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実は企業が求めている シューカツ「意識低い系」

2016/3/23 6:30
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 リクルート、ライフネット生命などの人事責任者として20年以上、累計で2万人を超える就活生を面接してきた「プロ人事」、曽和利光さん。「学生は、根拠のない思い込みで失敗している」という曽和さんが、面接官の本音を語ります。第7回は「実は企業が求めている シューカツ意識低い系」です。

曽和利光(そわ・としみつ) 1971年生まれ。 京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)などがある。
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曽和利光(そわ・としみつ) 1971年生まれ。 京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)などがある。

■隠れた優秀層が潜む?戸田公園

 「部活に打ち込みすぎて、就活に乗り遅れてしまった」。こんな学生のぼやきを聞くことがよくあります。私は、そういった就職活動に受け身の学生を、「シューカツ意識低い系」と呼んでいるのですが、実はこうした“希少種”に企業から熱い視線が送られているのです。「就職活動」より大事で、打ち込めるものがある学生は、優秀である可能性が高いからです。

 企業にとっては、会いたいのに会えない、幻の動物のように感じる学生層。彼ら、彼女らはどこに「生息」しているのか。大きく分けると「理系」「体育会系」「隔離系」の3種類になります。

 理系の学生は研究室にこもっているし、体育会系は練習ばかり。隔離系とは、それ以外の何かに没頭し、就職活動に時間を割こうともしない。たとえば、「ボート(漕艇)部」の学生は、就活イベントにはなかなか出てこない上、学校にも現れません。関東なら埼玉の戸田公園、関西なら琵琶湖に行かなければ彼らに会うことはできません。来る日も来る日も全員でボートをこぎ、同じゴールに向かって進むチームワーク抜群の猛者ばかり。

 意外かもしれませんが、実は体育会系の主将級の人材が、就活市場では余っているケースが多いのです。船が沈むときに残る船長のような思いなのか、「俺が試合を投げ出して自ら船を下りるわけにはいかん!」と考える人が多いため、ほとんど就活をしていないのです。結果、企業がうまく接点をもてないわけです。部活優先の彼らは、たいてい2、3社からリクルーター面接を受けて、ほとんど就活をせずに決めてしまいます。

 就活に出遅れて戸惑っていても、その代わりに何かに打ち込んでいる学生は魅力がある、ということを伝えたいですね。逆に企業の採用担当の方には、今からでも遅くないから、早く戸田公園に行きなさい、とアドバイスしたいですね。そこで説明会を開けば、一網打尽で良い学生が確保できるでしょう(笑)。

 極論すれば、多くの企業が一番ほしがっているのは、「種目は決めていないが、腕立て・腹筋・持久走なら任せてください」という学生なのです。基礎体力があればいいんです。逆に言えば、いわゆる「就活意識高い系」の学生は、自分がやりたい「種目」をアピールしすぎるきらいがあります。

 たとえば入社後の「配属」です。面接のたびに質問され、エントリーシートで問われ続ける学生たちは、短時間で「志望理由」や「自分にあっている部門」という問いに対する答えをむりやりひねり出さなければなりません。私はそれを「ねつ造されたウィル(意志)」と呼んでいます。しかし、せっかくつくり出した「ウィル」も、入社し配属され、現実を前にして「白紙」になってしまいます。「僕はマーケティングしかやりたくありません、営業なんて嫌だ」という学生に来られても、現場は困ってしまいます。

■志望動機を聞く愚かさ

 「なんでうちの会社を志望したの?」。こうした定型的な質問をすることで、ミスマッチが起きてしまうことに気づいていない採用担当者は多いです。私は志望動機を聞く質問自体がナンセンスだと思っています。特に初期の面接で志望動機を尋ねられたら、困ってしまうのが本音でしょう。

 恋愛に置きかえれば、合コンで初めてあった男性に「なんで僕のこと好きなの?」と言われるようなものです。「いえいえ、まだ好きじゃないです。これから知りたいんです」というのが本音のはず。ただ、そうはいかないから「ウイル」をねつ造してしまいます。

 「なぜリクルートを志望するの?」「リクルートは、人生の節目節目で情報提供することによって自分らしい生き方を応援している企業だからです」。まるでその企業の事業を説明しているようです。面接官は「そうですね」としか言いようがない。

 面接する側へのアドバイスでもありますが、初期の面接で問うべきなのは志望動機ではなく、好きなタイプはなんですか? つまり「会社を選ぶ基準」です。「どういう基準で会社を選んでいるのですか」「私は○○という基準で会社を選んでいます。それが、御社の○○という事業にあてはまるものだと思ったので受けています」。これでいいのです。

■受け身も悪くない

 話は戻りますが、就職活動にどうしても熱が入らないのなら、いっそ受け身のままでいればいいのです。一工夫して、「逆求人」のような形で身をさらしておけば、企業側が寄ってくるでしょう。自己アピールをしようとしまいとそれほどは変わりません。今まで頑張ってきた自分がありさえすれば、自信を持っていいのです。無理に「攻めの就活」をしても、現実とずれている可能性は大いにあります。そのまま入社すれば、もっと不幸が起こります。熱が入らないと焦らず、「積極的な受身就活」試してみるのも一つの手です。

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共同

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