どうも。
南米では昨日のチリのヤツで、ロラパルーザの南米版が終わりました。ちょっと寂しくなりますね。多分、来年まで待たなくても、10月にロラパルーザの、今年からはじまるコロンビアがあるので、アーティストのいくつかがブラジルまでツアーで回ってくれないかなあ、と思っているところです。
で、ブラジルの政局が、まだ落ち着いてはないのですが、とりあえず、息もつかないといけないとも思うので、今日はロラパルーザの余韻の話と、「また同じこと・・」かもしれませんが(苦笑)、日本でのフェスの課題の話をしようかなと思ってます。
今年のサンパウロのロラパルーザ、動員は2日で16万人!歴代でも2番目、2日開催になってから、一番良い数字でした。
実はラインナップはファンのあいだで見方が分かれてました。「なんだ、エミネムしかビッグネームがないじゃないか」と言うタイプか「今年は歴代でもベストクラス」という声。どうやら動員で考えてみたら、後者側の意見の方が正しかったようです。
今年のロラを実質引っ張ったのは、この2つでしたね。

2日ヘッドライナーのフローレンス&ザ・マシーンに1日目の準ヘッドライナーのマムフォード&サンズ。この2つとも、すごい客の入りでしたよ。ギッシリ埋まってました。特にマムフォードに関して言えば、エミネムの直前まで別ステージでやってたんですが、あまりにこっちに人が入りすぎちゃって、エミネムの開始直後にあまり人がいなかったという、にわかには信じがたい、本当のことが起こってしまったほどです。
この2組は、ロラだけじゃなく、今、世界のどの国に行ってもヘッドライナー待遇です。フローレンスは去年はグラストのヘッドライナーを体験してるし、マムフォードも2012年からはどこでもそうです。この2組、今年7月頭のロンドンのハイドパークのスペシャル・コンサートの目玉にもなってますね。彼らが出る両日とも、ちょっとした豪華な1日フェスになってます。フローレンスの日にケンドリック・ラマーが出たり、マムフォードの日にアラバマ・シェイクスやウルフ・アリス出たり。そんな中をしっかりヘッドライナーとしてシメてるわけですからね。
ただ!
この2つが日本のフェスに来そうな気配は、なんか見ていてなさそうですね。両者ともフェスの稼働は去年の夏からしてたんですが、欧米圏ではしっかりフェスの中心になっているのに、日本だと、「来れば、それがきわめて貴重。でもまさかヘッドライナーは・・」という感じでしょうか。
なんかなあ〜。どうして
ブラジルくんだり、いや、アルゼンチンとチリもセットなので、こういう南米の国とか、あるいはヨーロッパのそこまで規模の大きくない国とかでさえ、「次の世代のヘッドライナー・クラス」のフェスでの招聘は、かなりの観客を伴う、迎えるのに十分な条件でやれているのに、なぜ日本でだけ、しかも洋楽ロックの輸入の歴史、むしろ他のヨーロッパとか南米よりも長く熱心なものだったにもかかわらず、それが出来ていないんだろう。そう思うと、なんかやっぱり歯がゆくなるんですよねえ。
だって、これ、フローレンスとマムフォードに限った話では全然ないじゃないですか。



