2016-03-19 上げたのは1日後
■[アニメ][トンデモ]官邸の「日本の美」総合プロジェクトにおいて、津川雅彦座長が「天孫降臨」のアニメ化を主張していた件
id:tadanorih氏がツイッターで紹介していた。
@hayakawa2600: 朝日新聞の「耕論」では触れられなかったが、「日本の美」総合プロジェクトでの津川雅彦発言はどれも香ばしい:「アニメーションというのは突発的に出てきたものではなくて、日本の自然を愛する心から出てきて、それが鳥獣戯画になり、北斎漫画になったということをきちんと展示する必要があると思う」
@hayakawa2600: @hayakawa2600 「第二に、日本映画の世界市場開拓をしたい。……その第一作目として、例えば、「天孫降臨」などをアニメでつくるなどしてはどうか」
@hayakawa2600: @hayakawa2600 第2回でもアニメ「天孫降臨」を力説していた。:「まず、「天孫降臨」をアニメ化する。日本の神話を小中学生に、世界の子供たちに、まるで我々がかつて見た孫悟空のように、「天孫降臨」を面白く見せたいと思う」
公開されている議事要旨を読んだところ、たしかに3頁目と6頁目にそのような記述があった。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/nihon_bi_sogoproject/dai1/gijiyousi.pdf
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/nihon_bi_sogoproject/dai2/gijiyousi.pdf
しかし複数の委員から疑義をていされているように、良い案とは思えない。
そもそも、たかだか一王家の支配正当性をうったえるだけのエピソードが、娯楽として海外で消費されるだろうかという疑問もある。もともと他国の文化に興味がある観客が楽しむだけだろう。
また、すでに天孫降臨をモチーフにしたアニメは存在する。NHKで放映されたTVアニメ『火の鳥』の第1話から第4話にあたる「黎明編」だ。
ちょうどGYAO!で3月22日から2話ずつ無料配信が予定されている。
同じ「黎明編」のみで市川崑監督が実写映画化もしている。ただし評価はかんばしくなく、配信サイトなどで公式に視聴できるもののDVD化などはされていない。
そして肝心の「黎明編」のストーリーだが、史実や記紀にそってはおらず、卑弥呼の記述と古事記の描写を混ぜたもの。群像劇として描かれた戦争が、すべてを征服する騎馬民族の登場で無意味になっていくという顛末だった。
そう、創作的な問題として、天孫降臨それそのものは記紀のなかでもストーリーの娯楽性に欠ける。映像の見せ場となる戦闘すらなく、ほとんど順当に支配地に降り立つだけ。
天孫降臨以前の国譲りエピソードでは、武神の建御雷が現地の神々と戦う場面もある。しかしそれは因幡の白兎で知られる大国主命が統治していた地域を、自身の正統性を主張しながら天津神が乗りこんでくるというものだ。正直にいって爽快感はないし、かといって悲劇的な娯楽性にも欠けている。
だからか『火の鳥』の「黎明編」では、戦いの虚しさを強調する位置づけで天孫降臨を物語におりこんだ。そのままでは娯楽作品にならないという判断だろう*1。それでも、あまり評価が高い作品にはならなかった。
津川雅彦氏が天孫降臨をアニメ化して面白くなると考えているなら、俳優としての能力を疑わざるをえない。本当は天孫降臨のストーリーを知らずに推挙しているなら、それはそれでどうかと思う。
すでに巨匠の手で漫画化され、それが映像作品化されていることを押さえていないことも問題だ。議事要旨を読んでも、他に「日本の美」につながるような先行作品を調べているようには思えない。
このような会議でアニメが企画されても、世界にアピールできる作品ができるとは思えない。
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