。長さ3キロメートルのパイプ2本がL字型に組み合わされ、内部でレーザー光線を発射して精密に距離を測ることで、重力波によるごく僅かな空間のゆがみを検出します。
24日、KAGRAの制御室には10人ほどの研究者が集まって、モニターに映し出されたレーザーの様子を確認し、25日午前9時に迫った試験運転の開始に向けて最後の調整を進めていました。
世界各地で重力波を同時に捉えれば観測の精度が飛躍的に上がり、未知の天体現象の解明につながると期待されていて、今後、試験運転を行いながら、さらに調整を重ね、再来年の3月までに本格的な観測を始める計画です。
KAGRAの建設の責任者を務める東京大学宇宙線研究所の齊藤芳男特任教授は「長年、準備を進めてきてやっと試験運転にたどりつけたという感じです。KAGRAが『重力波天文学』という、今まさに作っている学問の第一歩になればと願っています」と話していました。
KAGRAはこの重力波を捉えるため、東京大学などの研究グループが平成24年から岐阜県飛騨市神岡町の山中に建設を進めてきた巨大な観測装置です。長さ3キロメートルのパイプ2本がL字型に組み合わされ、内部でレーザー光線を発射して精密に距離を測ることで、重力波によるごく僅かな空間のゆがみを検出します。
24日、KAGRAの制御室には10人ほどの研究者が集まって、モニターに映し出されたレーザーの様子を確認し、25日午前9時に迫った試験運転の開始に向けて最後の調整を進めていました。
世界各地で重力波を同時に捉えれば観測の精度が飛躍的に上がり、未知の天体現象の解明につながると期待されていて、今後、試験運転を行いながら、さらに調整を重ね、再来年の3月までに本格的な観測を始める計画です。
KAGRAの建設の責任者を務める東京大学宇宙線研究所の齊藤芳男特任教授は「長年、準備を進めてきてやっと試験運転にたどりつけたという感じです。KAGRAが『重力波天文学』という、今まさに作っている学問の第一歩になればと願っています」と話していました。
重力波 アインシュタインの「最後の宿題」
重力波は、アインシュタインが「一般相対性理論」に基づいて今から100年前に存在を予言しました。
「一般相対性理論」ではすべての質量のある物体は周辺の空間をゆがめ、そこを流れる時間の速さも変わるとされていて、重力波は、その物体が動いた際に、時空のゆがみが波となって光の速さで伝わる現象です。
しかし、空間のゆがみはごく僅かで、一生を終えた星が爆発する「超新星爆発」が起きても、伝わってくるゆがみは地球と太陽の間の距離が水素原子1個分、伸び縮みする程度とされています。
「一般相対性理論」は宇宙の数多くの現象を言い当て、現在の物理学の土台となっていますが、重力波は予言から100年間、直接観測した例がなく、アインシュタインの「最後の宿題」と呼ばれていました。
こうした重力波を捉えようと、アメリカの観測施設、LIGOや日本のKAGRAのほか、ヨーロッパでも「VIRGO」という施設が建設されていて、さらに人工衛星を使った観測計画もあります。
先月、アメリカのLIGOが世界で初めて観測したと発表した重力波は、2つのブラックホールが合体した際の空間のゆがみを捉えたものですが、重力波は宇宙が誕生した際にも発生したと考えられていて、こうした重力波が捉えられれば、謎に包まれた宇宙の初期の状態が解き明かされると期待されています。
「一般相対性理論」ではすべての質量のある物体は周辺の空間をゆがめ、そこを流れる時間の速さも変わるとされていて、重力波は、その物体が動いた際に、時空のゆがみが波となって光の速さで伝わる現象です。
しかし、空間のゆがみはごく僅かで、一生を終えた星が爆発する「超新星爆発」が起きても、伝わってくるゆがみは地球と太陽の間の距離が水素原子1個分、伸び縮みする程度とされています。
「一般相対性理論」は宇宙の数多くの現象を言い当て、現在の物理学の土台となっていますが、重力波は予言から100年間、直接観測した例がなく、アインシュタインの「最後の宿題」と呼ばれていました。
こうした重力波を捉えようと、アメリカの観測施設、LIGOや日本のKAGRAのほか、ヨーロッパでも「VIRGO」という施設が建設されていて、さらに人工衛星を使った観測計画もあります。
先月、アメリカのLIGOが世界で初めて観測したと発表した重力波は、2つのブラックホールが合体した際の空間のゆがみを捉えたものですが、重力波は宇宙が誕生した際にも発生したと考えられていて、こうした重力波が捉えられれば、謎に包まれた宇宙の初期の状態が解き明かされると期待されています。
KAGRAの仕組みは
KAGRAは、東京大学宇宙線研究所と国立天文台などが岐阜県飛騨市神岡町の鉱山の跡地に建設した巨大な観測装置で、重力波を使って天体現象を捉えるため、「重力波望遠鏡」と呼ばれています。
内部を真空に保った長さ3キロメートルのパイプ2本がL字型に組み合わされていて、二方向から飛んでくるレーザー光線を重ね合わせて観測します。
