宮坂麻子
2016年3月24日05時07分
テクノロジーによって、「奇跡のような学び」を手にした少女がいる。
「コンニチワ」「ワタシノナマエハ ナガイシヒカリデス」
タブレット端末から音声が聞こえてきた。小さな指が画面上のキーボードを素早くタッチし、最後に「音声ボタン」を押すと、「声」に変わる。
先生が「7+5」というカードを見せると、「12」とタブレットの「声」で即答。漢字カードの「月」を見せると「ゲツ ツキ」、「日」を見せると「ニチ ヒ カ」――。
「あっ、あっ」と、笑顔で声を上げるのは、永石日香莉さん(7)。市立小中学校に1人1台、タブレット端末を導入したことで知られる佐賀県武雄市の市立西川登小学校の1年生だ。
言葉はしゃべれない。
生まれてすぐ四肢短縮症と診断され、1歳まで病院のNICU(新生児集中治療室)に入っていた。首がすわったのは5歳。難聴で視力も弱い。身長も体重も同年齢の半分程度で、自力ではまだ立てない。
生後5カ月で気管切開してから入学まで、ほとんど声を出したことがなかった。嫌な時は足をバタバタさせるか、黙って涙をこぼすか……。ベビーベッドの中で転がって、1日を過ごしていた。それでも両親が、学区の公立小学校への入学を強く希望したのには、理由がある。
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