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リンの日記帳 (3)
そろそろ日数数えるのが億劫になってきた。
そもそも筆不精な私には、この書き方でも無理だった。
と言うわけで、書き方を変えてみた。……はじめっからこうすればよかったよ。
でも、日記というより、覚書みたいになっちゃった。
十四歳、春
一年があっという間に過ぎて、私は十四歳になっていた。見た目は変わらないが。
この一年で何があったかというと。
まず、養蜂に成功した。やったね!!
ヴィクターの作ってくれた巣や遠心分離機はいい仕事をしました。本当に。
そのうえ、野菜の植え付けもばっちりだ。
だが、なぜか同居人が私の知らぬところで増えている。どういうことなのか。
そんな今現在の私の同居人はといえば。
蚊トンボにメル。
なぜかこの間から常時召喚状態のオルト。
先日知り合ったブラックドラゴンのメロウズ。
鍛冶師のヴィクター。
魔王のグリースロウ。
思い返して、私は首をかしげる。
「うーん、思い描いていた農園主よりなんか若干違うような」
ここまで人外がそろうなんて、まずめったにないことだ。でも全くうれしくないけどね!!
とにかく、若干おかしい気がしないでもないが、よくよく考えれば、養蜂は成功しているし、野菜も一月半後くらいにはばっちり収穫できるはず。そうだ、別に問題ないじゃないか。よしよし。
一人納得したところで、私はやりたかったことを思い出した。
そうそう、植物栄養剤を作ろうかと思っていたのだった。
今まで気づかなったのだが、どうやら私の畑は植物の育ちが悪いようなのだ。育たないわけではないのだが、小さかったり、数が少なかったり。
というわけで、土も植物も喜ぶ植物栄養剤を作ることにしたのだよ。
まあ、もともとゲーム時代に取得した調薬士があるから、レシピはたくさん持ってるし、失敗するはずもない。ふはははは完璧だ!
既存レシピを自分流にアレンジしてみたら、いくつか足りない素材があった。意外とお役立ちな蚊トンボに聞いたところ、炎系統の迷宮で採取できるとか。
早速知り合いの冒険者に連絡をとると、アリスから話を聞いてくれると返事がきた。
アリスによると、近くの迷宮都市マーヴェントが抱える迷宮「火炎宮」に行けば私が求める素材全てがそろうんだとか。
ラッキー、とか思ってたら迷宮ランクが高すぎてアリスたちでも護衛依頼では迷宮通行許可が下りないんだとか。Aクラスでも許可が下りないなんて、どんだけよ!
ただ、高位貴族か、王族からの口添えがあれば何とかなるらしいので、ここは数少ない伝(もちろんストル王子)を駆使して許可をもぎ取る方向で!
家に帰って手紙を書くと、蚊トンボをお使いにだしてみた。何故か勇者フェイルクラウト同行というオマケ付きだったが、バッチリ許可がとれた。
アリスたち「吹き抜ける風」の都合をつけてもらって私は迷宮都市マーヴェントへと出発したのだった。
迷宮都市マーヴェントにつくと、せっかくだからと一日かけて観光。アリスたちが案内してくれたのだが、幼女愛好者の本領発揮。ラティスにスレイ、子供服売り場に案内するのはやめろ!あと、美人女将よりその娘ばかり見るのもやめて。
ちょっとは自重しろよ!
まあ、微妙なあれやこれやあったが、概ね何事もなく翌日を迎えた……のに、翌日シオンが行方不明に。なんですと?
迷宮都市マーヴェントには、特殊な図書館があるらしい。なんでも吸血鬼(真祖)が司書をしているんだとか。冗談だよね、と思ってたら本当だった。しかもグリーの知り合いらしい。さすがは千年生きる魔王様。知り合いの格も違うわー。どうやら魔術師にとって非常に魅力的なその地下図書館に、シオンはいるらしい。知識の虜には素通りなんて考えられないようだ。いやいや、依頼を先にこなそうよ!
私たちは吸血鬼が守る地下図書館を通り、シオンを回収して、そのまま迷宮「火炎宮」に。
「火炎宮」では順調に進んでいたのに、何かのトラップに引っかかったみたいで、気付けば迷宮の中ボス炎の魔人イーフリートが眼前に。しかもお怒りのご様子。さらにはグリーも「吹き抜ける風」も近くにはいない。え?詰んだ?いやいや、外聞(?)を気にして割りと手に入れやすいランクの装備にしてきたのは間違いだったね。そもそも生産職で戦闘苦手だし。戦闘時はゲームの時も半分以上装備頼みだっあからなあ。
とか呑気にかまえている場合でもなかった。めっちゃ怒ってるうえに攻撃されてます。ヤバイです、真剣に。
そこでようやく思い出した私は蚊トンボとメルを召喚した。だが、考えていたよりイーフリートの力が強く、このままでは黒こげトンボどころか、私たちもヤバイ。
だが、私の機転(?)により、なんとかイーフリートのお怒りをしずめることに成功。さらには、頼んでもないのにラスボスのもとへ転送してくれました。うん、頼んでないからね?