通常であれば重ね合わせたレーザーの明るさは一定ですが、もし重力波によって空間がゆがめば、レーザーが届くタイミングがずれてちらつきが起きるため、これを捉える仕組みです。
しかし、重力波による空間のゆがみは極めて小さいため、風が吹いたり人が歩いたりする程度のごく僅かな振動があっても、正確な観測ができなくなってしまいます。
このため、KAGRAは地下200メートル以上のトンネルの中に建設されたほか、装置の中は真空に保たれ、レーザーを反射する鏡は振動が伝わらないよう振り子でつり下げられています。さらにレーザーを反射する鏡も、周囲の振動を検知して僅かに位置を変え、振動を打ち消す制御装置が取り入れられています。
調整の段階で、実際に2つのレーザーを重ね合わせた映像では、周囲の振動などの影響を受け、本来なら起きないはずのちらつきが起きています。ここで制御装置が働くと、ちらつきは大幅に抑えられ、振動が打ち消されたことが分かります。
また、熱も観測にとっては大敵です。レーザーを反射する鏡の表面が熱で僅かに振動するからです。このため、最終的には鏡をマイナス253度という極低温の状態にして熱による振動を抑え込みます。
いかにノイズを抑えるか。重力波の観測はノイズとの戦いなのです。
内部を真空に保った長さ3キロメートルのパイプ2本がL字型に組み合わされていて、二方向から飛んでくるレーザー光線を重ね合わせて観測します。
通常であれば重ね合わせたレーザーの明るさは一定ですが、もし重力波によって空間がゆがめば、レーザーが届くタイミングがずれてちらつきが起きるため、これを捉える仕組みです。
しかし、重力波による空間のゆがみは極めて小さいため、風が吹いたり人が歩いたりする程度のごく僅かな振動があっても、正確な観測ができなくなってしまいます。
このため、KAGRAは地下200メートル以上のトンネルの中に建設されたほか、装置の中は真空に保たれ、レーザーを反射する鏡は振動が伝わらないよう振り子でつり下げられています。さらにレーザーを反射する鏡も、周囲の振動を検知して僅かに位置を変え、振動を打ち消す制御装置が取り入れられています。
調整の段階で、実際に2つのレーザーを重ね合わせた映像では、周囲の振動などの影響を受け、本来なら起きないはずのちらつきが起きています。ここで制御装置が働くと、ちらつきは大幅に抑えられ、振動が打ち消されたことが分かります。
また、熱も観測にとっては大敵です。レーザーを反射する鏡の表面が熱で僅かに振動するからです。このため、最終的には鏡をマイナス253度という極低温の状態にして熱による振動を抑え込みます。
いかにノイズを抑えるか。重力波の観測はノイズとの戦いなのです。
物理学上の新たな発見に期待
アメリカを中心とした研究グループが世界で初めて観測に成功した重力波。
世界の観測態勢が整うことで、物理学上の新たな発見につながると研究者の期待が高まっています。
日本物理学会は今月、仙台市で開催中だった春の大会の中で、急きょ重力波に関する研究者の講演会を開きました。
この中で、京都大学大学院の田中貴浩教授は、アメリカでの重力波の観測のあと、すでに従来の通説では説明のつかない天体現象が見つかり始めているとして、KAGRAも含めて世界で重力波の観測態勢が整うことへの期待を示しました。
光さえも抜け出せないとされるブラックホールの中では、「一般相対性理論」は成り立たないと考えられていて、研究者の中には重力波による観測で物理学の新たな世界が開かれるのではないかと期待する声も上がっています。会場は全国から集まった研究者で立ち見も出るほどの盛況ぶりで、「重力波」熱は高まる一方です。
京都大学の田中教授は「急きょ開いたセッションでしたが、たくさんの研究者が集まってくれて熱気があり、関心の高さを実感しました。さまざまな分野の人がこうした講演をきっかけに、重力波の研究に参加してもらえれば新しい刺激になると感じます」と話していました。
世界の観測態勢が整うことで、物理学上の新たな発見につながると研究者の期待が高まっています。
日本物理学会は今月、仙台市で開催中だった春の大会の中で、急きょ重力波に関する研究者の講演会を開きました。
この中で、京都大学大学院の田中貴浩教授は、アメリカでの重力波の観測のあと、すでに従来の通説では説明のつかない天体現象が見つかり始めているとして、KAGRAも含めて世界で重力波の観測態勢が整うことへの期待を示しました。
光さえも抜け出せないとされるブラックホールの中では、「一般相対性理論」は成り立たないと考えられていて、研究者の中には重力波による観測で物理学の新たな世界が開かれるのではないかと期待する声も上がっています。会場は全国から集まった研究者で立ち見も出るほどの盛況ぶりで、「重力波」熱は高まる一方です。
京都大学の田中教授は「急きょ開いたセッションでしたが、たくさんの研究者が集まってくれて熱気があり、関心の高さを実感しました。さまざまな分野の人がこうした講演をきっかけに、重力波の研究に参加してもらえれば新しい刺激になると感じます」と話していました。