かつての敵国・キューバ 88年ぶり歴史的訪問
オバマ氏、カストロ国家評議会議長と会談へ
【ハバナ和田浩明】オバマ米大統領は20日、現職の米大統領として88年ぶりにキューバを訪問した。半世紀以上断交状態にあった両国が、2014年12月に関係正常化方針を発表してから約15カ月。オバマ氏は、社会主義国として米国と対立したかつての「敵国」への歴史的訪問によって、両国関係の発展にかける強い意欲を内外に示した。
オバマ氏は21日に首都ハバナでラウル・カストロ国家評議会議長と会談し、共同声明で関係正常化の継続を確認する。22日にはハバナの国立劇場でキューバ国民向けに演説し、国営テレビで中継される。さらに、反体制派を含む市民らと懇談しキューバの民主化を促す。野球の米大リーグとキューバ国家チームの試合も観戦する。
キューバ訪問の最大の目的は、大使館の再開や経済制裁の緩和など関係改善に向けた流れを「逆戻りできないようにする」(ローズ米大統領副補佐官)ことだ。11月の大統領選でキューバに強硬姿勢を示す候補が勝利した場合も考慮している。キューバ側に民主化や政治的自由の拡大などを促す狙いもある。キューバ側は経済制裁のさらなる緩和や人的、経済的な交流拡大などを求めるとみられる。
オバマ氏はキューバ訪問後、22日に南米アルゼンチンへ出発する。米国の対キューバ強硬姿勢に反発し、中南米での「米国の孤立」を図ってきた中南米諸国との関係改善も目指す考えだ。
大統領一家を乗せた専用機は20日午後(日本時間21日早朝)、ハバナのホセ・マルティ国際空港に到着。直前に降り始めた雨の中、オバマ氏はミシェル夫人と2人の娘とともにタラップを下りながら、笑顔で何度も手を振った。短文投稿サイト「ツイッター」では「キューバ、元気かい? 今到着した。キューバの人々と直接会い、話を聞くのが楽しみだ」と発信した。
オバマ氏は出迎えのロドリゲス・キューバ外相と笑顔であいさつを交わした後、市内のホテルでディロレンティス米代理大使ら大使館職員らと面会。1928年に最後にキューバを訪問したクーリッジ大統領は軍艦で3日を費やしたが、「自分は(空路で)3時間だった」と述べ、両国関係の接近ぶりを強調した。
オバマ氏はまた、世界遺産のハバナ旧市街を視察し、キューバとの関係正常化交渉にローマ法王とともに関与したカトリック教会のオルテガ・ハバナ大司教を表敬訪問した。会談場所となった大聖堂の周辺には強い雨にもかかわらず大勢の市民や観光客が詰めかけ、オバマ氏が手を振ると大きな歓声で応えた。
オバマ氏の訪問には、超党派の上下両院議員約40人や米企業家らも同行した。