(アラステア・ブルース)
ダウントン・アビーでの生活は優雅で格式高いものでした
(ロバート)「ダウントンへようこそ」。
数々の風変わりな習慣に堅苦しい作法
「危うく略式礼服を着ようかと」。
(バイオレット)「あら。
どうせだったらガウンかパジャマで来ればいいのに」。
(アラステア・ブルース)エドワード朝時代の貴族や使用人の作法は実に奇妙なものでした。
今の我々の暮らしとは大違いです。
しかし彼らにとって作法とは人生そのものでした。
どんな人生でしょう?
(アラステア)何にでも作法は付き物です。
身だしなみ食べ方立ち方話し方全てにわたったのです。
それにより属する階級が一目瞭然。
上の階の人間か下の階か。
(カーソン)「君は下僕だ。
下僕は手袋をしないと。
では早速仕事に取りかかろうか」。
「ダウントン・アビー」の時代作法は決まり事でした。
秘密の暗号のように当時の全てを教えてくれます。
その秘密をお教えしましょう。
私はアラステア・ブルース。
歴史学者でイギリス王室の専門家でもありドラマ「ダウントン・アビー」の撮影現場では時代考証を担当しています
もう少しそこ下がったほうがいいね。
(スタッフ)了解。
(ケヴィン)アラステアの言葉は天の声さ。
(ブレンダン)彼がいなきゃ撮影は成り立たないよ。
こっちへ来るように合図してほしい。
(トム)彼が立ち居振る舞いを教えてくれるんだ。
(ミシェル)アラステアに「もう少しフンゾリ返ってもいい?」って聞いた事があるの。
そしたら「おばあ様の前では駄目」って言われたわ。
(スタッフ)ではリハーサルいきます。
全員静かに。
ミリタリー・クロスの意味知ってる?
(男優)いえ知りません。
戦場での勇敢さを示すんだ。
撮影現場では苦労が絶えませんよ。
当時の作法を理解してもらうのは本当に難しいんです。
(リリー)ボディーランゲージは控えめよ。
背中を丸めたり今みたいに手を自由に動かして表現するのは上品じゃないの。
(ケヴィン)下の階にも階級があるなんて知らなかったよ。
(エド)使用人の世界は足の引っ張り合いさ。
(ヒュー)このコートで大丈夫?
(アラステア)ああ完璧だよ。
前を留めなければね。
(2人の笑い声)
これから皆様にダウントン・アビーのさまざまな作法についてご紹介します
(スタッフ)カメラ回して。
回った。
(別のスタッフ)用意!
(スタッフ)アクション!
(ヨービル公爵夫人)「ああ哀れなレディー・レイブンよ。
ちょっと話してくるわ」。
(ブランソン)「どうぞ閣下」。
「ええ。
あ〜らお久しぶりだこと」。
「『閣下』はやめて」。
(ブランソン)「どうしてです?」。
「『公爵夫人』と呼んで」。
「だったらあなたは『伯爵夫人』?」。
「それは駄目よ」。
「矛盾してます」。
「こんなところに理屈を持ち出さないで。
イギリスの上流社会にそんなもの必要ないわ」。
「ウン…」。
ダウントン・アビーの書斎へようこそ。
といってもふだんとは様子が違うでしょう?さて作法とは単に公爵夫人をどう呼ぶかやどのナイフを使うかではなくそれ以上の意味があります。
その人たちの生き方であり信念といっていいでしょう。
「実際のところメイドに給仕させるハメになるかもしれません」。
「前を向け。
世の中にはもっとひどいこともある」。
「メイドが公爵に給仕するよりもですか?」。
エドワード朝は激動の時代でした。
産業革命と第1次世界大戦が全てを変えたのです。
「これは伝達の手段というよりまるで拷問ね。
えっ?」。
それはまるで数世紀にわたる伝統が消え去るようなもので貴族にとっては何もかも失うような気分でした。
「ダウントンを追われる日が来るなんて…」。
貴族たちは誰と結婚しどうやって食べ何を着るかといった古い作法を時代が変わってもただかたくなに守り続けたのです。
「でも服装や習慣がどうしてそんなに大事なんですか?」。
「だってそれがなければ文明人とは言えないでしょう?ウフッ」。
「ウフッ」。
この時代の作法を知るには手始めに食事の席から見ていきましょう
「皆様お食事のお時間です」。
当時の貴族は贅沢な食事を好みそれを見せびらかしました。
しかし彼らにとって食べ物そのものより食事の席でのマナーが何よりも大事だったのです。
(イーディス)「カーソンがカクテルを給仕するかどうかよりもっと大事なことがあるんじゃないかしら?」。
私の役目は歴史的に正しい作法であるかを確認することです
(イーディス)「ごめんなさい。
頭が痛いからお先に失礼するわ」。
(女性スタッフ)カット。
オーケー。
(スタッフ)よし。
それじゃ次のシーンいきます。
(アラステア)ローラちょっといいかい?
(ローラ)もちろん。
手袋はどこ?膝の上よ。
一緒に…。
立つ時は持って…。
持っていくわ。
そうそう。
それでいい。
よろしく。
(ローラ)座ってるときは手袋を膝の上に置いてナプキンで隠すのがマナーなの。
それから手はテーブルの上に置いちゃ駄目。
どのコースにどのワインを飲むかも覚えなきゃ。
(アラステア)それは…。
(ジム・カーター)赤水白でいい?赤水…そうこれでいい。
大丈夫。
間違いない。
ロブロブ?
