星新一賞、受賞には至らず
4作応募し、一部は1次審査を通ったが…
小説創作ソフト「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」の開発を進めている公立はこだて未来大学の松原仁教授らは21日、星新一賞(日本経済新聞社主催)に4作応募し、一部は1次審査を通ったが受賞には至らなかったと発表した。囲碁ソフト「アルファ碁」がプロ棋士を降すなど、盤上ゲームでは力を発揮した人工知能(AI)だが、小説ではまだまだ力不足のようだ。
星新一賞は3次にわたる中間審査を経て最終候補を選び、最終審査会が開かれた。応募したのは「作家ですのよ」が書いた「コンピュータが小説を書く日」「私の仕事は」の2作と、鳥海不二夫・東京大准教授がプロジェクトリーダーを務める「人狼知能プロジェクト」による「汝(なんじ)はAIなりや?TYPE−S」「同TYPE−L」の2作の計4作。どれが1次審査を通ったか主催者は明らかにしていない。
「作家ですのよ」は星新一さんの1000点以上の短編SFを解析して、小説を作ることを目指しているが、現段階ではまだデータは生かされていない。作りたい文章を名詞、形容詞、エピソードなどにばらしてそれぞれの要素のバリエーションを「部品」という形で用意し、「組み立て手順」に従ってAIが組み立てた。
「人狼知能プロジェクト」は、もとは「人狼」というパーティーゲームをするAIを開発するもの。1万試合の中から面白いゲーム展開をシナリオとして選び、鳥海准教授が文章化した。それぞれテーマやストーリー設定ができない、文章生成に至らないなどの問題が残る。
松原教授は「まだ人間8割、AI2割。人間の関与を減らしていきたい。星作品のデータを取り込むなど、今後もソフトの進歩があれば応募したい」と話している。【内藤麻里子】