2016年に入ってから精力的にStaccalのアップデートしており、1月〜3月の3ヶ月で計8回のアップデートをリリースしました。
対して2015年のアップデート回数はというと・・・たったの2回でした。
2015年が他の業務で時間が取れなかったというのが大きな要因ですが、2015年のアプリの利用動向を見返してみたところ非常にショックな事実が判明しました。
上図は2015年の一年を通してのデイリーのアクティブユーザー数ですが、ほぼ横這いという結果でした。毎日多くの方にダウンロードしていただいているのですが、1年を通して殆どDAUに変化がない、つまりダウンロードされた分だけ離脱しているという事になります。
1. 現状分析
2015年の結果を踏まえ、まずは現状分析を行いました。いきなり全てを把握するのは難しいので、幾つかの仮説をターゲットに情報収集を行います。
1.1. クラッシュ率の把握
どれだけの確率でアプリがクラッシュしているのか。これが高すぎる様だと当然ユーザーの離脱率は高くなりそうです。クラッシュ率の把握にはFabric(旧Crashlytics)を使いました。Fabricを使うと以下の様にアプリのクラッシュフリー率と、実際にクラッシュした事象の回数や条件、スタックトレース等を参照する事が出来ます。Fabricの導入はこちらの記事が参考になりました。
→ [Fabric] Crashlytics 入門 #1 まずは導入してみよう
まずはFabricを導入した結果、クラッシュフリー率は98.7%でした。1000人中、13人くらいがクラッシュに遭遇している事になる為、品質的にまだまだ改善の余地がある事が判りました。
1.2. 各機能の利用率の把握
Staccalは色々と機能を盛り込んでいるのですが、なるべくアプリがシンプルに見えるように設定に押し込んでいる為どれだけのユーザーが実際にどの機能を利用しているのかGoogle Analyticsで各所の情報収集を行いました。以下、抽出した利用率のハイライトです。
(1) カレンダービュー(全13種類)
- 月スタンダード:30.36%
- 週グリッド:14.13%
- 日ボックス:15.35%
- 月バーティカル:15.01%
- 週バーティカル:8.26%
- リマインダー:8.57%
- 日バー:2.27%
- 検索:0.97%
- 週その他5種類:5.08%
まずは13種類あるカレンダービューの利用率ですが、上記の様な比率になりました。トップは「月スタンダード」でカレンダーアプリで標準的な一ヶ月を俯瞰できるフォーマットで全体の30%になります。
上位の6種類はデフォルトで設定されているカレンダービューで、そこから下は設定からカスタマイズしないと利用出来ない機能になります。利用率の低さから、設定内にこれらの機能がある事に気付いていないユーザーが多い事が予想されます。
(2) イベント入力方法
- 簡易入力モード利用率: 38.39%
- スマート入力利用率:1.02%
今回把握した利用動向の中で最も衝撃的だった数値です。Staccal2の目玉機能であり、自分自身イベントの入力にはこれしか使っていないという程の便利機能なのですが、なんと全体の1%程度の人にしか使われていませんでした。
- ウィジェット登録率:44.15%
Todayウィジェットの登録率は44%で半分に満たない状況でした。ウィジェットの存在に気付いていないユーザーが多いと考えられるので改善の余地がありそうです。
- チュートリアル開始率:33.9%
- チュートリアル拒否率:62.1%
- チュートリアル完了率:25.2%
- チュートリアル途中離脱率:74.8%
これも非常に残念な内容でした。ジェスチャー等ややトリッキーな操作があるアプリである為、操作方法を覚えてもらう為にチュートリアルを丁寧に作っていたのですが、チュートリアルを開始するユーザーが33%、その中で最後までチュートリアルを完了するユーザーが25%、という事でインストールしたユーザーのうち約8%程度しかチュートリアルの最後まで辿り着いていないという事実が判りました。
2. 仮説と対策
把握した状況を踏まえ、数値改善の為の仮説を立てます。この3ヶ月で実施した内容と結果をご紹介します。おおまかにこの3ヶ月のアップデート内容を記します。
(1月15日) バージョン2.2.0
アプリ全体のデザイン・レイアウト変更、と同時に各種ログを追加。
(1月16日) バージョン2.2.1
バージョン2.2.0に致命的な不具合があった為、特急申請。翌日公開。
(1月22日) バージョン2.2.2
バージョン2.2.1から得られたCrashlyticsの不具合の対策。併せてログ情報追加。
(1月30日) バージョン2.2.3
Crashlyticsの不具合を更に解消。
(2月17日) バージョン2.3.0
