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【ふくしま便り】横のつながり 励みに 甲状腺がん家族の会が発足
東京電力福島第一原発の事故後に福島県が実施している「県民健康調査」で甲状腺がんと診断された子どもの家族らが、「311甲状腺がん家族の会」を設立した。調査は事故当時十八歳以下の子ども全員が対象で判明している患者、疑いのある人は百六十六人。集まった会員は男女五人の家族七人とごく一部にすぎないが、これまでは患者同士の横のつながりは一切なかった。「家族の会」は、どのような意味を持つのか。河合弘之弁護士とともに代表世話人を務める元福島県会津坂下(ばんげ)町議の千葉親子(ちかこ)さん(68)に聞いた。 ◇ −設立の経緯は。 十六年前から精神障害者の家族を支える活動を続けてきました。その関係で甲状腺がんの患者家族の話も伝わってきました。状況はよく似ているのです。 自分の子どもが精神障害者だと診断されると、親は奈落に突き落とされたような大きな衝撃を受けます。そして親戚や友人に相談することをためらう。自分たちだけで耐えようとして、どんどん孤立していきます。 甲状腺がんの家族も同じようです。原発事故のせいではないかと誰もが疑います。ところが医者は「放射能の影響とは考えにくい」と繰り返します。納得できないままに、自分を責めます。あのとき、外で遊ばせなければ…、もっと食べ物に気を配れば…、自転車通学をやめさせていれば…。同じ境遇の家族同士が話をする機会もないので、情報を共有したり、なぐさめあったりすることもないのです。 精神障害者の家族の場合、家族会をつくって、一緒に小旅行に出掛けたり、食事をしたりして、随分と気持ちが楽になったと聞きました。そうした経験を生かせればと、河合先生に相談して、賛同してもらったのです。 −家族と会ったのは。 個別の面談を重ねて、今年一月に初めて一堂に会することができました。懇談が始まると、話す家族も聞く私も、涙、涙でした。医師への不信感、子どもたちの将来への不安、情報が届かないもどかしさなど、家族は話し続けました。最初は皆さん、緊張していたのですが、お茶タイムのころには、とても和やかな雰囲気になりました。やっと話ができて、胸のつかえがおりたという声を聞きました。 −医師への不信感とは。 福島県では、県民健康調査で甲状腺がんの疑いが出た患者については、例外なく福島県立医大病院で診療をうけることになります。このため実質的にセカンドオピニオンを得るのが難しくなっています。最近の医療の世界では、患者の基本的権利として認められていることが、ここでは通用しないのです。 手術後に再発した患者さんは複数いるそうで、再手術となれば悩みますが選択肢がない。 またある父親は、思春期の息子に医師がためらいもなく「がんです」と告知するのを聞いて悲しかったと話していました。 −会員は増えそうですか。 十二日に設立を発表してから、たくさんの電話をいただきました。患者家族の方もいましたし、応援したいという方もいました。「新鮮な野菜を送るから食べさせてあげて」なんて人もいました。会員は、これから少しずつ増えると思います。 患者ではなくても、子どもさんを抱えて不安な人は相談してくださって結構です。専門の医師につなぐことはできます。 また県民健康調査で発見された甲状腺がんの治療にかかる医療費のうち、十九歳以上の人の自己負担分を県が支援する事業があります。ところが申請が煩雑なせいか、申請者は対象者の一割ほどです。相談いただければ、申請の方法を教えます。 どうか一人で悩まないでください。 ◇ 問い合わせは、電070(3132)9155、メールは311tcfg@gmail.com ホームページは「311甲状腺がん家族の会」で検索。 (福島特別支局長・坂本充孝) PR情報
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