(リリー・ジェームズ)常にグラスが3つ用意されてるのよ。
大きい順に赤ワイン水白ワインを入れることになってるの。
(スタッフ)オッケー。
(リリー)私が一番気をつけたのは背筋を伸ばして座ることよ。
こんな感じ?いいね。
背筋がピンと伸びてる。
ハハハッ。
完璧だ。
現代のように椅子の背もたれには寄りかかりません。
これは単なる装飾で下僕が椅子を引くためのものなのです。
乳母はここにナイフを置いて子供がまっすぐ座るようにしつけました。
ナイフとフォークの使い方は特に重要です。
使うナイフを間違えたらかなり恥ずかしい思いをするでしょう
(リリー)「プリティー・ウーマン」のようにアラステアから教わったわ。
外から中へと順番に使うって。
あれ待って。
中から外だったかしら?とにかくどっちかなのよ。
「始めて」。
(アルフレッド)「ティースプーン。
エッグスプーン。
メロンスプーン。
グレープフルーツスプーン。
ジャムスプーン」。
「アァ…降参か?」。
「はい」。
「これはブイヨンスプーンだ」。
「こんな小さいのがスープ用ですか?」。
「ああそうだ。
小さいカップでブイヨンスープを出す場合に使う」。
(ロザムンド)「きっと疲れてるのよ。
あしたには元気になるわ」。
(女性スタッフ)カット。
よかったわ。
(スタッフ)よ〜しカット。
確認します。
食事のシーンは大変です。
その理由は最初のお祈りにあります。
神に感謝をささげるんです。
テーブルを彩る豪華な装飾やマナーは貴族たちが実現しようとしている完璧な人生の象徴なんです。
完璧に整った食卓は道徳的な正しさを示すものでした
ここはバークシャーにあるバジルドン・パーク。
クローリー家のロンドンにある屋敷という設定です。
あしたの夕食シーンの撮影を控え美術担当者は大忙し。
90年前の食卓を再現しようと奮闘しています
当時の貴族は複雑さを好みました。
準備には何時間もかかります。
それは使用人も同じでした
(女性スタッフ)こっちはいいわ。
(アラステア)スモールフォークビッグフォークスモールフォーク。
(スタッフ)ああ。
完璧にするには反対側にこの大きさのフォークを置いて。
この大きさだ。
これは違う。
あとスプーンだ。
(スタッフ)スプーンね。
すぐ用意しよう。
(ケヴィン・ドイル)テーブルに食器が置かれたら位置を測っていくんだよ。
カーソンが定規を持ってそれぞれの間隔を測って位置を決めていく。
隣の席との間隔や椅子と皿との距離や皿とグラスの距離というように全てを正確に測っていくんだよ。
(アラステア)執事は必ず印の付いた棒を持っていたんだよ。
食器と食器の間をきっちり測るためにね。
まず最初に1つ目の印を確認して一番外側のナイフを印の位置まで押し出す。
次にほかのナイフやフォークを同じ位置まで上げていくんだ。
このとき銀食器に指紋を残さないように必ず手袋をして作業したんだよ。
印に合わせて等間隔に置かなくてはならない。
こうやってスプーンとナイフがまっすぐに並んだら次はグラスを少し左に少し右にと正しい位置にそろえる。
これでナイフとグラスもまっすぐになるんだ。
(スタッフ)いいね。
最後に椅子とテーブルの距離をちょうどいい具合に直す。
この棒には印はないけど。
ああないね。
こうやってかがみこんで棒を横に置いて印の位置まで椅子を引く。
全部終わったら横から見てまっすぐ並んでいるか確認するんだけどどうかな?大丈夫。
いいね。
(メアリー)「いかが?」。
「やりすぎくらいでちょうどいいのよ」。
当時は豪華なテーブルで招待客をうならせることが大切でした。
下の階では誰が何を運ぶかによって力関係が浮き彫りに…
「今夜のメインはアルフレッドが運べ。
ジェームズはソースを運ぶんだ」。
(ジミー)「俺が第一下僕だ」。
(アイビー)「そうよね」。
(エド・スピラーズ)第一下僕がメインの肉を運ぶ。
「あいつ今にも皿を落としそうだ」。
(エド)第二下僕は付け合わせや野菜料理なんかだよ。
「あんなでくの坊に俺が負けるなんて」。
(エド)背が高いと給金がいいんだ。
アルフレッドは身長193cm僕は175cm。
彼は稼げるけど僕はすっからかんさ。
下僕には型どおりの動きがたくさんあるんだよ。
見たい?
