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最終更新:2016年3月21日(月) 18時51分

「保育園落ちた」 待機児童数最多の世田谷区長を直撃

 「保育園落ちた」というネット上の書き込みで注目される待機児童問題。全国で一番深刻な自治体が、東京の世田谷区です。実は、今の区長、待機児童問題の解消を掲げて再選した人物なんです。一体なぜ公約を守れないのか、区長を直撃しました。

 「待機児童が多くて大変ご心配をかけているということは、申し訳ないと思っています」(保坂展人 世田谷区長)

 世田谷区の保坂区長は、野党・社民党の元国会議員です。しかも、区長選挙では・・・
 「待機児童解消に全力をあげます」

 「区内の保育定員を2万人」にするという公約を掲げ、再選を果たしましたが、世田谷区の待機児童はおよそ1200人、全国最多の自治体です。

 「『保育園落ちた 日本死ね』。総理、この投稿について、もしかしてご存じありませんか」(民主党 山尾志桜里 衆院議員、衆院予算委・先月29日)

 「私は承知をしておりませんが、実際どうなのかということは、これは匿名である以上、実際に本当かどうかということも含めて、私は確かめようがないのでございます」(安倍首相、衆院予算委・先月29日)

 与党からも安倍総理の「初動ミス」と指摘された待機児童問題は、国会前のデモやネット上で2万8000の署名が集まったこともあり、野党側が安倍政権への攻勢を強めました。

 「参議院議員選挙の争点になるかもしれないね」(自民党幹部)

 民主・維新の両党は待機児童問題の原因の一つといわれる保育士の待遇改善に向け、保育士の給与を1人あたり月5万円引き上げる「保育士処遇改善法案」の提出を先週、決めました。一方、野党側の批判をかわしたい政府与党サイドも緊急対策の具体化を急いでいます。

 加藤一億総活躍担当大臣が大阪の保育園を視察し、「春にまとめる1億総活躍プランで、具体的な方向性を示したい」と述べると、安倍総理も国会で、こう答弁しました。

 「待機児童ゼロに向けてですね、施策を進めていきたいと」(安倍首相、衆院予算委・14日)

 ただ、待機児童の解消は、そう簡単ではありません。

 「結局、この問題は各地方自治体が率先して、やらなければいけない問題だと思っている」(政府関係者)

 世田谷区の保育園の入所希望者は定員の2倍以上。つまり希望者の半分以上が子どもを保育園に預けられない状態ですが・・・

 「待機児多いって、それは大変申し訳ない状況があるんだけれども、そこの質を少し落として、もう量で抱え込むよというふうにした途端、やっぱり子育て環境全般が劣化していくんじゃないだろうかということの方がやっぱり心配」(保坂展人 世田谷区長)

 多くの子どもを受け入れた場合、保育園での事故が起こる可能性も高くなるとして、世田谷区は園児5人に対し、保育士が1人という国の基準よりも手厚い規定を設けています。保坂氏は「保育の質は絶対に譲れない」と話します。

 「保育士が足りている地域も、一律に待遇改善するわけにはいかない」(政府関係者)

 また、保育士不足は大都市に集中しています。東京では深刻な保育士不足に陥っていますが、山梨・山口などでは応募が求人を上回っていて、全国一律に保育士の給与を引き上げることに、政府からは否定的な見方も出ています。ただ、その一方で・・・

 「例えば仮に世田谷区だけがものすごく待遇がいいよと。そこで保育士は確保できるかもしれないけども、他の自治体が悪いというような、これはまずいと思いますよね」(保坂展人 世田谷区長)

 待遇の差が自治体によって大きくなると、保育士の求人に偏りがさらに生じる可能性を保坂氏は指摘しました。参議院議員選挙を念頭に、与野党が待機児童対策を競う展開になりましたが、実効性のある政策を打ち出せるのは、どの政党なのか。問題がクローズアップされてから1か月、与野党の幹部からは中身が大事だという声があがり始めています。

 「(安倍首相の)初動がまずかったかどうかというのは、本質的な話ではないと思いますね。本質的な議論をしっかりしなければならない」(民主党 岡田克也 代表、18日)

 「私たちもやるべきことをきちんとやらなきゃなりませんし、落ち着いた対応をしていく必要があると思います」(自民党 谷垣禎一 幹事長、18日)

 保坂氏は自戒も込めて選挙後が大事だと強調しました。

 「深刻な事態にあるよということを永田町の人たちも与党も野党も分かってですね、それを結果として解決をしていくんだと。結果を出さないでね、選挙が終わったら、この問題忘れるということでないことをですね、国民は見ていかなければいけないと思ってます」(保坂展人 世田谷区長)
(21日14:46)

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