「虐待死の疑い」と医師が判断 全国で154人
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虐待によって死亡した疑いがあると医師が判断した子どもが5年間に全国で154人に上り、このうち事件として起訴されるなどしたのは1割にとどまっていることが厚生労働省の研究班によるアンケート調査で明らかになりました。研究班の医師は「多くの虐待死が埋もれている可能性がある」と指摘しています。
小児科医などでつくる厚生労働省の研究班は、全国962の医療機関を対象に院内で死亡した18歳未満の子どものうち医師が虐待を疑ったケースについてアンケート調査を実施し、ことし1月までに38%に当たる371の医療機関から回答を得ました。
調査結果によりますと、平成26年度までの5年間に虐待によって死亡した疑いがあると医師が判断した子どもは154人に上り、およそ3分の2に当たる65%が0歳児でした。
154人のうち、医学的に虐待以外では説明がつかない「確実」と医師がみているのは42人で、「断定」には至らないものの、「可能性が大きい」とされたのが39人でした。
ほかの73人は「虐待の疑いを否定できない」という回答でした。
ほとんどは、医療機関から警察に通報したということですが、今回の調査で、事件として起訴されたり児童相談所などが虐待事例として検証を行ったりしたケースが1割にとどまっていることが明らかになりました。
子どもの虐待死を巡っては、医療機関が通報しても、家庭の中という密室であるうえ、親が虐待を認めないなどして、原因の特定が難しいケースが少なくないという指摘があります。
研究班のメンバーで小児科医の溝口史剛さんは、「今回の調査で分かった虐待の疑いがある死亡も氷山の一角とみられ、多くの虐待死が埋もれている可能性がある」と指摘しています。
調査結果によりますと、平成26年度までの5年間に虐待によって死亡した疑いがあると医師が判断した子どもは154人に上り、およそ3分の2に当たる65%が0歳児でした。
154人のうち、医学的に虐待以外では説明がつかない「確実」と医師がみているのは42人で、「断定」には至らないものの、「可能性が大きい」とされたのが39人でした。
ほかの73人は「虐待の疑いを否定できない」という回答でした。
ほとんどは、医療機関から警察に通報したということですが、今回の調査で、事件として起訴されたり児童相談所などが虐待事例として検証を行ったりしたケースが1割にとどまっていることが明らかになりました。
子どもの虐待死を巡っては、医療機関が通報しても、家庭の中という密室であるうえ、親が虐待を認めないなどして、原因の特定が難しいケースが少なくないという指摘があります。
研究班のメンバーで小児科医の溝口史剛さんは、「今回の調査で分かった虐待の疑いがある死亡も氷山の一角とみられ、多くの虐待死が埋もれている可能性がある」と指摘しています。
虐待死の疑い 具体的事例
今回のアンケートでは、医師が虐待を疑ったきっかけとして、赤ちゃんの体に殴られたようなあざがいくつも見つかったり、「揺さぶられ症候群」と呼ばれる虐待にみられる脳内の出血があったことなどが多く挙げられています。
このうち、東海地方の病院が「虐待の可能性が大きい」と回答したケースでは、心肺停止の状態で運ばれ、死亡した赤ちゃんの顔や体にいくつもの不審なあざやすり傷が見つかったということです。
両親は「心当たりがない」と話したということですが、赤ちゃんが心肺停止になる10日ほど前の乳幼児健診でも、体に爪でひっかかれたような傷などが見つかっていたということです。
この赤ちゃんは病院に運ばれる直前、自宅で父親と2人きりで、母親は「子どもが泣くと夫がいらいらして乱暴に扱うのが気になる」と話したということです。
虐待を疑った病院は警察と児童相談所に連絡しましたが、その後、親が立件されたり、児童相談所で再発防止の検証が行われたりすることはなかったということです。
当時の捜査関係者はNHKの取材に対し、「親は虐待を認めておらず、死因と虐待との因果関係がはっきりとせず、虐待死と断定はできなかった」と話しています。
このうち、東海地方の病院が「虐待の可能性が大きい」と回答したケースでは、心肺停止の状態で運ばれ、死亡した赤ちゃんの顔や体にいくつもの不審なあざやすり傷が見つかったということです。
両親は「心当たりがない」と話したということですが、赤ちゃんが心肺停止になる10日ほど前の乳幼児健診でも、体に爪でひっかかれたような傷などが見つかっていたということです。
この赤ちゃんは病院に運ばれる直前、自宅で父親と2人きりで、母親は「子どもが泣くと夫がいらいらして乱暴に扱うのが気になる」と話したということです。
虐待を疑った病院は警察と児童相談所に連絡しましたが、その後、親が立件されたり、児童相談所で再発防止の検証が行われたりすることはなかったということです。
当時の捜査関係者はNHKの取材に対し、「親は虐待を認めておらず、死因と虐待との因果関係がはっきりとせず、虐待死と断定はできなかった」と話しています。
元検事「立件できないケース出てくる」
元検事で、刑事事件の捜査に詳しい落合洋司弁護士は、「立件するには、いつ、どこで、誰がどんな行為をしたのかを特定する必要があるが、虐待は家庭内という密室で行われるため、証拠が断片的なものしかないことが多い。虐待を素直に認める親も少なく、立件できないケースはどうしても出てきてしまう」と話しています。
そのうえで、「虐待の確証がないケースでも、児童相談所は子どもを保護すべきときがある。そのために捜査機関とも情報を共有して、児童相談所が対応できる範囲を広げていく必要がある」と指摘しています。
そのうえで、「虐待の確証がないケースでも、児童相談所は子どもを保護すべきときがある。そのために捜査機関とも情報を共有して、児童相談所が対応できる範囲を広げていく必要がある」と指摘しています。