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 北九州市の小倉で生まれ、半世紀にわたって活動を続ける漫画同人がある。「アズ漫画研究会」。多くのプロが輩出し、低迷期も乗り越えて新しい世代を巻き込んで活動は続いている。50年の歩みを振り返る展示会が、19日から北九州市漫画ミュージアム(同市小倉北区)で始まった。

 会が活動を始めたのは1966年秋。アニメ「鉄腕アトム」が初放映されてから3年後で、漫画への関心が広がっていた。

 アズは市立思永中学校の2年生の教室で、6人の同級生によって生まれた。発起人の一人で、現在、漫画ミュージアム館長を務める田中時彦さん(63)は「美術部に漫画のすごいうまい人がいて、ライバル心から始めたのがきっかけです」と明かす。「みんなと同じように漫画を上手に描きたい」という思いから、英語で「同じ程度」を表す「as」から名付けたという。

 最初は壁新聞。その後は手書きの原稿を持ち寄り、針と糸で製本した一点ものの「肉筆回覧誌」だった。

 会員の情熱はすさまじく、100ページを超える大作を1年で第3号まで出した。多くの新人漫画家の登竜門となった、手塚治虫が手がけた月刊誌「COM」の読者投稿コーナーの同人誌賞で、第10号はその月の号の最上位に輝いた。

 これまで約370人の会員が参加し、多くのプロが輩出した。後に同人誌の即売会「コミックマーケット」を世界規模のイベントに育てたことで知られる漫画評論家の故・米沢嘉博さんは初期からの参加者だ。「おとめチック」ブームで知られる陸奥A子さんも名を連ねる。少女漫画家の文月今日子さんは「それまで一人で描いていたので、自分の近くにこんなに漫画を描く人がいたことに驚いた」。アズへの参加がプロになったきっかけという。