(インタビューアー)ええ。
(エド)できれば助手が4人くらい欲しいんだけど。
長いテーブルがここにあるとしたらカーソンの立ち位置はこの辺りだね。
彼の向かい側に暖炉があって第一下僕の僕はここに立つんだ。
準備を整えてカーソンからの料理を出す合図を待つ。
最初は先代の伯爵夫人からだ。
「ああちょっと待った。
こうしたほうが取りやすい」。
(エド)オスカー女優のマギー・スミスがここ。
いい?彼女の後ろから料理を出すときはいつもメチャクチャ緊張するんだよ。
「あらまあおいしそう。
フフッ。
アアアアッ!」。
(エド)時々こんなふうに機材をまたいで運ぶこともあるんだ。
もちろん皿を持ったままバランスを崩さないように前にかがむんだ。
「母上お願いします。
みんなに道理を説いてやってください」。
(エド)かがんだままじっと待って戻って一息おいて移動する。
3人目に給仕する時点でモールズリーさんとか第二下僕に当たる人が2番目の料理を給仕し始めるんだ。
それを横目で見て同時にかがむ。
(ケヴィン)食卓での会話の邪魔をしないように自分の存在を消さなくてはならないんだ。
(エリザベス・マクガヴァン)女主人であるコーラが料理に手を付けるまで誰も手を付けないの。
どちらの方向を向いて話すかも彼女が決めるのよ。
「たまにこっちを向いてもいい?」。
(ヒュー・ボネヴィル)夕食の席ではその場を仕切るコーラが決めた方向の相手と会話をするんだ。
その方向の人と話して彼女が反対側を向くと…。
(グレッグソン)「反撃開始だ」。
ほかのみんなも反対側の相手と話し始めるわけさ。
食事の作法には本来の目的をごまかす役目もあります。
食卓は他人に影響を与え権力を行使し夫を探す場でした
「これで何度目?隣に座る方と結婚しろって言うのは?」。
(コーラ)「結婚するまで言うつもり」。
イギリスの支配階級の多くは愛のための結婚をしませんでした。
結婚は権力と領地のためだったのです。
自分たちの領地を守ることが何よりも大切でした。
それにより当主は十分な収入を確保しその土地を支配する権利を得たのです。
「未来が約束され伯爵夫人になれる方法が1つだけあるわ」。
「まさかあのマシューと…」。
「考えてみることね」。
「考えるまでもないわ。
ナイフもまともに握れない男と結婚しろと?」。
「アハッ。
それは言い過ぎじゃない?」。
(アラステア)当時の女性は結婚するまで地位も権力もありません。
だから夫が必要だったのです。
(トーマス)「ストララン様です」。
「あらまあ」。
(ストララン)「ご心配なく。
不意打ちですから」。
(ローラ)女性にとっては過酷な時代だったと言えるわ。
男性と同じ権利は持てずいい結婚に富を見いだすしかなかったのよ。
(ストララン)「ヨークで行われるコンサートの券があります。
次の金曜日です」。
「すてきですわ。
でも私は…」。
「いえ実はイーディス嬢をお誘いしようと思ってました」。
「ぜひ行きたいです」。
「よかった!」。
(ローラ)結婚こそが女性にとっての最重要事項だったのよ。
だって結婚すればようやく両親の住む家を出られるんだから。
ついに自分の家庭を築けるの。
若い娘たちは国王への謁見が済むまでは結婚できません。
それがいわゆる有名な「社交界デビュー」です
(リリー)思うんだけど「社交界デビュー」って言ってみれば儀礼やしきたりの極端な例じゃないかしら。
頭に髪飾りを載せるんだけどその髪飾りの布は1cm単位で長さが決まってるのよ。
床まで垂れる布は2m70cm以上必要です
(リリー)真っ白なドレスに身を包み頭に羽飾りを着けるんだけどその数まで決まってるの。
白は純潔を羽飾りの数は既婚か未婚かを表します。
未婚の女性は2本既婚の付き添いは3本です
(侍従)「グランサム伯爵夫人とレディー・ローズ・マクレア」。
国王夫妻にお披露目されることは社交界への参加を意味します。
貴族の妻にふさわしいというお墨付きを得たのです
(スタッフ)用意!
(女性スタッフ)ではテイク1いきます。
(カチンコの音)
(スタッフ)はいアクション。
(ロザムンド)「そのドレスホントにすてき」。
「ありがとう」。
国王への謁見を終えたら社交シーズンに突入します。
パーティーに出てふさわしい相手を探すのです
なんでロバートは軍服じゃないんだ?それはね当時は軍のその階級が着るための特別な夜会服がなかったからなんだ。
アラステアはいつも細かい部分まで教えてくれる。
特に人と人との関係性をね。
「それで決めたの?」。
(ミシェル・ドッカリー)グラスを鳴らして普通に乾杯しようとしたのよね。
でも女性はグラスを鳴らしたりなんかしないの。
(スタッフ)カット。
やり直し。
「乾杯」とも言わないんですって。
だからアラステアが飛んできたわ。
グラスの話だけど。
「乾杯」の話ね?そうなんだ。
(サマンサ)「健康を祝して」は?「健康を祝して」か。
(スタッフ)みんな静かに。
それじゃ回して。
(スタッフたち)回った。
回った。
(スタッフ)アクション!
(トム・カレン)手取り足取りアラステアから教わったよ。
靴ひもの結び方からヘヘッ細かいしぐさや立ち方や馬の乗り方まで。
ギリンガム卿の家族の歴史も教えてくれたよ。
アラステアは上流階級の歴史が書いてある本を持ってるんだ。
こんな分厚い本だよ。
僕はそういう本があることすら知らなかったけど彼自身も載ってる。
ルーツをたどるとアラステアはスコットランド王ロバート1世の子孫で本に載ってるんだ。
その分厚い本というのは「バーク貴族名鑑」のことで全てのイギリス貴族の名前が載っています。
この本はその人物の経歴や家柄を調べるために欠かせません
(トム)財産をいくら持っているかなんて関係ないんだ。
