北朝鮮の核開発を止めるために必要なこと

大前提として「米中の連携」が不可欠だ

北朝鮮の核開発に歯止めをかけるには、国際社会による連携が不可欠だ。ところが北朝鮮と正常な関係を保つ唯一の国といえる中国が、同国に対し強い態度を取ろうとしていないことに、多方面から批判が出ている。米大統領選の共和党候補に名乗り出ているドナルド・トランプ氏も、中国にはより強硬な姿勢が必要だと主張している。

とはいえ北朝鮮の制御に関し、中国だけに責任を負わせることはできない。大切なのは米国をはじめ、国際社会全体の関与である。

米国の外交問題を担うケリー国務長官は、これまで中東問題に積極的に取り組んできた。しかし東アジアの安全保障に対して十分取り組んできたとはいえない。

ケリー長官は現状、北朝鮮問題の責任を中国に押し付けようとしている。最近の報道では、ケリー長官は中国の王毅外相との電話で、北朝鮮に対する中国の柔軟路線は失敗したと語ったといわれる。メディアを介して批判されることを喜ぶ者はおらず、特に中国はそうした批判に不慣れだ。中国が、北朝鮮問題の停滞の原因は米国にある、との声明を発表したことは意外ではない。

米中の連携こそが不可欠

米国の政策を「戦略的忍耐」というなら、中国の政策は「友好的説得」といえる。今のところ、こうした双方の政策は、北朝鮮の核開発への野心を前進させているだけだ。

米中関係は非常に複雑で、競争関係だけでなく、時には対立関係に発展することもある。とはいえ相互の利益につながる事柄での協力に、不慣れというわけではない。

まず必要なのは、中国が北朝鮮の核放棄に向け、経済制裁を強めることだろう。米国はそうした努力を中国側に促すだけでなく、中国の姿勢を支持し、従来の外交ルートでの協議も継続すべきである。

イランの核問題での進捗にかんがみれば、解決困難とみられる状況でも、外交努力によって成果を上げることはできる。北朝鮮の核開発の野心を断つためには、対イランで示したような国際社会のコミットメント、中でも米中の密接な連携こそが、今求められている。

週刊東洋経済2月13日号

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