第4の矢は賃上げ@IMF
IMF(国際通貨基金)のスタッフが、日本に「第 4 の矢を放つ準備を」求めています。第4の矢とは賃上げです。
http://www.imf.org/external/japanese/np/blog/2016/031416j.pdf
日本がデフレから決別するには賃金上昇が必要である―これは全ての人が同意すると ころです。1995 年から正社員の賃金は僅か 0.3%しか上昇していません!たとえば、 利益が史上最高を更新したトヨタ自動車が 2015 年に決めた基本給の引き上げは 1.1% です。また経団連に加盟する 219 社の平均は 0.44%にすぎません。和製英語で「ベー スアップ」と呼ばれる基本給の上昇は久しく実現していないのです。・・・
なぜ日本が賃金デフレに陥ってしまったかについてはこう的確に分析しています。
IMF スタッフの行った分析は、賃金が伸びなかったことには構造的な原因があり、そ れが日本を長期的なデフレに落ち込ませた可能性があることを示しています。第一に、 大半の労働者は終身雇用の下で働いており、ほとんど転職することはありません。終 身雇用と引き換えに、被雇用者は賃上げ要求を控えるようになっています。その結果、 労働市場が逼迫しても賃上げにつながらないのです。さらに、現在、労働者の多くを 占める 37%の人々が非正規の雇用契約の下で働いています。これは他の同様の国や地 域と比べ非常に高い比率です。1980 年代に円が急上昇し、企業は競争力を取り戻すた め必死で海外に生産拠点を移し、大幅に賃金の低い非正規労働者ばかりを採用し始め ました。同時に、労働組合の組織率は低下し、労働組合の賃金闘争における交渉力は ほとんど失われてしまいました。
ではどうするべきか?アベノミクスの金融の矢はその役割を果たせなかったといいます。
・・・アベノミクスが日本に根付いていたデフレ・マインドを払しょくしようとしたことは 正しい判断でした。金融政策の矢は、インフレ期待を 2%に引き上げ賃金上昇とイン フレがともに起こるメカニズムを作ることを目指しました。しかし、これは困難を極 めました。企業も労働者も未来を見ず過去を見て見通しを形成しているようだからで す。結果、全ての人にプラスになるはずであるこうしたメカニズムの構築でその役割 を果たすことができていません。
また、最低賃金もその効果は限定的です。
最近では、安倍首相は、最低賃金の引き上げで指導力を示しました。しかし、この恩 恵を直接受けるのは労働力人口の 10%程度で、その効果はほとんど期待できません。 また残りについてもモラルに訴えるとしても効果を期待できるか不確かです。
そこで、第4の矢として、企業に直接介入するかたちでの賃上げ政策を唱道します。
・政府は、収益を上げている企業に対しては、少なくとも 2%プラス生産性の伸 びの賃金引上げを確かにするため、コーポレート・ガバナンス改革で成功した 「順守か、説明か」という原理を導入することができるのではないでしょうか。
・現在行われている賃金引上げのための税制上の優遇措置を強化することもでき るかもしれません。
・あるいはさらに一歩踏み込んで、過剰な利益の伸びを還元しない企業に対し税 制上の懲罰的措置を設けることを考えることもできるでしょう。
・前向きな方法で公的セクターが賃金を上げ、手本を示すことも選択肢のひとつ です。
結構踏み込んだことをいっています。念のため言っておけば、これは労働組合でもなければILOでもなく、あの(!?)IMFのスタッフが言っているんです。
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