2015.6.16

「自己主張は
自分にすればいい」
蛭子能収のインタビュー(2)

おひとりさまの流儀その2:
自己主張は自分自身にせよ!

 昨年8月に刊行した初めての新書『ひとりぼっちを笑うな』(KADOKAWA)が好評の蛭子能収さん。今回SOLO編集部は蛭子さんにインタビューを敢行。同書をヒントに独身女性にも活かせる“ひとりぼっちの流儀”について伺った全4回です。
第2回は、おひとりさま流「自己主張」の流儀に解き明かしていただきます。他人に干渉するのもされるのも嫌だけれど、自分の意見は他者にうまく伝えたい…いう方はぜひ読んでみてください。
第1回「自分の好きなことをしっかり持て!」もあわせてご覧ください。

人の上に立ちたいなら頭が良くないといけない

蛭子能収「おひとりさまを笑うな」インタビュー 蛭子能収

――この本のなかで蛭子さんは、自分が"いじられキャラ"になれば自分から無理に話しかける必要がなくていいと言っています。すごく面白い発想だと感じますが、誰しもがそういうキャラになれるわけでもないと思うんです。何か秘訣ってあるのでしょうか?

蛭子能収さん(以下、敬称略):それはもう、プライドをあんまり持たないことですよ(笑)。とにかく自分が下っ端であると常に思っていればいい。謙虚にしていれば、いじられてもなにくそって思ったりしないで済むし。もともとそういう風にいじられてなんぼの人間だと思うというか。そうすれば気が楽になると思うんですよね。

――なるほど……。

蛭子:やっぱり人の上に立ちたいという人は、頭が良くないといけないと思うんだよね。

――確かに、真理ですね(笑)。

蛭子:それで包容力もあって、知識もいっぱいないと。そういうものが俺にはちょっと足りないから、本当に。知識がもうちょっとあればね。

――いえ、蛭子さんは考え方そのものがすごく面白いです。おひとりさま女性って、「何者かにならなきゃ」という焦りがあると思うんです。夫も子供もいないなら、たとえば仕事で何か成し遂げないと自分には意味がないんじゃないかって……。

蛭子:えっ、そうなの!?

――ちょっと極端な話ですけど、自分でキャリアを切り拓こうとしていくときって少なからず自己主張や自分を表現することが求められると感じます。でも別にみんながみんなそれを上手にできるわけではありません。そういうちょっと内向的な人はどうしたらいいと思いますか?

蛭子:対人で主張ができないんだったら、まずはこっそり本の原型みたいなものを書くことが一番いいんじゃないかな。とにかく何でもいいから日記を毎日書いてみて、たまってきたらエッセイみたいにして、出版社に持っていけばいいんですよ。「私書いてみたんですけど、どうですかねって」。そんなにグイグイいくんじゃなくて、ちょっと笑いながら、冗談っぽくね。

――なるほど、出版社にもっていくというのは考えたことがなかったです……。

蛭子:ダメでもともとって感じで行けば、断られても恥ずかしくない。出版社も新しい人をいつも探しているから、万が一「君、ちょっと面白いね」って言われることだってあるかもしれない。そしたらすごく楽しくなるじゃない。

 書く内容はなんでもいいと思うんですよね、自分の好きなことで。自分はこんな風にして遊ぶのが好きだとか、こうやって時間を過ごしているんだとかね。ちょっとしたことを記録しておけばいいんですよ。すぐに持っていくんじゃなくても、いつか出版社に持っていってみようかなとか思ってやってみると面白いんじゃないですかね。俺、独身女性にはそういうのをすすめたいね。

――具体的な何かに結びつかなくても、毎日が楽しくなりそうですね。

蛭子:楽しくなってくると思うし、出版社の人も書いた本は気に入らなくても、書いた人を気に入ったりして、そこからまた新しい遊び方が見つかるかもしれない。

――広がり方はなんだっていいってことですね。紙と鉛筆、パソコンさえあれば1人でできちゃいますしね。お金もかからないし、おひとりさま向けです。

蛭子:もし何か表現したくて悶々としている人がいればですよ。なんにもしなくても楽しい人は、それはそれでいいと思います。

自己主張すると何かと面倒が多い!?

