2016年3月22日16時30分
夕刊連載小説は4月1日から綿矢りささん(32)の「私をくいとめて」が始まる。綿矢さんと同世代の女性を主人公にし、女性の自立を描く。初めて新聞の連載小説を手がける綿矢さんに抱負を聞いた。
主人公は「おひとりさま」生活を堪能する30代前半の女性。会社には気の合う先輩がいて、休日には気に入った場所へ一人で行く。たまに実家に帰る。一見地味だが、日々を大事に生きている。一人で生きることに抵抗がなかったはずなのに、ある日を境に頭の中から声が聞こえ出す。少しだけ心配になるものの、声との会話が日常になる主人公。気になる男性も現れ、少しずつ変化していく。
初めての新聞小説は登場人物を増やし、場面に起伏をつけようと意気込んだが、「たわいないつぶやきを書く時が一番楽しい」。普段から独り言が多く、大学生になって一人暮らしを始めた時は、母親から心配された。その経験が作品のベースにある。「この作品ではもうちょっと踏み込んで書きますが、自分と会話するのは異常ではないと言いたい」と笑う。主人公の性格の方がより平和的だが、趣味や生活のこだわりは自身の投影だ。
綿矢さんは一昨年に結婚した。連載の依頼から執筆の過程で二人暮らしになった。「主人公と出会った男性との関係が、自然なかたちで進んでいく様子を描き出せたら」と語る。
綿矢さんのたっての希望で、挿絵はイラストレーターのわたせせいぞうさんに依頼した。わたせさんにとっても、新聞の連載小説の挿絵を描くのは初めてだ。「わたせさんの絵からは風を感じる。曇りがないところが好き」
逆に、自分の作品には屈託がある。「自分の作品が、わたせさんの手によってどんな風に変わるのか。読者と同じように、私も楽しみです」
(宇佐美貴子)
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「私をくいとめて」は週一回、原則金曜日に大型紙面でお届けします。
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わたや・りさ 1984年生まれ。2001年、「インストール」で文芸賞を受け、17歳でデビュー。19歳だった04年、「蹴りたい背中」で芥川賞を最年少受賞。最新作に「ウォーク・イン・クローゼット」。
■初挑戦、楽しみながら 挿絵はわたせせいぞうさん
挿絵としての新聞連載は初めてです。僕自身年頭の目標を〈挑戦〉と掲げましたので、真に初挑戦。
感性豊かな綿矢さんの文章を左脳にインプットして、右脳で思う存分イメージの翼を広げ、一読者として楽しみながら描いていこうと思います。(題字もわたせさん作)
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わたせ・せいぞう 1945年生まれ。イラストレーター、漫画家。代表作に「ハートカクテル」「菜」など。企業広告も手がける。
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