このあたりも、日本だとヘッドライナーじゃ、まず来ないし、2010年代に入ってから、フェスで来たことももしかしてないんじゃないですか?僕はこの4つとも、こちらで普通にヘッドライナー、あるいは準ヘッドライナーで見たバンドばかりです。
なんか、時の経過とともに
「出し損ねたヘッドライナー」が累積を続けて、止まらない状態になってるんじゃないですかね。ざっと、今、数えただけでも6組でしょ?ということは、他の国のフェスで盛り上がってるヘッドライナー・クラスを、毎年、1つか2つは損してる、ということになるんじゃないかなと思います。
では、なんでそんなことになるのか。ちょっと分析したいと思います。
1.フジロックやサマーソニックがはじまった当初のお客さんに気を使い過ぎ
まず、これが、ものすごくデカい気がします。90年代の半ばから終わりにかけて。この頃に、どこの世界でも、オルタナやブリットポップという、その後のロックフェスの目玉出演者の多くが輩出されたムーヴメントから出たアーティストが、フェスの中心になり続けていました。だからブラジルでもいますよ。「なんだ。最近のこのフェスは、弱いバンドばかり並べやがって」という反応が、ネットなんかを見てると、どこでも見られることなんです。
だけど、さっきも言ったように、ブラジルのロラパルーザだと、「そんなこと言ってる、アンタの頭がとうに古いんだよ」ということが動員でしっかり証明できちゃうんですよね。ところが日本だとそれがなかなか効かない。だから毎年のように、レッチリ、レディオヘッド、フー・ファイターズ、グリーン・デイ、ノエル・ギャラガー、ケミカル・ブラザーズみたいな名前にどうしても依存したくなるような状況が続いてしまう。だから、こないだも書いたように、アンダーワールドがヘッドライナーだったり、クーラ・シェイカーがひとつの目玉になったりとか、そういう他の国の人からしてみたら摩訶不思議な状況まで生まれるわけです。別に「ビッグ・イン・ジャパン」はあって結構だとも思うんですが、日本で見れていないヘッドライナーが山積してる状態でこういうものをリピートで見せられるとさすがになあ・・。
結局、「ヘッドライナーの新陳代謝」が出来ずに、
フェスそのものが、観客と共に高齢化せざるを得ないような状態になっている。そういう状況になってしまうと、結局はこの90s世代の人たちも、フェスの文化の登場にほとんどがついていけなかった70sとか80sの洋楽ファンの方と結局は変わらなくなってしまうわけで。
ということで
2.フェスから「次のヘッドライナー候補」が見えてこない
ここも問題なんだよなあ。
たとえば、外国のフェスとかだと、その場にいるだけ、あるいはタイムテーブルながめているだけで、「あっ、次のアルバムが出る頃には、これがヘッドライナーだな」というのが、ちゃんと見える仕組みになってるんです。今年の南米のロラパルーザだって

この2つはやっぱり夕方の時間の目玉でしたからねえ〜。
どうしても、見に来た人の話題って、ヘッドライナーとか、そこに近い人の話題には、多数決でなってしまうものなんですけど、誰かに局部的に受けるのって大事で、この2つはそこで話題をちゃんと作れてたし、それにライブもちゃんと出来てる(アラバマのバックは若干、微妙ではあったけど、汗)んですよね。次のアルバムがよほどコケでもしない限りは、「次来るときは、ヘッドライナーかな」と思える雰囲気は、もう今の時期から十分ありましたからね。
この2つとかだと、僕の耳にしてる情報だと、日本でも結構人気があるっていうじゃないですか。フェスで呼べば良いのにね。今言ったように、絶対、局部的には話題にはなりますからね。今からでも予定があれば入れれば良いんですけどね。
3.批評媒体的感性に頼り過ぎ
あと、僕が日本のフェスのラインナップ見て気になるところは、「それ、たしかに良いとは思うんだけど・・」というメンツが目立つことですね。なんか、フェスで見るには随分ストイックで、広いとこで見るにはむしろ閉じた感じがするアーティストなのに、それが人気があるみたいな感じというか。バトルズとかジェイムス・ブレイクとか、定番のモグワイみたいな感じとか。あんまり、一般的な意味での、野外でのフェスっぽい感じはなんかしないというか。
逆に、
放送メディアのウケがよさそうなアーティストとか、広い会場を煽ってエンターテインできそうな名前がほとんどありませんね。そこも、なんか客層狭めちゃってるように見えるんですよねえ。「アンセムになりそうな曲」があるバンドとか、広い層に広がりがあるようなオープンな感じのライブが出来るバンドって、やっぱフェスでは出世しやすいんですけど、そういうのがなんか見えないというか。そこんとこはやっぱ、ラジオでインディ・バンド聴く習慣が出来てないとこが響いてると思いますね。マムフォードにせよ、フローレンスにせよ、ブラック・キーズにせよ、活字媒体に推されたんじゃなく、ラジオで曲がかかって有名になったバンドですからね。
日本だと、放送媒体がこういうのかけないから、批評媒体的になじみがないことでどうしてもマークが甘くなる。そこのところの対策がいつまで経っても出来ないから、格差が開いていくばかりです。
あと、日本人の場合、「曲がわかりやすく大衆的」よりも「誰がオリジネーターか」ということを気にする、なんかすごい生真面目な傾向が昔からあります。僕とかは、もとがトップ40育ちなので、曲がより分りやすい方が好きです。ミニストリーよりは断然ナイン・インチ・ネールズだったし、ソニック・ユースよりは断然ピクシーズだったし。最近のでも、ジェイムス・ブレイクよりはThe XXだし。で、そういうタイプの方が、外国だと僕が好むタイプの方が全然ウケるんだけど、日本だとそうはいかない、というとこもあります。
4.世界のフェスのラインナップ見て、取り入れる努力は必要
あと、世界のフェスのラインナップをジーッと見て、「この名前、多くて気になるな」というのは日本でも積極的に取り入れるべきだと思います。それが、多くの国が共有してるフェス文化の顔なので。
僕が入手している情報で、割とこの夏以降の目玉っぽいのは、こういう感じですかね。