ラスボス「セイ」はなんと、グリーの知り合いの魔王様らしい。どうでもいいけど、顔広いね、グリー。
ともあれ、バッチリ必要な素材をもらって農園に帰還したのだった。
十四歳、春 2
植物栄養剤ができた。
農園が半壊した。
ははははは、意味わからん!
実は農園には鉱石種を植えていた。植物栄養剤が失敗したみたいで、まいたら何故か爆発。農園が半壊。さらには、鉱石種にも余波がいき、鉱石種が暴走。危うく世界崩壊の危機………ははははははは、植物栄養剤で世界崩壊とか、なんの冗談かな。
ともあれ、暴走した鉱石種を何とかしないといけないわけで。
その場に居合わせた勇者フェイルクラウトとアリスたちのパーティー「吹き抜ける風」の協力を仰ぎ、魔王に、妖精たちや竜たち同居人にも力を貸してもらって、暴走を収めるべく旅立つことになった。
と言ってもメイスンに会いに行くだけだけどね!
メイスンの家では新たな出会い(?)があった。鉱石種研究者のメイスンの兄、イリア。メイスン以上に変人な、戦う学者だった。あと、メイスンの家が奇抜な理由は判明した。
ちなみに、メイスンにはこっぴどくしかられました。
鉱石種の暴走を抑えるには、「次元の回廊」に行く必要があるらしく、私たちは早速乗り込んだ。ただ、次元の回廊では農業スキルが必要らしく、マナカとシオンは入る前に離脱。うん、まあ、ヒトには向き不向きってあるよね。
さて、次元の回廊を造ったのはどうやら同郷の人のようだ。なんとなく某ゲームをほうふつさせるしね!
その「次元の回廊」で、私は一人の精霊に出会った。ニナリウィアという彼女は、失った主に似ているとの理由で、私を気に入り、付いてくることになった。……あれ?また、人外?おかしいな?
ま、まあそんなわけで(どんなわけだ!)さっくり「次元の回廊」をクリア。バッチリ報酬までゲットして世界崩壊の危機も回避。いい仕事したわ~。
「次元の回廊」で手に入れた栄養豊富な素晴らしい土で、愛する野菜たちはもりもり元気になりました。
十四歳、夏
今日は驚きの出来事があった。
なんと、フェリクスから相談事を受けたのだ。いやはや、誰かに相談事をされるなんて初めての経験だよ。びっくりするわ。
そんなフェリクスの相談事というのは、彼の婚約者「月姫」に関係することだった。……ってか、いたのね、婚約者。
なかなかに複雑な事情の婚約者さんを、助けたい、とノロケ(?)
とともにうったえられる。だが、ノロケはいらないよ。
しかし、せっかく受けた相談事である。どうやら妖精の女王の助力があればなんとかなるんじゃないかとダメもとでメルに聞いてみると、なんとフェリクスの欲しがっている特別な果実が手にはいるとか。フェリクス、めっちゃ輝いてたわ。
しかも、蚊トンボに奥さんと子供が二人もいることが発覚。マジでか。
女王様の都合により、謁見は一月後。というわけで、フェリクスの眠り姫ならぬ婚約者が目覚める前祝いに、野菜たちで天ぷらパーティを開催。
うはははははは。次元の回廊から持ち帰った土でバッチリな野菜ができたからね!収穫祭ならぬ天ぷらパーティをしたのだよ。なかなか好評だったよ。蜂蜜も高品質なものがたっぷりとれて大満足!
そんなわけで、私たちは一月後には、妖精の国へと旅立つことになったのだった。
あと、なんでか家の後ろの森には、魔王様が封印されていたことが判明。んなバカな。とりあえず、近づかんとこ。
妖精の国は、まさにお伽噺の中みたいだった。奥さんと喧嘩中だという蚊トンボは逃亡中だけどね。
まあ、色々あったけど、必要なものは手に入れた。さらには、蚊トンボも奥さんと仲直り。私も色々な果樹の苗を手に入れたので、果樹園を造ろうとおもう。
そんなこんなで、終わりよければ全て良し!めでたし、めでたし。

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