夏の終わりの青い空の下を、でっかい積雲の下を、屋根が開くクルマを走らせている。
(CBDへ、注文したティアラを取りに行くのさ)
(チョー、幸せな気分)
明朝(みょうちょう)は、モニの誕生日である。
貘も麒麟も、鯀でさえ、鳳凰と一緒に森から出てきて、モニさんの誕生した日を祝う。
ユニコーンとドラゴンが肩を並べて、モニさんが生まれた日を描いた絵本に見入っている。
(この赤ん坊は、きっと世界で最も美しい人になるだろう)
(この美しい人の夫になる男に、いまから嫉妬しないわけにはいかない)
モニは、どんな人も巻き込んで幸福にする渦巻のような人だ。
どんな人も、選択の余地もなく、強制的に幸福になる。
モニの顔を見たとたんに、瞬間に花がひらく薔薇のような笑顔になるベトナム料理屋のおやじよ。
なんだか切ない声でモニのふくらはぎに顔を押しつけるエジプト猫よ。
ちょー特製の笑顔を向ける、小さな人たちよ。
明日は、モニの誕生日である。
(真っ黒くろすけも総出でお祝いする)
(幽霊たちも、障子の向こうから現れてお祝いする)
(もののけたちも)
あなたと一緒に住みたいけど、あなたは結婚するには、どう考えても若すぎると述べた日のことをおぼえていますか?
おとなのふりをして、ぼくはなんてバカだったんだろう。
気取り屋で、皮肉屋で、太陽の光が、ぼくの脳髄を横切ると、どのスペクトルも屈曲してしまう。
まっすぐなものがなにもなくて、リーマン幾何学みたい、なんちて。
身体ごとぶつかってくる、魂ごと、まるごとぶつかってくる、あなたの「真っ直ぐさ」に、ぼくは怯えていたのだと、いまは判る。
モニは、あらゆる障害を文字通り乗り越えて、まるで障害など何もなかったかのように、まっすぐに、ぼくに向かってきた。
ものすごい勇気。
投企。
男などには、到底もちようがない真摯で、あなたは生きてきた。
そうして、モニは、ぼくをすっかり幸福にしてしまった。
頭のてっぺんから爪先まで。
頭のてっぺんから爪先まで!
それが、どんなにすごいことか、きみにもわかるかい?
モニ
バクもヒポポタマスも、お祝いする。
サイも象さんも、祝杯をあげる。
ラクダさんたちも空に向かって祝辞を述べていなないている。
空想上の動物たち、いっせいに現れて、モニのために、お祝いの言葉を述べている。
モニ、わしのなかに渦巻き流れよ。
永遠に流れ落ちる水のように。
渦巻き流れよ。
(小さな人々と一緒に)
モニさん、誕生日おめでとう。
今年もまた、モニさんが生まれた日に一緒にいて、祝杯をあげられることの幸福を思います。
小さな人々と一緒に