このあたりはヘッドライナー、準ヘッドライナーで名前、よく見ますね。僕もこの2つはすごく見たいですね。LCDは是非ヘッドライナーの興奮の中で見たいけど、ブラジル的にはラナ・デル・レイはすごいです。狂信的人気があって(笑)。「来年、ロラパルーザで見たいアーティスト」のアンケートでも、彼女、レディオヘッドの倍以上の得票で1位になったくらいですからね。
あと、今のフェスが割とR&B/ヒップホップのアクトがヘッドライナー多いことも考えると

このあたりにもアプローチをかけるようだと、今も面白いし、今後にもつながると思うんですけどねえ。
5.高くなってる国民の自己評価(自尊心)をいまいちど謙虚にしてみる
あと、僕が、特にこっちに来てから気になってるのがこのポイントですね。
ブラジルって、いろいろ問題ありますよ。でも、そういう国だって自覚があるから、「自分たちの国はまだまだ」「いやあ、私らの国、大したことありませんから」っていう、謙虚な姿勢をすごく感じるんですよね。それもあってか、海の向こうからの文化で評判の良いもの、とかの話を聞くと、素直に聴いてみようとする姿勢があるんです。
ここが日本人はある時期からキツくなってる気がします。バブルの時期をへて、勢い的に世界ナンバーワンみたいになった時期があるから、そのくらいから「海外で良いって言われてもナンボのもんじゃい!」みたいなものが心理的に芽生えて来た。一般では90sのはじめ頃からあったし、マニアックな音楽リスナーやミュージシャンにもミレニアムくらいからは感じられていた。そこで、
自分が、海外に行かない、あるいはライブで実際に見てないものを、パッと聴きの音の印象だけで判断して、何がすごいのか、理解しようとしなくなった。これ、実はストロークスやホワイト・ストライプスが注目された15年近く前からある現象なんですけどね。そこのところの、悪い言い方すれば「感覚的な奢り」みたいなものが上の世代で解消されないまま吸収・消化が悪くなり、下の世代でリスナーがグンと減り、さらにネット情報だけに頼りがちな頭デッカチなリスナーが増えがちなのかな・・。という印象ですね。
このあたりの感覚がもう少しフラットになれば、
日本より全然先進的じゃない国の音楽リスナーがフェスで普通に享受できてるものが、もっと体験しやすくなると思うんですけどね。
上に書いた5つのこと、多少で全然構わないから、修正してみるとだいぶ違ってくると思うんですけどねえ。