「貴族名鑑」には財産についての記述はないからね。
その人の家柄やルーツそういったものが載っているだけなんだ。
親たちは「貴族名鑑」を使って子供の結婚相手の家柄や爵位を調べました。
結婚で一家を繁栄させるためです
(トム)ギリンガム卿の一族は何百年も続いている名家なんだ。
だから結婚するのはそれなりの家名や爵位を持った相手でなければならない。
釣り合いが取れるようにね。
チェスの試合や政治みたいだよ。
(ギリンガム)「それが僕たちの社会のしきたりだからね」。
「お願い早まらないで」。
「メイベルに恥をかかせるのはフェアじゃない」。
(トム)彼らはたくさんの規則に縛られて生きてるんだ。
ギリンガム卿を演じてみてそのことに一番驚いたよ。
いかに我慢することが多いかってね。
だってほとんど感情を表すことは許されないんだ。
笑ったり誰かを愛したり泣いたりすることもできない。
それにゆくゆくは家族が望む相手と結婚しなければならないんだからね。
だからギリンガムはメアリーに向かってこう言う。
「それが僕たちの社会のしきたりだ」と。
つまり彼は人生で初めて誰かに愛を伝えたんだと思うな。
(スタッフ)静かに!ドアを閉めて。
(アラステア)誰とどんな結婚をするかは上の階では複雑な問題でしたが下の階では単純です。
結婚しません。
(バイオレット)「予感的中よ。
侍女が辞めて結婚する。
何て身勝手なのかしら」。
(ブレンダン・コイル)使用人には結婚を目的とした恋愛は許されなかった。
(アンナ)「ババレたら…」。
(ベイツ)「し〜っ」。
(ブレンダン)だからベイツとアンナの関係はゆっくりと穏やかに進んでいったんだ。
「フッ…」。
(ブレンダン)そのプロセスが好きだったよ。
2人は優しくて繊細な関係を通じて少しずつ距離が縮んでいくんだ。
「今はここまでよ。
仕事しなきゃ」。
(ジョアン・フロガット)使用人同士の結婚はあったけどその場合は女性のほうが仕事を辞めていたの。
結婚は一家への忠誠心を揺るがします。
「仕事が全て」であるべきです。
それに不都合もありました。
屋敷では男女の寝る場所が別々だったのです。
夫婦の部屋はありません
アンナとベイツは随分優遇されているのよ。
(ソフィー・マクシェラ)下の階の人間に結婚は必要ないわ。
特にデイジーにはね。
だって結婚したら屋敷を出ていかなくちゃいけないでしょう。
そんなの嫌だもの。
それにおつきあいする暇もないしね。
(デイジー)「私はスフレを見てくる」。
「でも今…」。
「いいからやって!」。
「アァ…」。
(ソフィー)とてもじゃないけど誰かとデートしたりイチャイチャしたりする暇はないわ。
デイジーが男の人と縁がない理由は2人っきりで出かけるチャンスがないからだと思う。
(ローズ)「タクシー!」。
貴族の娘は外出はできますがお目付け役もなしに男性と2人きりで会えば一生名前に傷がつきます
(バンドの演奏)
(リリー)女性が自立するのが難しい時代にあんなふうに遊び回るなんてローズはすごいと思う。
自分の意見を持っていてとっても勇敢な子よね。
(ジャック)「ジャック・ロスだ。
よろしく」。
「ローズ・マクレアよ。
はじめまして」。
(ブランソン)「ローズ。
やあ迎えに来たよ」。
レディーには特権もありますが制約も多かったのです
(ローラ)グレッグソンの家でイーディスは手袋をしていないの。
これはとても衝撃的よ。
「寂しくなる?」。
「もちろんよ。
ホントにあと1週間で出発?」。
「うん」。
(ローラ)だってそれは裸も同然だから。
「愛してるよ」。
(ローラ)まさにその夜彼女は妊娠するのよ。
手袋をしておくべきだった。
「申し訳ございませんお嬢様。
夕方に来た郵便を見落としておりました」。
「いいのよ」。
(ローラ)未婚のまま妊娠するなんてそれはもうとんでもないことだったの。
(ローラ)アラステアはお城を指さしてこう言ったわ。
「君はいつでも正しい行いをして周りから尊敬される人間でなければならないんだ」って。
「みんながそれを期待しているんだ」って。
「なのにその期待を裏切って恥ずべき行為をすれば地元はもちろんのことロンドンでの評判まで地に落ちるだろう」って。
つまりイーディスにとっては大ピンチよ。
「そろそろ本当のことを話したらどう?」。
「言えばおばあ様は2度と口をきいてくれないわ」。
「想像はついているわ」。
「私と一緒にこの土地や屋敷を所有するんだ。
共同所有者として」。
(マシュー)「でも…」。
「ハァ…」。
(アラステア)私はエドワード朝の格式ある振る舞いが好きです。
当時の貴族たちの振る舞いの根底にあるのは単純明快な実用主義とおそれでした。
2人のあのシーンでは現代のように抱き合うバージョンも撮影したけどアラステアが慌てて止めに来たよ。
「バカなことをするな。
気持ちを表現するには握手で十分だ」ってね。
アハハハハッ。
「お前はまな娘だ。
愛している。
イギリス人はなかなかそう言わんがな」。
イギリス人は感情を表に出しませんでした。
1世紀前に起こったフランス革命の情熱に貴族たちはおそれをなし冷静な人物を好ましいと考えたのです
(アラステア)貴族は格式を失うことを恐れていました。
自分たちの権限が損なわれ社会が崩壊すると考えたのです。
そこで彼らは地位を守るために作法を大事にしました
「そういう問題じゃないの。
未来のグランサム伯爵夫人は絶対にダウントンに住まなくてはいけないの」。
自分たちの立場をわきまえた上でものを言う人たちなの。
率直に。
メアリーも思ったことを口にするわ。
確信があるし言っても謝ったりしない。
「税務署員と会う約束が水曜の正午に延期になったわ。
遅れるのは嫌だからあしたロンドンへ行きます」。
それは自信があるからなのよ。
