結局どこまで本気だったのか。疑問が残る。

 政府が関係機関の地方移転に関する基本方針を決定した。安倍政権の地方創生の目玉で、自治体に広く誘致を呼びかけてきたが、中央省庁では文化庁が数年以内に京都へ移転することだけが本決まりとなった。

 徳島県が誘致した消費者庁と、和歌山県が求めた総務省統計局は検証を重ね、8月末までに結論を出すという。だが、5道府県が誘致した中小企業、特許、観光、気象の4庁は「機能の維持・向上が期待できない」などと見送られた。研究・研修機関も多くの自治体が誘致したが、全面移転は1機関のみだ。

 人口減少時代に入った日本で、東京一極集中の是正は急務だ。政府機関移転には「自分たちが何もしないで企業に地方移転をお願いしても説得力がない」(石破茂地方創生相)という象徴的な意義があったはずだが、尻すぼみの印象だ。

 最大の問題は、政府全体のあり方をどう見直すかという視点が欠けていたことではないか。一極集中を是正するにはどの機関をどこへ再配置すべきか。しっかりした理念がなければ、形だけに終わりかねない。

 国会対応に縛られる省庁の職員が、長時間勤務を強いられる弊害は言われて久しい。省庁同士の役割を整理したり、東京で担う必要がない業務を地方に移管したりすることを考えるきっかけにもできたはずだ。

 しかし政府内の議論は、省庁を地方に移しても、現状の機能が維持できるかにほぼ終始し、組織や業務のあり方を改革する方向に踏み込まなかった。

 基本方針には一部の省庁・機関の地方拠点の強化や新設も盛り込まれた。これでは組織肥大化の懸念さえぬぐえない。

 唯一移転する文化庁は、京都政財界の強い働きかけが実った。京都は伝統文化の集積地だ。現場に身を置くメリットを生かし、移転が豊かな文化行政につながるよう、詳細設計を丁寧に進めてほしい。

 文化庁と並んで河野太郎消費者相が移転に前向きな消費者庁は、「消費者保護の機能が低下するのでは」という懸念から、徳島移転の結論が持ち越された。トップダウンで決めず、国民が納得できるような形で議論を尽くしてもらいたい。

 残念なのは、特に大きな権限を持つ府省本体が、移転候補にあがらなかったことだ。地方側に誘致の動きもなかった。移転論議をこれで終わりにせず、時代に合った政府機構のあり方をしっかり考えていくべきだ。