持続可能な社会保障へ (世界のなかの日本経済:不確実性を超えて)
永田町では消費税の引き上げが話題になっているが、2%の増税ぐらい大した問題ではない。アゴラにも書いたように、社会保険料の実質負担は30%近く、税負担よりはるかに大きいからだ。しかもその料率は国会にもかけられず、厚生労働省令で決まるので、政治的な争点にもならない。

しかもこの保険料は独立採算になっておらず、一般会計から「社会保障関係費」として赤字補填している。この高齢者への所得移転の増加が財政赤字の最大の原因だが、ほとんど国債でファイナンスされているので、現在の納税者は負担していない。つまり現在の高齢者と現役世代は、国債発行という形で将来世代に負担を先送りする「共犯者」なのだ。

その結果おきているのは、金融資産の食いつぶしである。図のように国民純貯蓄は1991年をピークとして減り、最近ではゼロで、今後は純減になると予想されている。その原因は、図でもわかるように、民間貯蓄がほとんど財政赤字の穴埋めに使われているからだ。

キャプチャ
国民純貯蓄の推移(出所:内閣府)

これは戦後の高度成長で築かれた国民の富が、ここ25年で80兆円以上も老人福祉に食われたことを示している。そしてこの傾向は、今後もっと悪化する。現在の投票者の41.6%は60歳以上で、議員定数のゆがみを勘案するとほぼ半数が60歳以上だが、2060年には投票者の56.6%が60歳以上になり、老人が完全に政治を支配するようになるからだ。

これは経済問題というより政治問題であり、この状態を放置すると、日本の資本ストックは急速に減少し、経済の衰退が加速するだろう。手を打つのは早いほどいいのだが、もう手遅れかも知れない。

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