自分が言った言葉には必ず責任を持つしそれに考えに一切の迷いがないの。
「世の中は前進してるのよ」。
「またそれを言うか」。
彼らが大きな声で話すのは自分たちに自信があって誰に聞かれてもいいと思っているからなのよ。
ハハッ。
「貴族とはこういうものよ」って感じ。
それに部屋もすごく広いしね。
(ローズ)「伯爵はいつ戻るの?」。
「分からないわ。
もう何日も連絡がないの」。
(トム)妙な話だけど貴族でいるためには無礼で気取った人間になる必要があるんだよ。
お茶が出てもお礼1つ言わないのよ。
誰が出したかなんて気にも留めない。
使用人は空気も同然なの。
心の中ではいつも叫んでるよ。
「おい無礼だぞ」って。
自分に仕えてくれる人を無視するなんて。
でもしかたがないんだ。
貴族にとってはそれが当たり前のことでした
立ったままじゃなく大急ぎでドアのほうへ。
一日に30回もお礼を言っていたらおかしくなりますからね
(スタッフ)アクション。
だから心の中で感謝する決まりなのです
(ローラ)優れた使用人の条件はそこに居ないかのように気配を消せることね。
「私の夫は死んだのよ。
それがどういうことか分からない?戦争を生き延びたのにつまらない自動車事故なんかで!」。
(エド)その場に居ても何も見えず聞こえないふりをする。
ほとんど無表情だけど情報は入ってるんだ。
嫌でも聞こえるからね。
使用人の前で平気で話すのは彼らが何も気にしてないと思っているからよ。
(ブランソン)「兄のところで」。
「うちへいらっしゃるのよね?」。
「ええ来ます」。
(エド)下の階の人間はまるで昼メロを見るように展開を楽しみにしてるんだ。
どれほどドラマチックな話でも使用人は外に漏らさないと思われています
「私の関知しない問題でもあるのか?」。
(オブライエン)「いいえカーソンさん」。
使用人の一番の条件は口が堅い事。
「知らない人に屋敷のことをしゃべらないで」。
使用人同士でうわさ話をすることはあるけどそれを屋敷の外にまで持ち出すつもりはないの。
だって評判の悪い家で働きたくはないでしょう?地元でも有数の名家で働くことが使用人にとってのステータスなのよ。
(アラステア)貴族はスキャンダルを恐れました。
新聞がゴシップ記事に価値を見いだしたからです。
うわさ話はもはや地元だけにとどまらず国じゅうに広がってしまうのです。
(コーラ)「何があったの?」。
「分からないわ」。
お嬢様のベッドで人が死んでるなんて。
「生きていたのに突然悲鳴を上げて死んじゃったのよ」。
「でもなぜ彼がここに居たの?」。
(ジョアン)言うまでもなくもしこの事件が誰かに知られてしまったら当然メアリーは社会から追放されることになるわ。
それはとても恐ろしいことよ。
「私はおしまいよ。
汚名を背負って世間の鼻つまみになってしまうわ。
娘がそうなってもいいっていうの?家名を汚すことになるのよ」。
だからご家族とメアリー様の名誉を守るためにアンナが一肌脱ぐのよ。
決して業務とは言えない死体運びを手伝ってあげるの。
「アアアッ」。
「聞こえるわ」。
「ごめんなさい」。
(エリザベス)コーラにはほかに選択肢がなかったのよ。
彼女には状況がよく分かっていたの。
メアリーは若くしてあらゆる面で社会的地位を失うことになるわ。
それが彼女にとってどんなにつらいことか理解していたから。
「アンナ。
あなたを信頼してるわ。
だからあえてこのことをないしょにしてくれとは頼みません。
行きましょう」。
使用人にとって口の堅さが一番大事なら次に大事なのは自分の問題で主人に迷惑をかけないことです。
「新しい従者のジョン・ベイツです」。
「新しい従者?」。
「そうです」。
(ブレンダン)ベイツは歓迎もされず仕事もこなせない。
(倒れる音)
(ブレンダン)だから伯爵はこう言うしかないんだ。
「うまくいかないなら辞めてもらう」と。
「要するにだな私はお前に試用期間を与えた」。
(ブレンダン)障害のある彼があの年で仕事を失えば救貧院へ行くしかない。
終わりだ。
「カーソンは使用人たちにそつなく仕事をさせることに重きを置いているのだ」。
「よく存じております」。
ベイツとしてはとにかく「何でもするから置いてください」と伯爵にすがりたい気分だ。
「どうしたらいいか教えて下さい。
お願いします」ってね。
だけどそうは言えず代わりにこう言うんだ。
(ベイツ)「提案があります。
そのせいで下僕が必要なら私の給金から…」。
「それはいかん。
そんなことを許せるか」。
「そうしてでも残りたいんです。
何をおいても」。
(ブレンダン)とても微妙な言い方だけど実際は懇願しているようなもんだ。
普通の男はすがるようなマネはできない。
そして伯爵の返事は…。
「次が見つかるまで援助しよう」。
それで話は終わり。
お互い分かってる。
「分かりました。
すぐおいとまします」。
「急ぐ必要はない。
明日9時発のロンドン行き列車に乗れ」。
(ブレンダン)こう言われたらベイツにはもうなすすべがない。
言葉の裏に多くの意味が隠されている。
「冷酷なようだがどうにもしようがないのだ」。
「よく分かっております」。
(ブレンダン)感情的になるのはとても見苦しいことだ。
面倒なことを押しつければその相手に気まずい思いをさせる。
多くの使用人が主人を精神的に支えていたという記録があります。
ですが使用人は悩みを主人に相談したりしません。
「今は上に戻りたいだけ」。
(グリーン)「脚の悪い旦那じゃ満足できないだろ?アァ?」。
「十分満足よ。
彼と居てとても幸せ。
分かったら通して」。
「ホントの喜びを教えてやる」。
「ウーウッ!」。
(ジョアン)アンナが乱暴される話を知ったとき当時の使用人にとってそれが何を意味するかということを考えたわ。
