不動産を調査した結果、違反建築物もしくは既存不適格建築物と判明した場合は不動産の価値が大きく下がるかもしれない。
違反建築物とはなにか。また既存不適格建築物とはなにか。違反建築物と既存不適格物件では意味合いが大きく異なる。
ここでは、違反建築物・既存不適格建築物とその違いについて説明する。
違反建築物とは?
違反建築とはそもそも法令に違反して建築されているものであり、違反建築している物件を違反建築物という。
建ぺい率や容積率の制限に違反したもの、敷地の接道義務に違反したもの、違法な増改築、用途変更を行ったものなど、建築基準法令の規定または法律の規定に違反した建築物は、違反建築物となる。特定行政庁は違反建築物の建築主や工事の請負人等に対して、当該工事の施工の停止を命じ、または相当の猶予期限をつけて、当該建築物の除却、移転、改築、使用禁止、使用制限等の措置をとることを命ずることができる。
(建築基準法第9条より)
敷地の接道義務に違反したものとは、建築基準法上の道路に接していないということであり、建物を取り壊して再建築することは不可だ。(再建築不可物件)
他にも以下の様な例が該当する。
例) 建ぺい率60%・容積率100%の敷地に建築された建物
例2) 建築計画概要書では、3階建の木造戸建として建築確認許可が降りて建築計画概要書にもそのように記載されているが、登記簿謄本を見ると地下室の記載があり、実際にある。検査済は取得していない。 例3) マンションの1階部分に、容積率不算入の駐車場を造るということで建築確認・検査済を取得したが、その後駐車場部分を居室に造り替え、その居室を分譲している。 |
後述するが、違反建築物は住宅ローンを利用できないケースが多い。つまり売却するときには、現金購入できる顧客に限定される。加えて、違反建築していると理解して購入する買主が条件になるので、さらに限定されてしまい、売却する際の資産価値は大幅に下がるケースが多い。
既存不適格建築物とは?
既存不適格とは、当初は適法であったがその後の法改正や指定変更などにより、現在では適法ではないことをいい。既存不適格の物件を既存不適格建築物という。
既存不適格建築物とは、建築したときには適法であった建築物が、その後の法改正や都市計画の変更等により、現在の建築基準法令の規定に適合しなくなったものをいう。既存不適格建築物は違反にはならず、原則としてそのままの状態で存在が認められる。ただし、一定規模を超える増・改築を行う場合には、不適格な状態を解消し、建築物全体が建築基準法令の規定に適合するようにする必要がある。
(建築基準法第3条第2・3項より)
例えば以下の様な例が該当する。
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見落としがちで、最近多い既存不適格のケースは以下の通りだ。
A 高度地区における最高高さ制限による既存不適格
都市計画の見直しにより、最高高さ制限を定めた高度地区が平成16年度より指定されている区域がある、その区域に該当している平成16年度以前に建築された既存の建築物は、高さ制限に抵触している建物も少なくない。
高度地区の制限がある不動産の物件調査をする場合、その物件の建築計画概要書などを取得した上で、①現在の建物が既存不適格に該当するかどうか、②再建築の際に同規模の建築物が建てられるか、なにか特例措置はないのかを確認した方が良い。
B 建築後にできた地区計画による既存不適格
建築後に新たな地区計画が定められる場合がある。現存している建物がその地区計画の規制に抵触しているときには既存不適格物件となる。
再建築の際には、地区計画の規制に沿った建物にしなければならないため、現在と同じ用途や規模の建物が建たない可能性がある。地区計画が決定された時期にも注意して調査する必要がある。
違反建築と既存不適格の違い
どちらも再建築時に同規模の建物が建たないという点については同じだ。しかしそもそも違法である物件と建築当初は適法だったが、現行の法令や条例等に照らすと適法ではない物件とでは大きな違いがあり、違反建築の場合は、金融機関から「住宅ローンを利用できない物件」と判断されるケースが多い。法律に沿っていない物件を担保とすることや違法な物件について正確に価値を算出することが難しいからだ。ただし、既存不適格の場合であっても、建築当時と現在の規制数値とがあまりに異なっていると、住宅ローンが否認されるケースもあるため、状況に応じて銀行等の金融機関へこの物件で住宅ローンを利用できるかについて事前確認等を行うと良い。