誰もが「真面目」と認める男が、野球賭博への関与を認めた。息子の過ちをただただ謝る父。未来を嘆く恩師。野球人生は順調だったはずなのに……。なぜこの若者は、道を踏み外してしまったのか。
父親が本誌に語ったこと
読売新聞東京本社で涙の謝罪会見が開かれたのと同じ3月9日、巨人・高木京介(26歳)の故郷・石川県能美市でも、頭を下げる人がいた。
過ちを告白するよう息子を促した、高木の父・和也さんである。
会見から約3時間後、本誌は和也さんを訪ね、心境を聞いた。
——お話をお伺いできますか。
「申し訳ありませんが、球団から、『親は表に出ないように』と言われておるもんで……。本人も大人ですから。わざわざ足を運んでいただいて、申し訳ないです」
——息子さんは会見で、ご両親の言葉を受けて告白することにしたと語っていますが。
「何も言ってないですけれども……。ただ、相談があったから、『正直に言いなさい』と言っただけです」
——高木選手の今後に関してはどのようにお考えですか。
「それはまだ考えられないです。自分がやったことの責任の大きさを自覚して、ちゃんと罪をつぐなって更生してもらいたい。親子共々、一緒になって頑張っていきたいと思います」
——野球を教えたのはお父さんだと聞いています。野球を続けて欲しいという気持ちはありませんか。
「そんな……それは全然ありません。今はそんなことを考えられる余裕がありませんし」
——高木選手だけが悪かったわけではなく、球団の体質にも問題があったと言われています。
「はい……。もうよろしいでしょうか。(息子のことを)良いふうに書いていただけるのなら、書いたってください。お願いします。私らもほんとに申し訳ないことをしたと反省していますから。今日は、わざわざ足を運んでいただいて、ありがとうございます」
「球団に止められているから」と、表には出てこなかったが、玄関の扉越しに取材に応じてくれた和也さん。会見での高木同様、言葉を選びながら率直な気持ちを丁寧に話す語り口からは、真面目な人柄が感じられた。だが、その声は何度も震えていた。
高木京介の野球賭博への関与が発覚し、球界が再び揺れている。
昨年10月に発覚した3人に加え、またしても巨人から新たな賭博選手が出たからだが、理由はそれだけではない。
高木が、球界でも有名な「真面目な男」だったからだ。