中国で知識人やメディア・出版関係者が突如、音信不通となり、連絡が取れなくなることがあまりに頻繁になったため、もはや大ニュースにもならなくなった。恐ろしいことである。最近では日本の法政大学に在籍する東アジア国際関係の専門家、趙宏偉教授が2月末に北京に向かったあと連絡が取れない状況であるという。また、中国や香港で人気のコラムニスト、賈葭が3月15日午後以降、連絡が取れず行方不明であるとか。二人とも、それぞれの別件で中国当局に身柄を拘束されていると思われている。
今回、取り上げたいのは賈葭の件である。趙教授の身柄拘束理由はまだはっきりとわかっていないが、賈葭事件は全人代(全国人民代表大会)開幕前日に無界新聞のネット上に掲載された「習近平引退勧告」公開書簡に絡むと見られている。
良識的な中国人知識人を秘密裡に拘束
香港を拠点にするラジオフリーアジアによれば、賈葭は15日午後、北京国際空港で北京市公安当局に連行された。彼の弁護士が北京市公安局首都空港分局から得た情報だという。アムネスティインターナショナルは19日に、中国政府に対して、賈葭に関する状況を公開するよう声明を出した。
賈葭は新華社「瞭望東方週刊」や香港「鳳凰週刊」の編集者を歴任したあとコラムニストとして独立。香港に在住しながら、中国や香港の雑誌に寄稿、またウェブマガジンなどの編集にも携わってきた。最近は『我的双城記』(北京三聯書店出版)を上梓し、必ずしも反共産党的な人物ではない。きわめて良識的な中国人知識人であり、中国国内外にファンが多い。
周辺の情報を突き合せれば、3月4日に「忠誠の党員」という匿名で新疆ウイグル自治区主管のニュースサイト無界新聞に「習近平引退勧告」公開書簡が掲載された件に関わっていると見られている。無界新聞のCEOはかつて賈葭の同僚であった欧陽洪亮であり、賈葭はくだんの公開書簡をいち早く見つけて、すぐに削除するように欧陽に知らせたのだという。だとすると、彼が秘密裡に拘束されたのは、単なる事情聴取の可能性もあるのだが、家族には一切の連絡がなく、今の習近平政権の異常なまでのメディア弾圧を鑑みれば、その身の安全は当然心配されるのである。