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【海保卒業式】
「国民が諸君を頼りにしている」 安倍首相の海保学校卒業式での訓示全文
「鎖国日本の中でいち早く海の重要性に着目した林子平がその著書『海国兵談』の中で海の守りを強化すべきと訴えたのは220年ほど前のことであります。欧米の船舶が日本へとたびたび訪れるようになった。その現状にこう警鐘を鳴らしました。『江戸の日本橋からオランダまで境なしの水路なり』。日本の四方を取り囲む海は技術進歩の前には、もはや外敵を防ぐとりでとはならない。江戸から中国、ヨーロッパまで簡単に行き来できる時代になった。海の守りを固めなければならない、と書きました。しかし、鎖国政策を堅持する江戸幕府はこうした現実から目を背け、時代の変化に対応できず、幕府は半世紀後、滅亡することとなります」
「現代においても、私たちが望むと望まざるとに関わらず、テクノロジーは日々、進化している。国際情勢も大きく激変している。こうした時代の変化に、私たちは常にしっかりと目をこらしていかなければなりません。海の底に眠るさまざまな資源は可能性を秘めている。海洋権益を守るため、調査は極めて重要であります。豊かな海を守るためには、海洋環境を保全する努力を怠ってはなりません。グローバル化が一層加速する中で、自由な海、平和で安全な海を守るためには国際的な協力を深めることが不可欠であります。今も世界の大動脈、アデン湾では海上自衛隊とともに、海上保安官の諸君が海賊対処に汗を流してくれています。東南アジアの国々の海上保安機関との2国間協力も、マラッカ海峡から南シナ海、東シナ海へと延びる海上路の安全を確保するため、欠かすことはできません。平和で豊かな海を守る。海上保安庁の役割は、これからも変化し、その重要性を一層増していくことでありましょう。しかし、それは時代の要請であります。卒業生諸君、諸君には、どうか広い視野を持ち続けてほしい。それぞれの現場において、柔軟な発想で時代の変化に即応し、全力を尽くしてほしいと思います」