多くの人と同じく私もアンナは誰かに打ち明けるべきだと思ったの。
犯人を法で裁くためにもね。
でもアラステアから「労働者階級の女性は名誉を守る」と言われたわ。
(ヒューズ)「とにかく誰かに話を…」。
「駄目!絶対駄目」。
「だけどベイツさんには言わないと」。
「絶対言えない。
言ったら相手の男を殺してしまうもの」。
(ジョアン)実際この件が誰かに知られてしまったら彼女はお屋敷や自分自身の評判を落とすことになるし恐らく仕事も失う。
「ほかの誰にも言わないで。
約束して」。
(ジョアン)すごく非文明的な話に思えるけど考えたら今から僅か100年前のことなの。
むしろその事実に驚いたわ。
使用人と主人の関係は奇妙なものです。
緊密ですが規則に縛られている。
(ベルの音)お屋敷の中は礼儀作法や仕事に関する規則でいっぱいなんだよ。
まず立ち入った質問はしない。
「いい日でしたか?」。
「ああよかったよ。
サンプソンに大負けするまではな」。
それから会話をせかしてはいけない。
「名人に挑んだのがそもそもの間違いだった」。
(ブレンダン)主人の行動や考えを批判するようなことは決して口にしてはいけない。
内心どう思っていてもね。
「この話は内密にな」。
「もちろんです」。
「頼むぞ」。
まるで教会でする懺悔のようなもので2人だけの秘密なんだよ。
「服の脱ぎ着には信頼関係というものが必要だ。
トーマスの昔の罪は許してやってもいいがかといってあの男は信用できない」。
「ごもっともです。
ベイツさんが無事に戻れば問題も解決するでしょう」。
(ブレンダン)ある種奇妙な光景だよ。
礼儀作法というものがあって自分の発言に慎重になりながらも相手にズボンをはかせてるんだ。
ベイツは私の私生活をアンナはメアリーの私生活を一方的に知っているんだよ。
「お夕食は?」。
「最悪だったわ。
ブレイクさんの態度にはウンザリよ」。
「まだ打ち解けませんか?」。
メアリーとアンナはとても親しい関係よ。
2人はほとんど友達みたいだけれどいくらそう見えてもやっぱり使用人と主人なの。
「ネイピアさんに私を『お高い』と言ったそうよ」。
「アァ…」。
「お高くないわよね?」。
「正直に答えたほうがよろしいですか?」。
「もういいわ」。
アンナは常に自分の立場をわきまえてるけどメアリーは時々忘れてしまうの。
2人の関係をすっかり忘れて必要以上のことまでアンナに打ち明けたりするのよ。
親しい関係になるのも当然と言えば当然です。
身支度にかかる膨大な時間を一緒に過ごすのですから
(アラステア)服装は当時の貴族にとってとても重要なものでした。
実用的とは言えない手間のかかる服を着ることで自分たちの特権を誇示しました。
働く必要がない上に着替えを手伝ってくれる人がいるんだとね。
彼らは苦労して手間のかかる服を難なく着こなしているように見せました。
そうまでするのは彼らが主だからです。
「何を考えてるの?」「お姉様ほど彼を嫌いじゃないわ」。
「あなたは嫌いじゃないってこと」。
「ええそうかも」。
女性の服は手の込んだ作りで多くの決まりがありました
(ローラ)私にはティアラがないの。
なぜなら…。
ティアラをするのは既婚女性だけ。
(ジョアン)真珠に決まりがある?ウッハハハッ。
私はつけないわ。
(シビル)「とてもきれいよ」。
「ありがとうシビル」。
(リリー)手袋だけでも脱いだりはめたりするのよ。
部屋の中でも。
「何日お泊まりに?」。
夕食の前と後は手袋をはめたまま。
いつも手袋をはめてるわ。
旅行でも夕食でも自転車でも。
「ああこの瞬間がたまらないのよね」。
服装の規則の始まりは数世紀前の「奢侈禁止法」です。
貴族以外は毛皮や絹を身に着けられない決まりでした
ふだんの日はまず朝食用の服を着てそれから散歩や乗馬のために着替えてまた昼食の時に着替えるの。
そのあとは午後の用事のために着替えて夕食の前にまた着替える。
彼女たちはそれこそもう四六時中着替えてるのよ。
(エリザベス)あんな服装じゃ何もできないわ。
あのコルセットのせいよ。
左右のあばらが引き寄せられるくらい胸の辺りをきつく締めつけられるから普通に息をすることができないの。
だから自然と受け身の人間になってしまうのよ。
(シビル)「アッ。
コルセットがきついわ。
アンナそれが済んだら少し緩めてくれない?」。
「ウン」。
「太り始めてきたのよ」。
(スタッフ)カメラ用意。
(エリザベス)今は1924年という設定だから少し事情が違うわ。
服装はもっと楽になってより自由に動いたり話したりできるようになったの。
これは決して…偶然じゃないと思う。
女性たちは突然自分たちの意見を主張するようになって人間としての権利を求めるようになったの。
それは呼吸が楽になったからよ。
(インタビューアー)フフフッ。
一方男性の服は堅苦しいままです。
まるで変わりゆく世界を拒むかのように
「ではマシューを迎えに行きます」。
「見違えたよ」。
「そうですか?かなり窮屈ですけど」。
服が山ほどあるんだよ。
夜会服は今まで生きてきた中で最悪の着心地だった。
糊の利いた厚紙のようなシャツに文字どおり体をねじ込むんだ。
苦しかったよ。
このままの姿勢で体を曲げることもできない。
できることと言えば手を横にして立つだけ。
まるでペンギンだよ。
着る服によって動きや気分が変わるものだ。
僕が休憩中も姿勢を崩さないのは単にそれができないからさ。
夕食のためとか一日に何度も着替えるんだ。
とても1人ではできない。
まるで鎧を身に着けているようだよ。
「解決してよかったな」。
(トム)TPOに応じてたくさんの種類の帽子があるんだ。
あんなに必要かな?
(スタッフ)用意!アクション!
