国連による制裁対象のリストに上がっている北朝鮮船舶が17日に韓国の領海を通過したが、韓国政府は何の対応も取っていなかったことがわかった。この船舶は15日に北朝鮮・平安南道の南浦港を出港し、17日に全羅南道の麗水と蔚山広域市の沖合を通過したが、韓国海洋警察は停戦などの指示を出すことなく、ただ監視するだけだった。今月3日に国連安保理が北朝鮮に対する制裁決議を採択したことを受け、韓国政府は8日に北朝鮮船舶などに対する独自の制裁を発表し、また17日には米国も独自制裁を開始した。ところが制裁対象に含まれているはずの北朝鮮船舶が、韓国の領海で何の制止も受けることなく通過していったのだ。
問題の船舶に何の対応もしなかったことについて韓国政府は「船舶はモンゴル籍で、国際法上、平和と安定を害しない限り、自由航行ができる無害通航権が保証されているためだ」と説明しているが、これは単なる弁解に過ぎない。この船舶はモンゴル籍にみせかけた北朝鮮船舶であることに間違いなく、国連による制裁の対象になっている31隻の中の1隻で、なおかつ資産凍結の対象でもある。しかも国連決議によると、北朝鮮船舶が禁止貨物を運搬していることが疑われる時は、停船命令を出し臨検を行うことが定められている。問題の船舶には石炭が積まれていたようだが、実際はその下に何があるのかわからない。北朝鮮はつい先日キューバにおいて、砂糖運搬船の中に戦闘機を隠していたところを摘発された。哨戒艦「天安」沈没を受け韓国政府が北朝鮮に下した5・24措置も、全ての北朝鮮船舶に対して韓国領海の通航を禁止しており、また韓国が独自に行っている海運制裁では、国籍を偽装している船舶に対する制裁を強化する条項もある。そのため韓国政府が今回、問題の船舶に何の対応も取らなかったことは、自分が定めた制裁に自ら反したことになる。
韓国外交部(省に相当)は「17日午後に招集された国家安全保障会議(NSC)において、禁止品目の運搬に関する証拠が不十分であることから、問題の船舶に対しては監視だけを行うことを決めた」と後になって説明した。しかし韓国政府は国連制裁とは別に5・24措置も実行に移さねばならないため、外交部のこの説明は今回北朝鮮船舶を放置した理由としては不十分だ。またもし政府のこの説明を額面通り受け取るのであれば、今後北朝鮮船舶が韓国の領海を通過しても、これをただ見ていることしかできなくなる。ちなみに今回とは別に、今月4日にも国籍を偽装した北朝鮮船舶が済州島の北にある楸子島沖合を通過したことがわかっている。
韓国軍と海洋警察は今月2日と16日、北朝鮮船舶に対する停船と臨検の訓練を行ったが、韓国政府による今回の対応を目の当たりにすると、この非常事態の中で行われたこれらの訓練も、結局は見せるためだけの単なるショーに過ぎなかったと言わざるを得ない。韓国政府は中国に対し北朝鮮への制裁に加わるよう強く求め、また国連決議が採択された後はこれを実行することの重要性を何度も強調してきた。しかし制裁の抜け道は、実は韓国国内にあったのだ。