全日本空輸の国内線で22日、旅客管理システムに大規模な障害が発生した。空港での搭乗手続きなどができなくなり、午後9時までに146便が欠航、391便に遅延が生じ、影響は約7万1900人に及んだ。23日も2便が欠航する。障害が起きたシステムは全日空が提携航空会社に採用を働き掛けてきた。国内戦略の要のシステムの混乱は全国に広がった。
全日空によると、22日午前3時44分に旅客データなどを記録する4台のサーバーのうち1台が停止。午前8時22分までに残りの3台もエラーが発生し、稼働を停止した。全国49の空港で搭乗手続きができなくなり、ホームページ(HP)や旅行会社を通じた予約や座席指定もできなくなった。1台のサーバーのみの稼働とすることで午前11時半ごろまでに搭乗手続きを再開したものの、欠航や遅延などは夜になっても続いた。23日朝までには完全復旧する見通し。
22日夕の段階では原因を特定できておらず、全日空の業務プロセス改革室は「4台のサーバーのデータを同期させるハードやソフトに原因がある可能性がある」と説明。サイバー攻撃などの「外的要因は確認できていない」という。
航空業界では現在、旅客管理システムを自社開発から業界標準のクラウドサービスに切り替える動きが広がっている。システム障害のリスクは同じでもクラウドサービスはデータ分析によるサービス品質の向上、航空規制の変更に伴う修正作業の負担軽減など利点が多い。50年近く自前のシステムを使っている日本航空は2017年度にスペインのアマデウスが開発したクラウドサービスに切り替える計画だ。
国際線では15年にアマデウスのサービスを採用した全日空。国内線で自社開発システム「エイブル」を使い続ける理由は陣営づくりの核となっているからだ。全日空はAIRDO(エア・ドゥ)などとエイブルを共同利用し、座席販売で連携する共同運航(コードシェア)を実施している。
提携する航空会社とのシステムの共同利用は提携先の投資負担を軽減する一方、トラブルの影響が全国規模に広がるデメリットもある。22日のシステム障害ではAIRDOなど4社に欠航や遅延が発生した。
全日空は現在、16.5%を出資するスカイマークにエイブルの導入を働き掛けている。ただ、スカイマークは「経営の独立性が損なわれる恐れがある」と消極的。両社のシステムをつなぐ新たなソフトウエア開発など対案も示している。
全日空との共同運航はスカイマーク再生計画の柱の一つ。ただ、今回のシステム障害を踏まえ、スカイマークがエイブルの導入により慎重になる可能性はある。システム障害の原因究明が長引けば、スカイマーク再建にも影響は及びかねない。
(白石武志、岸田幸子)