ソウル=牧野愛博
2016年3月25日00時42分
北朝鮮は24日、長距離弾道ミサイルなどに使うとみられる固体燃料の燃焼実験に成功したと発表した。実用化すれば大きな脅威となるが、難しい技術で、発表内容に疑問もつきまとう。北朝鮮が挑発的言動を続けるのに対し、韓国は警戒を強めている。
朝鮮中央通信は、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)第1書記が固体燃料ロケットエンジンの噴出実験を視察したと伝えた。「弾道ロケットの威力を更に高められた」とした。
複数の軍事関係筋によれば、北朝鮮はごく一部の短射程を除き、ほとんどのミサイルに液体燃料を使ってきた。液体燃料には酸化剤が含まれ、北朝鮮の技術力では注入後に一定の時間が経つと機体が腐食する。北朝鮮は従来、発射の直前に液体燃料を注入してきた。
固体燃料は、緊急事態に臨機応変に対応する必要がある軍用に適しているとされる。固体燃料になれば燃料注入作業が省略され、発射を事前に探知することも更に難しくなる。米韓は、北朝鮮軍に攻撃の兆候が出た場合の先制攻撃を検討するが、影響を受けそうだ。
韓国国防省報道官は24日、「北は固体燃料の開発を推進している。開発の進展を内外に誇示しようとしており、この状況を重く受け止めている」と語った。
一方、液体燃料は噴射量を調整できるが、固体燃料は燃え方をコントロールできない。不均等な燃焼などで事前に計算した重心の移動が狂うと機体の姿勢制御が難しくなる。長距離弾道ミサイルの固体燃料技術は、米ロなどが持っているとされる。
北朝鮮は正恩氏の指示で研究・製作を6カ月で完了し、1回の実験で成功したと主張するが、北朝鮮の技術水準からは疑問がつきまとう。地上の燃焼実験に成功しても、実際に発射して発生する圧力などを総合的に計算しないと実用化は難しいとの見方も出ている。
正恩氏は今月、核実験や核弾頭を搭載した弾道ミサイルの発射実験を行うよう指示。北朝鮮は短中距離のミサイル発射を続け、23日には、「朴槿恵(パククネ)一味を除去する報復戦に向かう」とも宣言した。韓国大統領府は24日、朴槿恵大統領が同日、警戒態勢の強化を指示したと発表。朴氏は、北朝鮮の挑発に積極的に対応するため、準備を万全にするよう韓国軍に命じた。(ソウル=牧野愛博)
おすすめコンテンツ
※Twitterのサービスが混み合っている時など、ツイートが表示されない場合もあります。
朝日新聞国際報道部
PR比べてお得!