プロ野球の名門・巨人の賭博問題が波紋を広げている。昨年の3投手に続き新たにもう1人が関与を告白した。さらに自チームの試合の勝敗に日常的に金銭のやりとりをしていたことも明らかになった。
シーズンの開幕が25日に迫るタイミング。野球界は全ての球団の調査を徹底的に行い、違法行為はもちろん疑わしい悪習を一掃する努力が求められる。
巨人では昨年10月、球団や日本野球機構(NPB)の調査で3人が野球賭博を行っていたことが発覚。今月になって週刊誌の取材をきっかけに、当初は否定していた1軍投手が2年前、8〜9試合でそれぞれ10〜15万円を賭けていたことを認めた。
事態の根深さが明らかになり、巨人は球団の最高顧問、オーナー、会長の3人が引責辞任するまで追い詰められた。しかしファンからすれば昨秋の対応が甘すぎたのではないかと疑念を抱かざるを得ない。
NPBの熊崎勝彦コミッショナーは球界の体質改善へ強い決意をみせた。2月のキャンプでは全12球団を巡回し研修会を実施。今月には選手・スタッフ向けの小冊子作製や選手間の多額の賭け事禁止など、再発防止策を決定した。その矢先の出来事だった。
それに追い打ちをかけるように、今度は巨人の選手間で金銭授受が行われていたことまで判明した。
そのやり口とは…。試合前の円陣で「声出し」を担当した選手は、チームが勝てば他の選手から「ご祝儀」を5千円ずつ受け取る。逆に負けた場合は全員に1千円ずつ支払うもの。「験かつぎ」として4年前から始まったという。
昨年11月の調査報告書では「野球協約に違反しない行為」と見なされた。今回の発表でも巨人側は「少額であり八百長などの原因になると考えられない」と説明している。
阪神や西武なども同様のことを行っていた。一般人からすればあまりに非常識な金銭感覚である。一連の賭博行為の背景にこうした問題意識の低さがあった可能性も高い。
野球賭博には反社会的勢力の影がちらつく。当の選手は八百長には関係していないと言うが、誘惑は常に待ち受けている。巨人OBのスター選手が覚せい剤に手を染め、警察は同勢力との関係も調べている。
大相撲では、2010年に野球賭博が表面化した翌年に八百長疑惑が浮上。3月場所は中止され、5月場所は技量審査場所としてテレビ中継もなし。相撲協会は力士と一丸となって土俵際の危機を乗り越えた。
プロ野球界も今回の状況を存亡に関わるピンチと受け止め、認識を改める必要がある。また巨人の不祥事を他山の石とし、全球団が襟を正す覚悟を示すべきである。形式的な改善でお茶を濁すことは許されない。ファンは注視している。