アプリ全体のインタラクション・デザインを改善。スマート入力を大幅に改善。
アプリ全体のインタラクション・デザインを改善。スマート入力を大幅に改善。
(3月9日) バージョン2.3.1
スマート入力を更に改善。Crashlyticsの最大の不具合を解消。
(3月10日) バージョン2.3.2
バージョン2.3.1で致命的な不具合があったので特急申請。即日公開。
バージョン2.3.1で致命的な不具合があったので特急申請。即日公開。
(3月20日) バージョン2.3.3
バージョン2.3.1で混入した不具合を解消。
バージョン2.3.1で混入した不具合を解消。
2.1. クラッシュフリー率の改善
ユーザーのストレスに直結する数値と考えられる為、最重要指標として98.7%だったクラッシュフリー率を99.9%まで上げる事を目標にしました。Fabricを通じて少しずつクラッシュ要因を排除していき、3月中旬の現在で99.8%まで改善する事が出来ました。目標までもう少しです。
2.2. スマート入力の利用率の向上
全体の1%しか利用されていないスマート入力ですが、必ずユーザーの利便性に直結しており、これが普及すればユーザーの離脱率が低減できると仮説を立てました。従いスマート入力の改善として利用率を10%まで向上する事を目指しました。
8回のアップデートのうち、半分以上でスマート入力の機能改善を実施し結果として1%から4%弱まで向上しました。目標値の10%まで遠いですが順調に改善しています。
2.3. ビュー/セッションの低減
スマート入力の普及率が上がるとイベントの詳細入力がを行う割合が減り、結果として起動毎のビュー数が低減し、セッション毎のページビューがが下がると仮説を立てました。カレンダーアプリという特性上、閲覧するビューは少なく1回1回のセッションが短くなる事が好ましいと考えた為です。
結果として、セッションあたりのビュー数は平均3.7%程度とあまり変化がありませんでした。スマート入力の利用率がまだあまり高くない為、もう少しこの数値を眺めていきたいと思います。
3. 結果
1月〜3月はクラッシュ率の低減とスマート入力の利用率の向上にフォーカスした為、チュートリアルなど他の改善点の施策が出来ていませんが、3ヶ月間の成果としてデイリーのアクティブユーザーが以下の様に改善しました。なんと2015年のアクティブユーザー数に対して、240%ほど増える結果となりました。ただこのグラフの急激な数値の上がり方を見ると、単に今まで離れていたユーザーが戻ってきてくれただけとの見方も出来るので、今後の施策と結果を見ていく必要があります。
4. 今後の課題
今後は当初の目標通り
- クラッシュフリー率:99.9%
- スマート入力使用率:10%
を達成する事に併せ
- チュートリアルの完了率の向上
- Todayウィジェットの利用率向上
- 他カレンダービューの利用率向上
に対する施策を実行し、ユーザーのアクティブ率の改善に繋げていくという事を引き続きやっていきます。
この様に現状を正しく把握し仮説を立て、改善策の結果を見返す事の重要さを改めて認識しました。今後もユーザーの皆様の動向を分析しながら効果的にPDCAを回していくので、また折を見て経過を共有したいと思います。
おまけ
iTunes Connectでは昨年からApp Analyticsが利用できるようになり、AppStoreのアプリの閲覧回数を参照できるようになりました。AppStoreの閲覧回数とダウンロード数を突き合わせるとコンバージョン率が判り、以下のような傾向が見えました。
(1) AppStoreトップに掲載されるとコンバージョンが低下する
上図のオレンジの部分がたまたまAppStoreのトップにおすすめアプリとして掲載された期間なのですが、CVRが著しく落ちています。これはStaccalに興味の無いユーザーがかなりの数流入する事によるものでしょう。
(2) アップデートをするとコンバージョンが低下する
Staccalに限った事かもしれませんが、アップデート(グラフの緑丸の部分)をすると毎回CVRが低下します。グラフに表わしていませんが、ダウンロード数も底を打ちます。これはアプリのレーティングがアップデートのタイミングでチャラになり、最新バージョンのレーティングが反映されるまで1日程度かかる為と思われます。全てのバージョンのレーティングも4.1程度とそれほど悪くは無いのですが、過去にいただいた★1のレビューで役に立ったと票を集めたものがレビューの先頭を占めている状況な為、あまり心証が良くないのではないかと思います。こればかりは回避しようが無いようです。。
ともあれ、アプリのレーティングとCVRは強く関係しているという事が見受けられます。
今後AppStoreのプレビュー(動画)などを利用した場合、CVRにどの程度影響するかなども試してみたいと思います。