休日なので笑い話から。♪かあさんが夜なべをして手袋編んでくれた♪で始まる「かあさんの歌」。その♪せっせと編んだだよ♪の部分を「節制と安打だよ」と思い込んだ人がいたそうな。勘違いは誰にでもあるが、よほどの野球好きだったか。直木賞作家向田邦子さんの「編む」というエッセーで見つけた▼「節制と安打」といえば、思い浮かぶのは米大リーグ・マーリンズのイチロー選手ではないか。球場入りは他の選手より1時間早い。体を入念にほぐしてゲームに臨むためだ▼口にするものも徹底している。おなかを壊さぬようにレストランで出される水には手を付けず、アルコールは「汗のかき方が違ってくるから」とあまりたしなまない▼野球選手の食事風景はチームメートと一緒のにぎやかなものを想像しがちだが、あくまで静かな雰囲気にこだわる。「リズムが狂うから」という。小西慶三著「イチローの流儀」(新潮文庫)に学んだ▼何から何までプレーに直結している。だからこそメジャーの野手で最年長となる42歳でもグラウンドに立てるのだろう。大リーグ通算3千本安打まで65本。1日でも早く達成してほしい▼さて、日本球界だ。開幕間近というのに、カネ絡みの悪い話ばかり聞こえてくる。情けない。ここはイチロー選手にならい「心の節制」が必要だ。それができなければ、野球離れが加速する。こちらは笑えない。2016・3・21