廃炉の時代(上) 解体作業
国策と地方 第8章
2016年01月08日 10時28分
■商用炉、未知の領域へ 一部撤去も原子炉未着手
商用炉として国内初の廃炉作業が、東海原発で進められている。隣接する東海第2原発には乾式貯蔵施設もある。九州電力は昨年12月、玄海原発1号機の廃炉計画を申請したが、実際の作業はどのように行われ、廃棄物はどうなるのか。現地を訪ね、課題を探った。
「海抜15メートル」。茨城県東海村の日本原子力発電(原電)東海原発そばにある高い壁に、青いラインが引かれていた。東日本大震災で福島第1原発に到着した津波の高さを示している。
壁は、隣接する東海第2原発の非常用ディーゼル発電機を津波から守るため2011年7月、建設された。「忘れてはならない教訓です」と原電担当者。震災直後、東海原発の解体作業は半年中断したが、既に再開されている。
解体は01年に始まり、25年に終わる計画で、費用は885億円。発電機やタービンなど、放射性物質の汚染がない主な機器は撤去され、その建屋は倉庫になっていた。現在は原子炉建屋内にある熱交換器の撤去を進めている。
原子炉建屋は角張ったコンクリート製。中には原子炉を囲むように4基の熱交換器がある。それぞれ直径6メートル、高さ25メートル、重さ約750トン。このうち1基は13年9月に撤去を終えた。建屋内には縦長の巨大な空間ができていた。
熱交換器は稼働時、内部で冷却材の炭酸ガスが循環し、放射性物質に汚染されている。「まだ放射線管理区域があるんです」。熱交換器があった空間は、一部シートで覆われていた。
1基目は、「この作業のため特注」された遠隔操作のロボットを使った。建屋に隣接する操作室で複数の画面を見ながら、厚さが7センチある鉄製の表面を輪切りにし、“だるま落とし”の要領で撤去した。
手作業も可能だったが、「原子炉を解体するためのノウハウを蓄積する必要があり、あえてロボットを使った」という。2基目は手作業で実施する方針だ。
廃炉の作業員は50~150人程度。原電社員自らフォークリフトなどの資格を取得し「多くの工程を直営で行っている」。多くの作業は既存の機械や設備を使い「その技術の組み合わせが大切になる」と話す。
商用炉では被災した福島第1の全6機と東海原発以外に、中部電力浜岡1、2号機(静岡県)が廃炉に着手。老朽化した九州電力玄海1号機(東松浦郡玄海町)など4原発5基の廃止が決まっている。原電担当者は「放射性廃棄物の管理や評価の手法は、玄海でも生かせる」と説明した。
ただ、東海原発は国内唯一の炭酸ガス冷却炉。玄海などの加圧水型軽水炉と、福島といった沸騰水型軽水炉に二分される国内の原発とは、型式が全く違う。東海のノウハウが、玄海でどの程度生かせるのかは不透明だ。
東海原発では、放射性廃棄物を撤去する装置の設計が遅れ、工期は当初から8年延びている。原子炉の解体は19年からの予定で、比較的汚染レベルが高い部分はこれからの作業だ。廃炉の時代を迎える中、商用炉の解体はいまだ、未知の領域を残している。
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