国際金融経済分析会合のために来日したスウェーデン国立銀行賞受賞者のスティグリッツとクルーグマンが、消費税率引き上げに反対して財政政策の重要性を説いたことが話題になっています。
不思議なのは、リフレ派が二人を「バカ」「頭が悪い」などと罵倒・愚弄・嘲笑せず、逆に二人を「リフレ派の援軍」であるかのように評価しているように見えることです。
"The implication of that is that this is a time to stimulate fiscally; that monetary policy has reached the limits of what it can do," he said. "Japan has had a very strong monetary policy and stimulated the economy, but here are limits. Therefore the focus should be on fiscal policy.”
日本についても「非常に力強い金融政策を講じて経済を刺激してきたが、限界に来た。焦点は財政政策だ」と述べた。
そもそも、リフレ論が本格化する契機となったクルーグマンの"Japan's Trap"や"It's Baaack: Japan's Slump and the Return of the Liquidity Trap"は、名目金利引き下げと財政政策が限界に達しても、中央銀行が「インフレターゲット+超過準備積み上げ」にコミットして人々の期待に働きかければ、実質金利が低下して景気が刺激されるというものです。なので、「金融政策は限界」との主張は、“世界標準理論”を信奉するリフレ派から見れば「頭が悪い」証拠に他ならないはずです。リフレ論に従えば、消費税率を引き上げても、金融緩和を拡大することで相殺可能です。
きたる消費税率引き上げに際して、一時的にインフレ率が2%を超える事態になったとしても、金融緩和をやめることはないということです。
逆に、消費税引き上げのために景気が挫折してしまうことを防ぐために、かえって金融緩和を拡大すると予想できます。
今でも私は消費税引き上げはやめた方がいいと断固言い続けますけど、しかし、岩田さんのこの論文を読んで、現実問題として景気挫折の可能性は消えたと思いました。
黒田総裁は安倍晋三首相率いる政権に対し、これまでで最も強い調子で来年4月には現行5%の消費税引き上げ計画を遂行すべきと迫った。
総裁は日銀が2014年度、2015年度ともに1%を超える経済成長率を見込んでいると述べ、予定通り消費増税が実施されても「景気の前向きな循環は維持される」と強調した。
IMFのエコノミストも、リフレ派的には「頭が悪い」提案をしています。
https://www.imf.org/external/japanese/np/blog/2016/031416j.pdf
日本がデフレから決別するには賃金上昇が必要である―これは全ての人が同意するところです。
前向きな方法で公的セクターが賃金を上げ、手本を示すことも選択肢のひとつです。
ピケティも同じ提案をしていました。
インフレ率を上昇させる唯一のやり方は、給料とくに公務員の給料を5%上げることでしょう。
しかし、賃金は「インフレターゲット+ブタ積み」によって景気が良くなった後で市場メカニズムによって上昇するものであり、先に上げることは、雇用を減らして景気の足を引っ張る愚策のはずです。
よく「名目賃金が上がらないとダメ」と言われますが、名目賃金はむしろ上がらないほうがいい。名目賃金が上がると企業収益が増えず、雇用が増えなくなるからです。
スウェーデン国立銀行賞受賞者も無謬ではないことは、スティグリッツとクルーグマンが量的緩和の仕組みを誤解していたことが証明しています。
リフレーショニスト諸賢におかれましては、バカな外人の無責任な放言によって景気回復と財政再建が阻害されることがないように、改めて“世界標準理論”から導かれる「インフレターゲット+ブタ積み」の絶対的な有効性を主張して頂きたいものです。