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Written by 長尾義弘(ながお・よしひろ) 13記事

楽しく学ぶ「お金」の教養講座

なぜ人間は「確率を理解せずに」行動するのか?

貯蓄,マネープラン
(写真=Thinkstock/Getty Images)

巷で人気の宝くじ売り場。テレビ番組で長蛇の列が紹介されているのを見かけることがあります。きっと、みなさん「自分は」宝くじに当たると期待して買うのでしょうね。でも、1等の当選確率は1000万分の1です。前後賞を合わせたとしても、1000万分の3です。たとえこのような絶望的な確率でも、どうして「自分は」当たると期待できるのでしょうか。

タバコを吸っている人は、タバコを吸わない人に比べて肺がんになる確率は、4.4倍に上昇すると言われています。肺がんになった人のうち、男性の68%、女性の18%が喫煙者だという調査結果もあります。でも、多くの喫煙者は「自分だけは」その4倍の確率には、当てはまらないと信じてタバコを吸っています。

この確率に関する2つのケース。何だか変な感じがしませんか?

本当の確率と「ココロの確率」は違っている?

そこで質問です。あなたは、AとBどちらのクジを選びますか?

【パターン1】
A:100%の確率で10万円
B:10%の確率で25万円、89%の確率で10万円、1%の確率で0円

【パターン2】
A:11%の確率で10万円、89%の確率で0円
B:10%の確率で25万円、90%の確率で0円

【パターン3】
A:100%の確率で1億円
B:10%の確率で2億5000万円、89%の確率で1億円、1%の確率で0円

【パターン1】では、Aを選んだ人が多いのではと思います。Bの中には「1%」の確率で0円があるからでしょう。この「1%」が絶対に安全ではないと判断したのではないでしょうか。

【パターン2】も、AとBの確率の差は、同じ「1%」です。もともと89%というリスクの高いところですので、そのリスクが1%ぐらい上がってもあまり関係ないと感じるかもしれませんね。数字では同じ「1%」なのにですよ。不思議ですね。

【パターン3】では、かなり多くの人が、Aを選んだのでは無いでしょうか? こちらも【パターン1】と同じ「1%」の確率なのですが、金額が1億円になると、同じ確率でもとらえ方が違ってくるのではないでしょうか。

日常的に経験する「アレのパラドックス」

上記の実験は、1988年にノーベル経済学賞を受賞したモーリス・アレが行ったものです。この実験では「0から1%の変化には過剰に反応するが、30%から31%への変化には反応しない」という結果が得られています。これを「アレのパラドックス」といいます。

つまり、人は滅多に起こらないことに異様に心配とか期待はするけれど、良く起こることに対しては、反応が鈍いという感じでしょうか。

以前、秋葉原の通り魔事件で、その場に居合わせた通行人が巻き込まれました。そもそも通り魔事件というのは、確率の低い事件です。しかも、その場にいたというのはもっと確率が低いことです。しかし、その事件が報道された後、人混みを歩くことが怖くなったり、過剰に心配することはなかったでしょうか?

実際に、通り魔事件に巻き込まれるという可能性はゼロではありませんが、かなり低い確率です。しかし、それが自分に起こると思ってしまうのです。宝くじが当たるのと同じですね。
これも「アレのパラドックス」です。交通事故によって死亡する確率よりも、低い確率の飛行機事故を怖がってしまうのも「アレのパラドックス」が働いています。

保険は必要?「もしも」の本当の確率を知っていますか?

保険は「もしも」の場合とよく言いますが、「もしも」の確率というのはどのくらいか分かりますか? 人は確実にいつかは死にます。これは「もしも」ではありませんね。問題は、いつ死ぬかということです。

20代の死亡率は0.4%です。その死亡原因の約半数は、自殺です(厚生労働省「人口動態調査」平成26年)。では、70〜74歳の死亡率は? 答えは14.7%です。その死亡原因の約半数は癌です。

生命保険は、年齢が低いと保険料も安いですね。年齢が高くなるにつれ、保険料も高くなります。当然ですね。死亡率が上がるからです。

年齢が若いうちは、死亡率が高くないので、結婚をして子供がいなければ生命保険に入る必要はないと思います。でも、実際には「もしも」病気になった時の入院費用・治療費を心配をする人が非常に多いですね。

現実問題として、医療保険に入っている人は本当にたくさんいますが、実は治療費というのはそんなにかかる確率は低いし、実際にかからないのです。入院日数の平均は30日ですが、その半数は1週間以内に退院されているのをご存知でしょうか? 入院をしても、その60%が手術をしていないのです。

医療保険で受け取る金額というのは、入院給付金の数万円というのが一番多いケースです。その数万円を受け取るために何十万円もの保険料を払っているということになります。実際、健康保険は3割負担ですが、高額療養費を使うと自己負担分はどんなに多くでも9万円以上はかからないようになっています(標準月額28万〜50万円の場合)。

医療保険が、必要な場合とは、どんな場合かをよく考えて見てください。入院・手術の費用に対して、必要以上にリスクを感じていませんか? ちょっと横道にそれましたが、実際の確率、それに実際にかかる費用などを理解することで、本当に必要なのか、どんな場合に必要なのかを考えて見てください。医療保険というのは、あまり必要ではないというのがお分かりでしょうか?

長尾義弘(ながお・よしひろ)
NEO企画代表。ファイナンシャル・プランナー、AFP。徳島県生まれ。大学卒業後、出版社に勤務。1997年にNEO企画を設立。出版プロデューサーとして数々のベストセラーを生み出す。著書に『コワ~い保険の話』(宝島社)、『こんな保険には入るな!』(廣済堂出版)『怖い保険と年金の話』(青春出版社)『商品名で明かす今いちばん得する保険選び』『お金に困らなくなる黄金の法則』(河出書房新社)、『保険ぎらいは本当は正しい』(SBクリエイティブ)、『保険はこの5つから選びなさい』(河出書房新社発行)。監修には別冊宝島の年度版シリーズ『よい保険・悪い保険』など多数。

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