 ――自分をアピールしろと言われがちな社会ですけど、この本の一章分を割かれていた「自己主張しない」というメッセージは新鮮でした。

 ただ、現実的にはまったく自己主張しないわけにはいかないとも感じていて。蛭子さんのこれまでのご経験のなかから、最低限ここだけは周りに主張した方がいいということはありますか?

蛭子:俺の思う「自己主張しない」というのは、集団がいたときに自分がそこのトップになるんじゃなくて、隅の目立たないところにいた方がいいよってことなんですね。トップに立つと人の面倒を見たりする責任が出てきます。そんな立場にはならない方が自由に心を持っていられるということなんです。

 自己主張は自分の心のなかにこそ持っているべきで、それを口に出して言わない方がいいと思うんですよ。自分にただ言い聞かせるだけで。そうしたら人と喧嘩しなくて済むし。自己主張を口に出していうと、ほかの人の自己主張と対立してしまうかもしれないから。だからわざわざ対立しないでこっそりやっちゃえばいいんですよ。

――仕事や人間関係などにおいては、お互い納得するまでぶつかったり、言い合ったりするべきだと言われたりもします。

蛭子:でも言い合ったところで、たいした問題じゃないかもしれない。そういう場合は、意見があったとしても向こうがそう言っているならその場は降りる。相手を立たせてあげるということも大事ですよ。

――蛭子さん自身、そういう風にした方が最終的にうまく行くことが多かったんですね。

蛭子:そうですね、やっぱり相手にゆだねることで自分が責任者にならなくて済むというのが大きいです(笑)。

――(笑)。確かに、むやみに敵をつくらないのもいいなと思います。ただ、そうすると自分のやりたいことが最終的にできないということはありませんか?

蛭子:自分のやりたいことができるかできないかは、そのやりたいことに他人が関わる程度によると思います。自分がどうしてもやりたいことで他人が関わってくる話ならば、やっぱり相手をしっかり説得する必要があります。ただ、説得は自己主張とは違います。

 必ず相手も面白いと思えるようなことを提供するのはもちろんだし、協力をお願いする相手に対して自分を落として話をできるかどうか、それが相手とうまくいく方法だと思うんですよ。

――やはりどんな場合でも、相手を尊重する姿勢が大事なんですね。

蛭子:そうです。でも大体は説得しなくてもいいんですよ。たとえば俺が競艇に行きたくて、マネージャーが競馬に行きたいとする。それで2人で遊びに行こうとして、俺が競艇に行きましょうと言ったとする。それで俺が無理やりマネージャーを競艇に連れて行くんじゃなくて、別々に行けばいい。俺は競艇に行くし、マネージャーは競馬に行く。

――すごくシンプルです。

蛭子:下手に一緒に行動したり、協力し合うってことをがんばりすぎたりしないで、無理やりに引っぱっていかない、お互い好きなようにするのが一番いいんですよ。マネージャーの立場だったら「蛭子さんが競艇に行きたいんなら、ぼくも競艇に行きますよ」って言うかもしれないけど……。

マネージャー氏:言いますよ(笑)。

蛭子:アハハ!(笑) でも、自分の好きなところに行きなよって思います。まあ自分が上の立場だと相手があわせてくるかもしれないけど、そうだとしてもできるだけ平等に遊ぶということを心がけてます。自己主張を強くして、本当は嫌だと思っている人を無理やり従わせるのは好きじゃないし何にも楽しくない。自分自身が自己主張をするかどうかよりも、お互いに自由を楽しむことの方が大切じゃないですか。俺はその方が、長い目で見てうまく進むと思うけどなぁ。