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 オバマ米大統領が20日午後(日本時間21日早朝)、現職の米大統領として88年ぶりにキューバの首都ハバナに到着した。21日午前(同22日未明)には、ラウル・カストロ国家評議会議長との会談に入った。昨年7月に54年ぶりに国交回復した両国の新たな関係を切り開く「歴史的な訪問」(オバマ氏)と位置づける。

 オバマ氏は21日、ハバナ市内の革命宮殿でカストロ議長による歓迎式典に出席。2人は冒頭、笑顔で握手し、言葉を交わした。続く首脳会談では、米側はキューバの人権状況の改善などを求める見通しだ。これに対し、キューバ側は米軍のグアンタナモ基地の返還を求めるとみられる。

 22日までの滞在中、オバマ氏はハバナの国立劇場でキューバ国民向けに演説する。この演説は、国営テレビを通じてキューバ全土に中継される予定だ。また反体制派を含む市民代表らと面会したり、米大リーグのタンパベイ・レイズ(フロリダ州)とキューバ代表の試合を観戦したりする。ただホワイトハウス高官によると、ラウル氏の兄でキューバ革命を主導したフィデル・カストロ前議長との会談は予定されていない。

 任期が1年を切ったオバマ政権にとって、半世紀以上敵対したキューバとの国交回復は大きなレガシー(遺産)。今回の訪問を通じて、両国間の人や企業の交流を軌道に乗せ、キューバの経済改革や情報統制の緩和、人権問題の改善などを促す狙いがある。

 訪問には、ミシェル夫人と2人の娘のほか、ケリー国務長官やプリツカー商務長官、超党派の議員団と企業関係者が同行している。

 現職米大統領のキューバ訪問は、1928年にハバナでの国際会議に参加したクーリッジ氏以来。両国はキューバ革命後の61年に国交を断絶、翌62年には米国とソ連が核戦争の瀬戸際に立つ「キューバ危機」に至った。しかしオバマ政権は融和路線を採り、2014年12月に国交正常化交渉入りを発表。15年7月20日に国交を回復した。(ハバナ=峯村健司)