吉田美智子=ブリュッセル、高久潤 梅原季哉=ロンドン、益満雄一郎
2016年3月23日05時05分
パリに続いて、欧州の中心部が狙われた。欧州連合(EU)の心臓部があるブリュッセルの国際空港と地下鉄で爆発が起き、多数の死傷者が出た。ベルギーでは昨年11月のパリ同時多発テロの容疑者が逮捕されたばかり。厳戒態勢が敷かれるさなかの事件だった。
午前8時すぎの爆発で、ブリュッセル空港の出発ロビーは破壊された。仏のニュース専門チャンネルBFMが目撃者から提供を受けたとして放送した爆発直後の映像では、爆風で天井から落下したとみられる黒と白のパネルや吹き飛んだガラスの破片が散乱。黒い煙が上がっていた。大勢が入り口に向けて逃げ惑った。
AP通信が伝えた情報によると、1回目より強い2回目の爆発で、天井が崩れ落ち、水道管が破裂した。爆風でガラスが粉々になった。短文投稿サイトのツイッター上には、ガラスが吹き飛んだ空港の建物から走って逃げる人々の様子が投稿された。
空港近くには足止めされた旅行客らの待機所が設けられ、約500人が不安そうな表情で飛行機の運航再開の情報を待っていた。
朝日新聞の取材に応じたベルギー北東部の福祉施設職員サラ・ウォルティスさん(25)は、空港駐車場のエレベーターの中でトラックの振動のような鈍い音を聞いた。エレベーターを降りると、足や顔から血を流す男性や髪の毛がちりちりになった女性がうずくまっていた。「テロだ」という叫び声が響き、泣いている人もいたという。
ウォルティスさんは「パリのテロの容疑者が捕まったから、いつかはこういうことが起きると思っていた。あと少しで巻き込まれるところだった。ブリュッセルが生きるか死ぬかの選択を迫られる町になってしまった」と話した。
マリールイーズ・クーズマンズさん(80)は、夫のアンリさん(80)とミラノ行きの便のチェックインを済ませ、カフェでコーヒーを飲んでいた時に「ボン」という大きな爆発音を聞いた。夫の後ろの天井が崩れて落ちてくるのが見え、2人ですぐにテーブルの下に身を隠した。「今はショックで何も考えられない」
ある男性は仏メディアの取材に、「がれきの中を歩いてきた。たくさんの人が倒れていた。まるで戦場のようだった」と答えた。
空港での爆発から約1時間後。南西に約10キロの地下鉄マルベーク駅でも大きな爆発が起きた。爆発後に車両内に入った消防隊員は地元メディアに「車両内はすべてが破壊され、粉々になっていた。どう表現してよいかわからない」と語った。
現場は欧州連合(EU)本部のすぐ近く。駅入り口から黒い煙が立ち上り、負傷者が運び出された。ひっきりなしに行き交う救急車や消防車のサイレンの音が鳴り響いた。警察が付近一帯を封鎖。午前10時ごろ、付近ではまだかすかに煙のにおいがした。
ジャーナリストのジュリエット・バリアンさん(30)は地下鉄に乗っていて、隣駅シューマンで爆発音を聞いた。何が起きたのか分からず、マルベーク方向に向かった。構内で目にしたのは、血を流して倒れる多くの人たちだった。「パリのテロの容疑者が捕まり、何があってもおかしくないとは思っていた。すごく怖い」と話した。
爆発の少し後に駅の近くを通ったEU職員のカレン・ティエリーさん(53)は、地下鉄の入り口から黒いけむりが立ち上り、けがをした多くの人が路上に座りこんでいるのを見た。「一体、どれほどの人が犠牲になったのか。EUの近くでこんな惨事が起きるなんて信じられない」という。
病院勤務ブクリア・ファティアさん(34)も、複数の負傷者を目撃した。「テレビでしか見たことのない光景だ。恐ろしい」と話した。
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朝日新聞国際報道部
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