帽子はとても重要です。
一目見て身分が分かりますから
(アラステア)見渡せばいろんな種類の帽子があります。
これといった決まりはありませんが例えば上流階級に属する大きな屋敷の主人ならここぞという時はシルクハットです。
「もちろん」。
あとはより取り見取り。
お金がありますから布製の帽子でも何でも好きなものをかぶっていいんです。
一方労働者階級の男性はそうはいかない。
あそこに見えるような布製の帽子だけをかぶります。
山高帽は高くて買えません。
今日のグランサム伯爵の帽子は品のいい中折れ帽です。
彼は自分の村に居るわけですからここの誰に対しても気取る必要がありません。
でもカーソンは伯爵のお供で来てますから一番いい山高帽をかぶっています。
(笑い声)
(スタッフ)それじゃリハーサルいきます!
(別のスタッフ)リハーサル。
(アラステア)この時代の人はみんな出かけるときに帽子をかぶるのが普通でした。
(スタッフ)アクション!
(アラステア)また帽子は脱ぐ事によって女性などに礼儀を示す道具にもなりました。
更にそのほかにも自分と同じ階級の人と話す時には帽子を脱いでから話しかけます。
(スタッフ)チェックします。
帽子は脱いだほうがいい?ここで帽子を脱ぐことは伯爵の寛大さを表すことになるんだ。
カーソンは君が帽子を脱ぐのを見て慌てて自分も帽子を脱ぐだろうね。
でも握手は駄目だよ。
いいね?
(スタッフ)用意。
(カチンコの音)
(エルコット)「こんにちは伯爵。
カーソンさん」。
「エルコットさんどちらへ?」。
「ああ今息子を待ってるんです。
ああやって父親のお墓に話しかけるのが好きで」。
(アラステア)手袋のまま握手でもしたら大変なことになりますよ。
当時は病気の感染を恐れて握手をしなかったんです。
どうも。
時代考証のアラステア・ブルースです。
ナオミです。
はじめまして。
ナオミさん。
ひとつお願いしてもいいかな?ええもちろん。
ここじゃなくてもう少し上の方で手を組んでくれる?そう完璧だ。
(スタッフ)743テイク1。
「息子を待ってるんです。
買い物や郵便局へ行くときはいつも連れてきてお墓に挨拶させるんです」。
(スタッフ)カット!
(アラステア)何をするにも身分を忘れない事が大切なんです。
ロバートは貴族ですし自分の責任を理解しています。
カーソンも身分には誰よりも敏感です。
下の階では序列が何より大事ですからね。
グランサム伯爵はその身分によって村を管理します。
貴族はその土地に寄生して生きるのです。
仕事を探す必要などありません
(マシュー)「リポンで仕事を見つけた。
あしたから始めます」。
「仕事?」。
我々の多くはお金のために9時から5時まで働きます。
週末を待ちわびて。
しかし20世紀初頭の貴族にそのような概念はありません。
「しゅ週末って何なの?」。
(アラステア)仕事をしてお金を稼ぐ必要がなかったのです。
屋敷や土地を相続するか結婚すればいい。
そうすれば領地が生活を保障してくれます。
「まだ愛着が湧かないかね」。
「ええ本当に…」。
「いや愛してはいない。
君の目に見えるのは崩れそうなレンガと水の氾濫を防ぐ水路とパイプ。
寒さでひび割れる石だ」。
「あなたには?」。
「人生の結晶が見える」。
しかし貴族の確固たる地位は新しくやってきた成金たちに脅かされます。
リチャード・カーライルのような野心家で高慢な男たちです
(リチャード・カーライル)「どうも」。
(コーラ)「ようこそ。
サー・リチャード」。
「光栄です」。
「いらっしゃい」。
「どうも」。
「列車の旅はいかがでした?」。
「仕事がはかどりましたよ」。
成金たちは騒々しくて自信たっぷりで貴族たちは「金の話は下品だ」と言って対抗したのです。
(ハロルド)「イギリス貴族は金の話をしないのか?」。
(マデリン)「おおっぴらには」。
「でも考えはするんだろう?」。
「ああ…」。
「いいや。
金と同じで知識もあるに越したことはないさ」。
「そうは言っても貴族のしきたりなんてあなたにとってはバカらしいでしょ?」。
「傲慢な男じゃない。
だがここまで成り上がった自分のことを恥じてはいない」。
シーズン2のカーライルとロバートは実に対照的な2人だよ。
カーライルという男は自分の腕で金を稼いで実力でのし上がってきた男だ。
仕事によって社会的地位を築いた。
一方のロバートは生まれながらにして上流階級で人生の唯一の目的は領地を維持し次の世代に引き渡すことだ。
しかし何世紀もの間恩恵をもたらしてくれた領土の収益に陰りが見え始めます。
北米からの穀物供給で作物の価値が下がり税制改革が相続を脅かしました
「我が財産は皆の努力のたまものだ。
私は管理者であって所有者ではない。
そして課せられた仕事を必死にこなしている」。
ロバートはビジネスマンではないが人の扱いがうまくて相手を立てることもできる。
だが経営の事となるとまるで駄目だ。
現代社会が突きつける問題に振り回されるだけできちんと対処することができないんだ。
「徐々にやればいいだろう。
とりあえず投資で様子を見てみるのはどうだ?元手が3倍いやそれ以上になる仕組みがあるという話を聞いたぞ」。
「高配当をうたっていても実現は怪しい」。
「だがアメリカ人のチャールズ…確かポンジーは90日でばく大な利益を保証している」。
ロバートはポンジーのような詐欺師の話を信じてしまったりみんながカナダの鉄道に投資すればそれに乗っかったりする。
「ハリー・ストークが大金を投資した」。
(マシュー)「じゃそのハリーって人は大バカ者ですよ」。
「だが私が知るかぎり…」。
「そうやって投資して家を失いかけたのはどこの誰です?」。
ロバートは時代遅れの人間にも見えるが実は古き良き時代と今のよさを生かして彼なりに最大限土地を活用しようとしてるんだ。
モールズリーのような使用人も古き良き時代を懐かしんでいることでしょう。
少しのミスや不運のせいで仕事を失ってしまうのです
(ケヴィン)モールズリーは自分をお荷物だと思ってる。
それは今となっては誰の目にも明らかだろう。
その日暮らしの生活で先にあるのはただの…絶望だけ。
(アンナ)「モールズリーさん?」。
(モールズリー)「ハァ…」。
「調子はいかが?」。
「見てのとおりよくないよ」。
「そうかしら。
技術が要る仕事よ」。
「いいやそんなんじゃないよ」。
「待っていれば今にいい仕事が見つかるわ」。
「そう思って待っていたけど駄目だった。
職を失って以来村じゅうに借金をして回っている」「だけどあなたならきっと…」。
「分からないか?もうどん底なんだ」。
(ジョアン)お金について話すのは上品なことじゃないわ。
それにましてや感情的になるなんてもってのほかだからアンナにはショックよ。
「申し訳ない。
自分本位でつい君に当たってしまった。
どうか許してくれ。
ハァ…」。
当時は社会福祉や医療制度なんてものはない世の中だ。
だから領地で暮らしている人間が生きるも死ぬも全ては領主の手にかかってるんだ。
撮影現場での我々の仕事は当時の使用人と同じ丁寧さで準備をすることです
(アラステア)ほかの熊手は?
