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田母神論文は何を提起したか--「朝まで生テレビ」出演で見えたもの
花岡信昭(産経新聞客員編集委員)


 田母神俊雄・前空幕長の論文問題は大きな反響を呼んでいる。8日、東京の明治記念館で授賞式が行われ、田母神氏は賞金300万円を辞退した。

 

 筆者はこの論文募集企画で審査委員を務めたことから、なにやら当事者側の一員となってしまった。賞金辞退については、田母神氏からも、論文募集を企画したアパグループの元谷外志雄代表からも相談を受けていたが、これが一番いいと判断した。

 

 とにかく、論文審査で田母神氏を最優秀賞にするための「ヤラセ工作」があったとか、賞金300万円は元谷氏をF15戦闘機に体験搭乗させたことへの謝礼だ、などといった虚構が出回ったのだから、これは受け取れるわけがない。田母神氏は最優秀賞という「栄誉」だけを受け取ったわけだ。

 

 「WiLL」「正論」などの月刊誌は一大特集を組んだ。田母神氏の問いかけがさまざまな方面で重大な意味合いをはらんでいたことを証明するものだ。この論文審査に参画できたことを誇りに思いたい。

 

 テレビもいっせいに取り上げたが、11月末の「朝まで生テレビ」に呼ばれた。この番組には以前も出たことがあるが、深夜3時間の生放送というのは、なんとも消耗戦である。当方は審査委員の1人として呼ばれたのだと思い、審査は公平に行われたということを証明するための資料などをごそっと持ち込んだ。

 

 だが、事前の打ち合わせで司会の田原総一朗氏は「審査経過なんてもうどうでもいい。論文の中身についての論議をしたい」と言う。「だって、サンデー毎日などは、元谷氏のF15体験搭乗の見返りという贈収賄の構図を描いているんですよ」と反論したら、「週刊誌なんか放っておけばいいの」。

 

 なるほど、そういう言い方はそれなりに理解できる。そういうことなら、田母神氏が提起した内容についての議論を徹底的にやろうと頭を切り替えた。

 

 スタジオの向こう側には、姜尚中、小森陽一、田岡俊次、浅尾慶一郎、井上哲士、辻元清美各氏といったおなじみのカオが並ぶ。こちら側は森本敏、西尾幹二、水島総、潮匡人、平沢勝栄各氏ら、なんとなく「仲間うち」の顔ぶれだ。小生は水島氏と潮氏の間に座るようにセットされており、両隣りが懇意な人であるというのはなんとも落ち着いた気分にさせてくれる。

 

 で、正直いうと、議論はほとんどかみ合わなかった。姜氏らは相変わらずの、といっては何だが、憲法9条体制が日本の平和を維持してきたという旧来型の発想から一歩も出ようとしない。いわゆる自虐史観、東京裁判史観そのものであった。

 

 当方は「あの戦争を侵略戦争の4文字で片付けていいのか」「アジア各地で日本は教育やインフラ整備など、列強の植民地支配とはまったく違う姿勢をとった」などと、田母神氏が提起したテーマに共感する立場から、あれこれ述べてみたが、どうも真正面からの反論も返ってこない。

 

 そんな調子で3時間が終わってしまったが、最後に視聴者からのアンケート結果が示された。田母神論文支持派がなんと61%である。この問題に関心がある人が見ていたであろうことを差し引いても、これは意味のある数字といえた。

 

 もうひとつアンケートがあったのだが、なかなか出てこない。どうもスタッフ側で出していいものかどうか、迷いがあったらしい。ぎりぎりになって示されたのは、「憲法に自衛隊の存在を明記すべきだ」80%という数字であった。これにはわれわれも驚いたが、「向こう側の人たち」は言葉もなかった。

 

 世論は確実に変わりつつある。田母神論文によって、そのことが浮き彫りにされたのではないかと実感した。

 

 「朝ナマ」では、放送終了後、ビールや軽い食事が用意されている。激しくやりあったのを修復する「打ち上げ」の意味もある。スタッフたちもアンケート調査の結果については予期していなかったようで、筆者はその意味合いを尋ねられ、しばらくそうした議論を続けた。

 だが、「向こう側の人たち」のほとんどは、そそくさと帰ってしまったのであった。


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