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【レポート】
2 長時間労働の存在が母親に罪悪感を抱かせる
実際に私たちがコンサルティングをしている企業の例で考えてみましょう。まずコンサルティングに入る前の「労働時間の上限がない企業」では、月末や年度末までにいかに成果を出すかという戦いになります。「期間あたり生産性」といいますが、これをすると、自分が勝つためにはノウハウを他人と共有せず、自分ができる限りの時間を費やして他者と差をつけるという「個人戦」に走ることになります。その結果、以下のことが起こります。
(1)時間的制約のある育児・介護中の社員は勝負に勝てなくなりモチベーションが下がる
(2)独身社員に仕事が集中して婚活の時間がなくなる
(3)男性社員が育児に参加できず第2子がうまれない
(4)育児中女性社員のモチベーションが下がり管理職を打診しても受けなくなる
(5)介護中の社員が離職し、ベテランのノウハウが失われる
一方で、「労働時間に上限のある企業」になるとどのような変化が起こるのか。生産性をあげるために、1時間あたりの成果を競い合うという評価制度に変える必要が出てきます。「時間あたり生産性」といいますが、これを評価基準にすると、時間内に成果を出せばいいということになり、時間的制約のある社員のモチベーションが上がります。また、独身社員、子どもを持つ男性社員にも「ライフ」の時間ができる。全員が協力して効率を上げていかなければならないので「チーム戦」になり、ノウハウが属人化せずチームで共有されるようになります。そうすると、前にあげた5点が解消されますよね。
これと同じことが、日本の社会でも言えるのです。三六協定で労働時間の上限を設定すれば、企業間の争いは「短い時間で高い労働生産性を競う」という形に変わります。すると以下のことが起こります。
(1)1人に多くの労働時間を割けないので、労働者の頭数を増やすために、時間的制約のある育児・介護中の社員も積極採用するようになる(結果として潜在労働力を活用でき、GDPが向上する)
(2)独身社員の労働時間が減り、婚活・自己研さんの時間がとれる
(3)子持ちの男性社員が育児に参加できるようになり、第2子がうまれたり、妻の就業率がアップしたりする
(4)育児中の女性社員が業績に貪欲になり、管理職を目指すようになる
(5)介護中の社員が離職せずに済むため、高齢社員が活躍できるようになり、社会保障費の削減が見込める
結果として「働きながら子育てできる」環境が整い出生率が上がるうえ、GDPも向上し、介護離職0も達成できると私は考えています。
1990年代半ばまでは若者がたっぷりいる社会でした。しかし、これからは高齢者が大半である社会に変わっていきます。ですから、男女で効率よく仕事をして、多様性で勝っていく社会に飛び移らないといけない。政府と企業の経営者に加え、個人の仕事のやり方を変えることも必要だと思っています。
時間的制約のない人たちは長時間労働をしても本人は問題ではないかもしれない。しかし、その人との比較の中で時間が足りないから何かが足りないのだという苦しさみたいなものを、育児中の社員は持っていると思います。その結果、一番危ないと思っているのはその葛藤の中で子どもにあたってしまうことです。
例えば、育児中の社員が職場で肩身の狭い思いをして、仕事ができないという犠牲を払って、全力で保育園の子どものお迎えに行ったとします。そこまでして急いで迎えにいったのに、子どもに「まだここで遊んでいたい」と言われるとすごくショックな気持ちになって子どもにあたってしまう。そしてその直後にすごく罪悪感を持って、もう2度とこういう思いをしたくない、私が仕事に未練があるからいけないのだと思い、仕事へのモチベーションを下げてしまう女性ってたくさんいるのではないかと思っています。
ですから、労働時間の上限を入れることによって、フェアな戦いができ、きちんと評価され、生産性が上がるという仕組みをつくっていかないといけない。育児をしていない人は長時間労働でいいということではなく、社会全体で考えなければいけない問題だということを認識してほしいと思います。
インデックス
目次(1) | 安倍首相も支持した「働き方改革」 |
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(2) | 長時間労働の存在が母親に罪悪感を抱かせる |
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