日銀執行部は量的・質的緩和拡大も提示、委員全く議論せず-1月会合
2016/03/18 11:26 JST
(ブルームバーグ):日本銀行が日本で初となるマイナス金利の導入を決定した金融政策決定会合で、執行部は追加緩和の選択肢として量的・質的金融緩和の拡大とマイナス金利導入の2つを提示したにもかかわらず、政策委員は量的・質的緩和の拡大について全く議論していなかったことが分かった。
日銀が1月28、29日の金融政策決定会合の議事要旨を公表した。それによると、議長である黒田東彦総裁に追加緩和の選択肢の提示を求められた執行部は、量的・ 質的金融緩和の拡大とマイナス金利の導入という2つの案を提示。このうち前者について「実務的に可能」と報告し、後者については3層構造などを説明した。
これに対し、多くの委員は「物価の基調に悪影響が及ぶリスクの顕現化を未然に防ぎ、2%物価目標に向けたモメンタムを維持するためマイナス金利の導入が望ましい」との見解を表明。執行部が提示したもう1つの選択肢である量的・質的緩和の拡大については、誰一人言及しなかった。追加緩和の手段として、なぜ量的・質的緩和の拡大ではなく、マイナス金利だったかについても議論は全くなかった。
日銀は昨年12月18日の金融政策決定会合で、量的・質的金融緩和の補完措置を決定。黒田総裁は会合後の会見で、「量的・質的金融緩和をしっかりと継続し、 物価安定目標の早期実現のために必要と判断した場合には、迅速に調整ができるようにするための措置」と説明した。
副作用について突っ込んだ議論の形跡ないみずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストはマイナス金利導入を決定した金融政策決定会合について「議論のバランスが欠けており、マイナス金利導入という『結論先にありき』だったことが裏付けられた。マイナス金利についての副作用、弊害についても突っ込んだ議論がなされた形跡がない」と指摘する。
マイナス金利の導入により、証券売買の決済口座に使われるMRF(マネー・リザーブ・ファンド)の運用が困難になったことを受けて、日銀は15日の金融政策決定会合でMRFへのマイナス金利の適用除外を決めた。
上野氏は「内部で細かい点まで詰めないまま、マイナス金利が決定されたことの表れだろう。マイナス金利の導入は拙速に決められたと言わざるを得ない」という。その上で、「これほど国民の反発が強まっている中で、日銀はマイナス金利の拡大は当面棚上げせざるを得ない。次の追加緩和は、1月会合で全く議論しなかった量的・質的緩和の拡大が柱になるだろう」としている。
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更新日時: 2016/03/18 11:26 JST