……、すごい訓示だ。
十訓を読めばわかるように、それまでの「産まれた子ども」にフォーカスした政策から、「国に必要な子どもを産む」政策に転換した。国のために「いい人材」を産むことが、女性の“重要な営み”として、奨励されたのだ。
でも、これって……。はい、そうです。似たような政策が、現代の日本でも掲げられた。
「少子化危機突破タスクフォース」。この組織の存在を覚えているだろうか?
今から3年前に政府が立ち上げたもので、議長は森雅子少子化担当相(当時)だ。批判が殺到した「女性手帳」、若年層の恋愛調査の実施、婚活イベントへの財政支出、若年の新婚世帯の住宅支援、などなど、
「さっさと女性は結婚し、子供を産み、仕事もしなさい! そのためには、婚活もサポートをしますよ」
的政策を次々と展開。
いわば、“結婚十訓”の現代版だ。
以前、「女性は子供を産む機械」と柳沢伯夫・厚労相(当時)が発言し、総スカンになったことがあったが(そのときも実際には後日、その前後の文言が公表され、擁護派が現れた)、やろうとしていることは同じ。
わずか2.9ポイントしか違わない
そうなのだ。今、起きている「子ども、女性、仕事」を巡る問題の根っこには、戦争時の「お国のために」というプロパガンダが息づいている。
時代は変わり、家族のカタチも、働くカタチも、すべて戦時中とは全く違うのに、当時の「理想」を追いかけているだけで、それを可能にする環境を整備しない社会。誰も、「お国のため」なんて考えている人はいないのに、あたかもそういう人がいるかのような幻想が蔓延していること。そういったいくつもの「理想と現実のギャップ」が、さまざまな問題を引き起こしている。そう思えてならないのである。
先日、「妊娠等を理由とする不利益取扱い及びセクシュアルハラスメントに関する実態調査」の結果がリリースされたのだが、そこには「理想と現実のギャップ」のカタチが示されていた(独立行政法人労働政策研究・研修機構)。
マタハラなど妊娠等を理由とする不利益取扱い等の経験率は 21.4%で、企業規模が大きいほど経験率が高い。また、雇用形態別には派遣労働者の経験率が45.3%と極めて高いことがわかった。
働く女性の非正規率は極めて高く、20代後半~30代前半で4割。30代後半になると5割を超えるというのに、2人に1人がマタハラを経験しているとは……。この実態をどんな言葉にしたらいいのか。
さらに、マタハラは、上司だけではなく同僚からも、男性だけではなく女性からも行われていて、マタハラの行為者を性別に見ると、男性 55.9%、女性 38.1%(不明6.0%)という少々ショッキングな数字が示された。
具体的には、
・「休むなんて迷惑だ」「辞めたら?」などの発言をされた (47.0%)
・妊娠等を理由とする不利益取扱い等を「示唆するような発言をされた」( 21.1% )
・賞与等における不利益な算定(18.4%)
・雇い止め(18.0%)
・解雇(16.6%)
などなど、なんだかなぁという回答で占められたのである。