(スタッフ)えっ?ほかの熊手。
(スタッフ)さあ?そこの石が多い気がするな。
実を言うと私は砂利が大好きなんですよ。
熊手で地面をならすと驚くほど見違えるようになります。
古い屋敷では毎朝欠かさずその作業をしたものでした。
必要なら朝以外にもね。
前にもどこかでこんな例えをしたと思うが屋敷の仕事というのは機械の歯車と一緒なんだ。
いくら歯車の調子が悪いからといってそれをむやみに取り除いたり油をさすのを面倒がれば機械全体が壊れてしまう。
(アラステア)もう少し後ろに下がって。
(女優)はい。
そう。
ここ。
手は横にね。
まずは自分の役割を知ることが基本です。
それは全ての作法に通じることです。
ですがなにも使用人だけに限ったことではなく貴族にも言えることでした。
「実はモールズリーのことで相談が」。
「何だね?」。
「彼を辞めさせたら僕を恩知らずと思われますか?」。
「君の機嫌を損ねたのか?」。
「とんでもない。
僕らの生活には贅沢すぎるというだけです」。
「正しい事かね?非のない者から生活の糧を奪うことが」。
「いえそんなことは…」。
「君の母上は病院で働き生きがいを感じている。
いわば自尊心を得ているのだ」。
「確かに」。
「モールズリーも同じだ。
それを奪う気か?君がここの主人になったら執事を解雇するのか?メイドや厨房の手伝いは何人残れる?1人残らず追い出すのか?皆それぞれの役割があるのだよ。
それを果たさせてやらねばならん」。
貴族たちは特権意識ではなくて義務感を持って社会と向き合ってきました
彼らの願いは領地やそこに住む人たちの役に立つことです。
ロバートはここから見える全てを所有しています。
領土はおよそ24.3平方km。
そこにおける経済が伯爵のその腕にかかっているのです
(マシュー)「僕はもっとシンプルに暮らしたいと思っているんですよ」。
(バイオレット)「何を言うの。
雇用するのは我々の義務よ。
使用人の居ない貴族なんてガラスのハンマーくらい存在価値がないわ。
フン」。
「ウフッ」。
伯爵は大きな屋敷で使用人たちにかしずかれるだけではありません。
彼自らも奉仕しているのです。
イギリスという巨大な機械を動かすための歯車の1つとなって。
特権と責任という2つのバランスを完璧に保っていたのです。
(スタッフ)オッケー。
用意!アクション!
(スタッフ)いいよ!ありがとう!
(アラステア)撮影現場で私が抱き合うのを止めたりまっすぐ立つよう指示しながら気付いたのは今私たちが奇妙で堅苦しいと思うことも当時の人々にとっては自然なことだということです。
私たちが現場で必死に再現しようとしているダウントン・アビーの作法というものは彼らには苦労でも何でもなかったのです。
(スタッフ)用意!アクション!2016/02/21(日) 23:00〜23:52
NHK総合1・神戸
ダウントン・アビー 知られざる貴族の作法[字]
大ヒットの英国ドラマ「ダウントン・アビー」撮影の舞台裏に密着! 英国貴族の驚きの作法を紹介する。ドラマのキャストたちが撮影秘話を明かす。
詳細情報
番組内容
「ダウントン・アビー」の主要キャストのインタビューとドラマの映像を交えながら、撮影の舞台裏に迫る。案内人はドラマで時代考証を担当しているアラステア・ブルース。ドラマでは英国貴族の作法が忠実に守られている。帽子の扱い方やテーブルマナーまで、その細かさに驚かされる。ドラマのファンはもちろんのこと、英国マナーに興味ある人必見の特別番組。
出演者
【出演】アラステア・ブルース…佐々木睦,ヒュー・ボネヴィル…玉野井直樹,エリザベス・マクガヴァン…片貝薫,ミシェル・ドッカリー…甲斐田裕子,ローラ・カーマイケル…坂井恭子,アレン・リーチ…星野健一ほか
監督・演出
【演出】ルイーズ・ウォードル
制作
〜イギリス Chocolate Media/Carnival Films/アメリカ Masterpiece制作〜
ジャンル :
ドラマ – 海外ドラマ
情報/ワイドショー – 番組紹介・お知らせ
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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