あらすじ
銀河帝国ではアスターテ会戦の戦功者を称える儀式が執り行われていた。
その主役は、ローエングラム伯ラインハルトである。
自由惑星同盟軍を撃破し、帝国軍に圧倒的勝利をもたらした功績に対し、
ラインハルトは帝国元帥に叙されようとしていた-】
昇進したラインハルトは、姉のアンネローゼと久しぶりに会う機会が持てた。
だが彼女は、銀河帝国皇帝・フリードリヒ4世の寵姫として王宮に暮らしていた。
ラインハルト、そして同行するキルヒアイスは、
10年前の出来事を思い出す。
キルヒアイスの自宅の隣は空き家だったのだが、
ある時、貧乏貴族が引っ越してきた。
気になって庭に出ると、隣の家の玄関から金髪の美少年が出てきた。
キルヒアイスが自己紹介すると、上の名を俗っぽいという。
しかし、苗字は爽やかだと褒めてくれた。
彼の名はラインハルト・フォン・ミューゼルといった。
しばらくして、ラインハルトと同じ金色の髪を持つ美少女が現れた。
彼女はアンネローゼと名乗った。
キルヒアイスはアンネローゼに髪を撫でてもらうと、
驚いて自室に走っていってしまう。
ラインハルトとキルヒアイスは同じ学校に通って仲を深めるが、
クラスには意地の悪い生徒もいた。
ラインハルトはそういった連中を叩いたりして、敵を多く作ったので、
キルヒアイスは気が気ではなかった。
ある日のこと。
アンネローゼが美味しいケーキを焼いたので、
喜んだ2人は走りながらラインハルトの自宅に向かう。
すると、玄関先に見慣れない高級な車が止まっていた。
車からは銀河帝国の役人が降りてきて、
アンネローゼが時の皇帝・フリードリヒ4世に見初められたと言った。
驚いたラインハルトが家の中に入ると、
酒を飲んだくれている父親の前に金貨の入った袋があった。
わずかばかりの金で姉を売られたラインハルトは、
アンネローゼを取り戻そうと銃を持って王宮に乗り込むが、
自分の力のなさを痛感し、軍人になることを決意する。
そして、キルヒアイスもラインハルトと同じ道を歩むのであった-。
台詞
ラインハルト「なあ、キルヒアイス。銀河帝国は反乱軍と戦争しているはずだな」
キルヒアイス「うん、確か140年近く戦っているはずだけど」
ラインハルト「じゃあ、彼らはいったい何をしているんだ?
戦場では多くの人々が死んでいるというのに。まるでお祭り騒ぎじゃないか」
キルヒアイス「あの人たちの身内は戦争なんかに行かないよ。上級貴族だもの」
ラインハルト「つまり、他人の痛みなんか知ったこっちゃないというわけだ」
(中略)
ラインハルト「・・・力だ」
キルヒアイス「えっ?」
ラインハルト「力がほしい」
キルヒアイス「ラインハルト?」
ラインハルト「姉さんを取り戻すには、あんなくだらない奴らの言うことを、
黙って聞かなくても済むだけの力がいるんだ。
相手が貴族なら、貴族を凌ぐ力を。相手が皇帝なら、皇帝を・・・」
キルヒアイス「ラインハルト・・・」
ラインハルト「これひとつじゃ何もできやしない。
キルヒアイス、僕は幼年学校に行って軍人になる。
それが、その力を手に入れる一番早い方法だ。
キルヒアイス、一緒に来い。2人で姉さんを取り戻すんだ」
ラインハルト「僕が、軍人に・・・?」
アンネローゼ(回想)「ジーク、弟と仲良くしてやってね」
キルヒアイス「うん、それが望みなら」
ラインハルト「いつの日か、必ず」
感想
ラインハルトは最初、ミューゼルという姓で、
貴族とは名ばかりの貧乏な家で育ちました。
母親は早くに亡くしていたようで、
5歳上の姉・アンネローゼが彼の面倒を見ていました。
キルヒアイスはラインハルトのはじめての友達なんでしょうね。
いつも一緒にいるので、兄弟といってもいいかも知れません。
また、キルヒアイスにとってアンネローゼは初恋の人のように思えます。
髪を撫でてもらった時のリアクションは、ドキドキしたからなんですよ。
そんな2人にとっての大切な女性が、
突然、時の皇帝の側室として王宮に連れ去られてしまいます。
ラインハルトの父はお金ほしさにこの話を承諾し、
アンネローゼも相手が王家なので、断ることはできませんでした。
でも、幼い2人の少年にとっては、たいへんショッキングな出来事でした。
実はアンネローゼが嫁いだフリードリヒ4世は、
彼女よりずっと年上の男性で、祖父と孫ほどの年齢差があったんです。
これでは玉の輿で嬉しいとは言えませんよね。
これがきっかけで、ラインハルトは銀河帝国そのものを憎むようになり、
「自身の手で宇宙を統一したい」という野望に燃えて行くんです。
アンネローゼも本当は辛かったんだと思いますが、
弟に「未来を大切にしなさい」と言っていましたね。
優しくて素敵な女性です。
ラインハルトは愛する姉と引き裂かれたため、
彼女を取り戻すために権力と戦う道を選びましたが、
軍人を辞めて歴史の研究をしたいと願うヤン・ウェンリーとは対照的です。
まったく違うタイプの2人の天才が対決するから、
銀河英雄伝説は面白いのかも知れませんね。
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